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「パンデマニア」第3部 チャールズ・アイゼンスタイン

訳者より:コロナウイルスに限らず、権力の至る所に虚偽が蔓延していることが、次々と露呈しています。政府組織が全体として嘘をつくようになるのは、それを支配する物語を職員たちが誠実に信じているからだとチャールズ・アイゼンスタインは説きます。嘘から身を守る手立てはあるのでしょうか。「パンデマニア」シリーズ、今回は第3部。(第1部第2部はこちら。)

パンデマニア 第3部

システム全体を覆う嘘と詐欺について

チャールズ・アイゼンスタイン著
2022年7月12日

目的は手段を正当化する。だがもし目的などというものはないとしたら? 我々にあるのは手段だけだ。

アーシュラ・K・ル=グウィン

前回の投稿に対し、あらゆる方向からたくさんの激しい批判的コメントが来ています。そこでいわれているのは私が、

(1) あからさまな医療ファシズムと全体主義的支配の計略や、権力の座にあるサイコパスと、その手下や相方が従順な大衆の中にいることに対して甘すぎる。それと同時に、

(2) ワクチン接種を選んだ人を小ばかにして除け者にし、一方の側を支持して共感と包括性の原則を破っている、ということです。

私は中道を堅持します。中道とは両側の間の柵の上に座っているという意味ではありません。その柵はずっと昔に消えてしまいました。中道を堅持するとは、虐待、嘘、ぺてん、人心操作、忍び寄るテクノロジーのファシズム、公衆衛生への危害、そして、現在進行している人道に対する罪について、ひるむことなく述べることです。そしてまた、怒りを憎しみに転化するのを断固として拒否することです。そもそも私たちが略奪的な人心操作に付け込まれやすくなった原因である、非人間化と他者化の様式形成に屈するのを拒否することです。

以前にも言ったことですが、また言います。怒りは神聖な力なのです。それは境界侵犯への反応なのです。怒りを憎しみに向けるとそれを中和してしまう危険があるのは、ふつう憎しみの標的が侵犯の最も深い原因ではないからです。時にはそれが当たっていることもあります。時には最も直接で明らかな加害者に勝利して、一件落着です。現在の状況はそうではありません。クラウス・シュワブや、ビル・ゲイツ、アンソニー・ファウチのような人々は、日和見的な聖職者か名目上の指導者、もっと言えば世界システムとイデオロギー全体の化身アバターなのです。彼らを権力の座から引きずり下ろすことはできるし、そうすべきですが、それだけでは何の解決にもなりません。同じように、小役人や従順な大衆を罵ることはできますが、なぜ彼らが従順なのかを真剣に問うことがなければ(その問いを憎しみと非難が覆い隠してしまうのですけれど)、同じことを起こすシステム・イデオロギーを、再びそのまま永久に放置してしまい、私たちは互いを憎み続けることになります。

なので、ここでの私の動機は衝突を避けることではありません。犯罪をうやむやにして、皆が何も起こらなかったふりをして仲良くできるようにすることではありません。私の動機はそれが再び起きてほしくないということです。私の動機は、医療問題をめぐることであれ他のことであれ、私たち国民が将来のファシズム搾取に対して免疫を持つことです。

今回は、なぜこんなに多くの人々が過去2年半にわたる医療の皮を被った権威主義に自分から進んで従ったのかを見ていきます。手短にいえば、嘘でだまされたのです。「どの薬を体内に入れるかを、誰にでも選ぶ権利がある」と言うのはもっともなことです。それは好ましい第一歩で、穏健派(ワクチン賛成、義務化反対)がそう言ってくれるのを私はありがたく思います。しかしこの状況は、メニューからシーザーサラダかコールスローか選ぶのとは違います。コロナ対策公衆衛生の全体が、様々なレベルの不正行為の上に築かれたのです。自分が本当は何を選んでいるのか知らないで、主体的な選択をすることなどできません。

嘘の中には意図的なものもありました。でもあからさまな腐敗や、研究の捏造、隠蔽、公然と行われる検閲は、欺瞞という氷山の一角が見えているに過ぎません。そういうものは露見しやすいのです。これよりずっと危険なのは水面下にある氷山の本体で、システム全体がもつ確証バイアスや、パラダイム保護、出版バイアス、資金バイアス、科学の集団思考、政治の集団思考、偏った問題設定、根拠のない自信、自己妄想などがあります。

ですから、システム全体の欺瞞を解きほぐして意図的な嘘だけ取り出すのは難しくなります。一握りの職員だけが意識的に嘘をついている場合でも、組織全体が大規模な欺瞞を犯すことがあるのを、理解するのは難しいのです。

典型的な例があります。コロナワクチン接種が原因で2021年後半に年齢19〜44歳の超過死亡率が6万1千人も突出していたという主張に対する、AP通信の「ファクトチェック」です。この記事が引用するのは、ワクチン接種が関係しているという証拠はないとする何人かの専門家の発言です。実際には、その超過死亡率はコロナウイルス自体が引き起こしたらしいというのです。

そのファクトチェックはCDC(アメリカ疾病管理予防センター)自身のデータを使って簡単にファクトチェックできました。私が見つけたのは、このコロナ死亡者の年齢による内訳を示した図です。(年の後半だけでなく)通年の数値は、15〜44歳のコロナ死者が約2万5千人です。またこれは新型コロナウイルスが「関係する」死者で、コロナウイルスが単に「死亡の要因」とされた症例が全て含まれます。これは私の作り話ではなく、CDCがそう言っているのです。ともかく多くの人々はコロナウイルスが「原因」ではなく「併発」して亡くなったのでしょう。ですから、6万1千人の超過死亡率のうち1万人はコロナウイルスで説明できるというのが現実的かもしれません。

これはファクトチェックを装っていますが、本当は不都合な事実を言いくるめるためのゴマカシです。実際に嘘をついたと言えるでしょうか? まあ、ある程度は。ファクトチェックの筆者が「そうだな、この主張は本当だから、できるだけ上手く隠匿してやろう」と意識的に考えたとは思いません。おそらくその人はこんなふうに考えたのではないでしょうか。「mRNAワクチンが安全で有効で必要なことは、(少数の狂人を除けば)我々みんなが知っている。だからこの超過死亡率は何か別のものが原因だったに違いない。」

イデオロギーを強く持つと解釈にフィルターが掛かります。イデオロギー信奉者は自分の物語に一致するデータを何でも無批判に受け入れ積極的に拡散します。自分の物語と矛盾するデータは何でも無視したり、拒絶したり、激しい批判を浴びせたりします。別の説明があるはずだ。さらなる研究が必要だ。真実のはずがない。ワクチンに尻込みするようになるといけないから黙っておいた方が良い。このバイアスが積もり重なって、私たちに嘘をつくシステムができます。政府報道官や公衆衛生当局は、システムが完全だと信じて、このような嘘を口に出します。中には疑いなく意図的に嘘をつく者もいますが、そういう人がいなくても、影響はほとんど同じです。じつは、誠実な信念を持って話すと、いっそう効果的な嘘つきとなるのです。

CDCのロシェル・ワレンスキー所長が「ワクチン接種済みの人はウイルスを持っておらず発病しないことを我々のデータが示している」と2021年3月29日に発言したとき、彼女は嘘を言っていたのでしょうか? そうとも限りません。問題は「我々のデータ」の方にあって、他の結論など全く眼中にないような方法で取られたものでした。(研究の期間は短すぎ、抗体依存性感染増強の可能性は無視され、非殺菌ワクチンが耐性変異株の進化を加速する可能性も同様に無視されました。)

ジョー・バイデンや、ビル・ゲイツ、アンソニー・ファウチなど数多くの公衆衛生専門家が2021年を通じて同じことを言いました。もし彼らが単に嘘を言っているのなら幸いなことです。ならば彼らを権力の座から下ろせば問題は解決できるでしょう。

実際はそんな単純なことではありません。彼らの根拠のない自信はコロナウイルス正統論に偏るバイアスがシステム全体に蓄積していることの反映です。科学支配層全般の自信過剰も映し出しますが、彼らが発達させてきたのは優勢なパラダイムに対する異論を閉め出すための複雑なメカニズムです。こうして、専門家の支配者集団は真実から遠く掛け離れた物語を語るのです。

その物語を(「安全で有効な」ワクチンはこの一部なのですが)維持するため、このボロ布を1枚に繋ぎ合わせておくために、重要な結び目では実際に意図的に嘘を言う人が必要です。嘘つきは詐欺的システムの中で大成功を収め、金と名誉という報酬を得ます。でも、「正しい」結果を得るため悪いと知っていながら皮肉っぽく故意にデータを切り取る科学者と、最初の評価項目では否定的な結果しか得られなかったので評価項目を変更して研究を延長する科学者と、そもそも否定的な結果が出る可能性を最小化するように研究を設計する科学者を、分け隔てる境界線はあいまいなのです。

それでも、あからさまな嘘や詐欺、隠蔽を暴くことは大切だと私は思います。このサブスタック[原文が掲載されたメルマガ配信サービス]でそれを実行しているジェシカ・ローズ、トービー・ロジャーズ、ユージピアス、インテレクチュアル・イリテラティ、スティーブ・キルシュ、ナオミ・ウルフ、アレックス・ベレンソン、バッド・キャティテュード、テッサ・リーナのような多くの書き手たちを私は称賛します。もし彼らが氷山の一角を指摘してくれなかったら、そこに氷山があると私たちは知らなかったでしょう。

権力者はシステム全体が作り出した嘘を信じているので、とうとう今起きているように、現実が彼らの物語のニセ現実に侵入してくると、本当に驚くかもしれません。私たちは(システムの完全性を疑っていたので)初めからそのようなニセ現実の外側にいたのですが、超過死亡率や低下する出生率のデータが世界中から洪水のように入ってくるのを見ても驚くことはありませんし、害を起こすもっともな仕組みが示され、ワクチン傷害の実例が知り合いや仲間内から出ていることを考えればなおのことです。

いま私たち一般大衆の間には懐疑的な態度が急速に広がっています。大企業メディアは新しいオミクロン亜種が以前の免疫をかいくぐる「かつて無いほど危険」な「忍者ウイルス」だという物語を押し出して、「パンデミックは終わっていない」ことを示します。しかし、全体的に見れば大衆のいだく恐れは1年前に比べてずっと減ったように見えます。保健当局のいうことを信じると公言する人々のほとんども、それを完全には信じていません。自分の追加接種や幼児のワクチン接種のため列に並ぶ人々の大部分も同じことです。思い出すのは9.11後の数年のことで、「テロ」の脅威が脅威と感じられなくなり、「国土安全保障省は脅威レベルをオレンジに引き上げました」という空港での絶え間ないアナウンスをみんな完全に無視していました。

パンデマニアが本格的に続いている所もあります。でもコロナ物語の最も熱心な信奉者でさえ、その熱心さは衰えてきたように見えます。放置された消毒液スタンドが今も公共スペースを飾っているのをご覧なさい。死にゆく宗教の寂れたほこらのようです。

嘘は永遠に維持できないと言われるのは、やがて現実と衝突するからです。実際には、嘘を制限する要因は現実ではなく、嘘を言われる側に受け入れる意志がどれだけあるかなのです。この文をもう一度言って下さい。

精神的な主権を奪われた集団は、どんな馬鹿げたことでも信じるようになってしまいます。夜は昼で、黒は白で、奴隷は自由で、毒は薬だと、反抗せずに受け入れます。現在の公式の現実が1ヶ月前のと直接矛盾していても、何を考えるか権威にお伺いを立てる人々の記憶から、その矛盾は消し去られます。

ここで私が精神的な主権というものは、実際には完全に物質的なのです。それは「コモン・センス(常識)」とも呼ばれます。それがコモン(共通)なのは、誰にでも手に入るからです。それは物質的、自然的、感覚的、肉体的な領域での強い関係性から発します。この全てが、外部の権威が私たちに命じるのとは無関係な情報を私たちに与えます。画面越しに提示される仮想現実(VR)よりも堅固な物質に、私たちを繋ぎ止めます。こうして私たちは詐欺に強くなります。自分の見識を信じる人にペテンは効きません。

いま私たちに特に必要なのは、仮想世界の外から来る情報を信じることです。普通の時なら、自分の認識を確認するために自身の外を見るのは役に立つ習慣です。もし私が何か異常なものや不穏なものを見たなら、最初の衝動は兄をつかまえて「ねえ、あれ見た?」と聞くことです。私たちは自分の認知が当てにならないことを知っているので、権威を委任した者のところへ確認に行くのは自然なことです。現在この本能が私たちを迷い道に引き込むのは、私たちの権威が信頼を裏切ったからです。

第4部につづく)

原文リンク:https://charleseisenstein.substack.com/p/pandemania-part-3


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