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【怖い話】キャンプの嘘話【「禍話」リライト37】

【怖い話】キャンプの嘘話【「禍話」リライト37】

 

 暑い夏だったという。

「やべーな、暑いなオイ」
「マジで夏だよな」
「なんか、夏休みっぽいことやりてーな」
「やりてーな。川とか海に行くとか」
「スイカも食いてぇし花火もしてぇな」
「バーベキューもいいよなぁ」

 この体験をしたRさんはいわゆるヤンキーで、同じような仲間5、6人とつるんで車を飛ばしたりパチンコをしたりして日々を過ごしていた。
 ただし「不良」というほど悪くはない。チャ

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【怖い話】 線香の母 【「禍話」リライト 22】

【怖い話】 線香の母 【「禍話」リライト 22】

そういうことにしておこう、という話が、世の中にはある。

 Kくんが、中学生の時の話。

 どんな流れだったかは忘れてしまったが、友達の友達の家に泊まりに行くことになったそうである。
 その友達の友達は、Tくんとしておこう。

 Kくん、友達、Tくん、の3人で一晩遊ぶわけである。
 Kくんは、そのTくんとはほとんど顔を合わせたことがない。家にも行ったことがない。
 でも間に双方の友人がいて一晩遊ん

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【怖い話】 祭り覗き 【「禍話」リライト④】

【怖い話】 祭り覗き 【「禍話」リライト④】

大学で民俗学をやっていた、Gさんの体験。もう20年も前の話だという。

 Gさんはその日、ある地方に出向いていた。資料館巡りや現地調査を終えて、帰ろうとした。帰って提出用のレポートをまとめるのだ。そう考えた。だがこの土地をこのまま離れるのも勿体なく感じた。 
 行き先もよくわからない電車にふらりと乗り込んだ。気まぐれに全然知らない駅で降りてみよう。大きくて立派な駅では面白くない。しばらく揺られて

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【怖い話】 蔵の箱 【「禍話」リライト⑯】

【怖い話】 蔵の箱 【「禍話」リライト⑯】

 戦後しばらくして、と言うから、今から五十年ほど前になるのだろうか。

 Aさんは、「あなたにしかできないことをやってもらいたい」と、ある屋敷に呼び出された。

 相手方はその町の、ひと昔前は庄屋とか名主とか言われていた大きな家である。

「あなたにしかできないこと」とはいかにも大仰で、Aさんが特別な存在であるかのようだが、そうではない。

 Aさんはここから離れた地域にひっそりと住んでいる、ただ

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禍話:青いレインコート

禍話:青いレインコート

とある学校の生徒会の生徒たちが、使われなくなっていた部室を掃除することになった。これまでに廃部になったいくつかの部活の備品がほこりをかぶっていて、それらをひたすら片付けていくという作業。複数ある冊子などは保管用を残してそれ以外はどんどん処分していった。
「当時の文芸研究会、結構内容攻めてるなー!」
少し昔の先輩たちが残していった記録は時々興味をそそられた。今は統合されて男女共学だが、昔は女子校だっ

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禍話リライト(忌魅恐)「行水する家族の夢」

禍話リライト(忌魅恐)「行水する家族の夢」

大学生の頃の話だという。が、もう随分前に取材された話だから、体験者たちももう中年の域に差し掛かっているだろうと思われる。



大学三年生のころに、仲間たちとちょっとした旅行に行ったのだそうだ。
だいたい二泊三日程度、宿は安いビジネスホテルか、何なら車中泊、いっそ野宿でもいい。そんな気楽な旅だった。
ただ、一点問題があった。車の免許を持っている人間が一人しかいなかったのである。例えば院に進学する

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禍話リライト「地下室のあった家」

禍話リライト「地下室のあった家」

名前に実態が伴わなくなっている、というサークルは間々あるものである。
大学生になったSが入部したサークルというのも、その手のサークルだった。一応海外旅行をするサークルということになってはいたが、その頃には時々海外についてのレポートを書いて、あとは海外に思いを馳せる……というような活動をしていたらしい。
言うなれば、単なる飲みサーになっていたのだ。
Sもそれは承知の上だった。彼はただ単に楽しい大学生

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禍話リライト「背の高い奴ら」

禍話リライト「背の高い奴ら」

フラれたことがきっかけで、ひどく落ち込んでいる男友達がいたのだという。
最初は連絡がつかなかったり、誘いを断わったり、付き合いが悪くなった程度だった。しかしそのうち、どうも変な相手と付き合っているらしい、ということがわかった。酒を飲みに連れ出してくれるような連中ならまあいいだろう、自分たちはおとなしい文化系サークルの友人だし、一人でいるよりは……と思ったが、どうやら相手がカルト団体らしい。妙な勧誘

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禍話リライト:忌魅恐NEO「コインロッカーを確認するアルバイトの話」

 全然怖くない人いると思います。先に言っときますけど…これ。うん。俺は、やだなー、ってぐらい。 



 体験者の方が、「昔住んでいた地域から引っ越したから」―この”地域”というのは市や県といったレベルではなく、例えるなら首都圏、四国、中国地方といった広範囲のエリアを示している―かぁなっきさんに話せるようになった…という話。

・・・

 Aさんが大学院生として文系の研究科に通っていたときに体験

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団地の長なわとび大会の写真の話(禍話リライト/忌魅恐NEO)

団地の長なわとび大会の写真の話(禍話リライト/忌魅恐NEO)

何につけてもタイミングの悪い人っていますよね。
自分が悪いわけじゃないのに、居合わせた場所と時間が良くなかっただけで嫌な思いをする。これはそういう、なぜか嫌なことに巻き込まれがちな人の話なんですけど。
県は言ってもいいかな。佐賀のほうであったことだそうです。

その「タイミングの悪い人」、大学だか専門学校だかに通ってたんですけど、1個上の先輩にお似合いのカップルがいたんですって。
その2人は入学

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禍話リライト 怪談手帖『つきまとう女』

大手企業で管理職を務めるYさん。彼は写真嫌いで有名である。

カメラを向けられるだけでなく、携帯電話でのちょっとした撮影の端に自分が写り込むことでさえも嫌がるという筋金入りで、周囲からも不思議がられているそうなのだが、その理由をYさんはあまり人には話さない。

「少し変な理由なんでねぇ。信じて貰えても、貰えなくても、気持ち悪がられるだけだし……。

……あなたも、話半分で聞いてくださいよ?」

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禍話リライト 怪談手帖『ギガ母さん』

妹さんとの幼い頃の思い出だという。

「……妹は何と言うか、フワフワした子でした」

歳の離れた姉妹のことを、Aさんはそう例えた。

物心のついた時から、どこか地に足がついていなかった。話していても急にフッと黙ってしまい、何か別のものに気を取られている。ご両親も心配して、いろいろ病院に連れていったりしていたそうだ。

それでもやがて姉であるAさんと同じ小学校に通い始め、二年生になった頃……。

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禍話リライト 怪談手帖『たどん』

Aさんという方の子供の頃の体験。

彼の住んでいた北九州のOという地域。

そこから一山越えたところにボタ山(石炭の捨て石の集積場)があり、当時そこに行って石炭クズを拾う者たちがいた。専門の業者のところへ持っていけば、その場で買い上げてくれたからだという。

一般的には、こういった『ボタ拾い』はあまりお金にならないものだったと聞くので、僕(怪談手帖の収集者である余寒さん)は驚いたのだが、Aさん曰く

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禍話リライト 忌魅恐『赤い帽子の女』

禍話リライト 忌魅恐『赤い帽子の女』

Aさんという男性の、幼少期の体験。

某大学のオカルトサークルが取材した当時、彼はすでにそれなりの年齢であったという。
つまり、現代から見て、少なくとも半世紀以上は前の話。
……ということになるだろうか。

※オカルトサークルに関しては『忌魅恐 序章』を参照のこと

Aさんの母方の親族に、年齢の近い従兄がいた。
(仮に、彼の名を『ケンタくん』とする)

Aさんが小学校二年生のある日。
そのケンタく

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