酒井泰幸

和歌山県那智勝浦町の色川地区でフォレストガーデンを作っています。

酒井泰幸

和歌山県那智勝浦町の色川地区でフォレストガーデンを作っています。

最近の記事

  • 固定された記事

【日本語訳】気候:新たなる物語(チャールズ・アイゼンスタイン)目次

(訳者からのお知らせ) 《目次》 プロローグ     プロローグ:迷宮 第1章:存在の危機     失われた真実     「彼ら」の正体     戦い 第2章:気候原理主義を超えて     他のことは関係ない?     炭素還元主義のあべこべな結末     社会の気候     原因への突進     あらゆる原因の母     コミットメントが息づく場所 第3章:気候論争のグラデーションとその向こう側     私が付くのはどちら側?     懐疑論の世界を訪れる   

    • 壮大な屋内

      訳者コメント:  私たちはみんな、庭の草を取り、要らない木を伐採し、家を掃除し、蚊取り線香をたき、ハエやゴキブリを叩き、カビを漂白します。自己の縄張りの内側に、許可してないものが存在してはならないのです。この文化に属しているという事実だけで、私たちはみんな管理マニア、コントロール狂なのです。コントロールされた空間の典型が屋内であり、この文明の向かう先は地球全体を「壮大な屋内」に改造することです。しかし逆説があって、コントロールすればするほど、抑え付けたはずのものに人間は弱くな

      • ロバート・ケネディ・ジュニア氏の選挙活動中止発表を受けて(チャールズ・アイゼンスタイン)(その3)

        訳者コメント: 2024年のアメリカ大統領選挙で無党派の候補として立候補していたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、選挙運動を中止しドナルド・トランプ氏の陣営に加わると、8月23日に発表しました。ケネディ氏の選挙顧問を引き受けていたチャールズ・アイゼンスタインは、ケネディ氏の頑固なイスラエル支持に心を痛めながらも、アメリカ社会を覆う分断を癒すために助言を重ねてきました。ケネディ氏の撤退表明を受けて、チャールズが心の内を語ります。長文のエッセイなので3部に分けて掲載します。

        • ロバート・ケネディ・ジュニア氏の選挙活動中止発表を受けて(チャールズ・アイゼンスタイン)(その2)

          訳者コメント: 2024年のアメリカ大統領選挙で無党派の候補として立候補していたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、選挙運動を中止しドナルド・トランプ氏の陣営に加わると、8月23日に発表しました。ケネディ氏の選挙顧問を引き受けていたチャールズ・アイゼンスタインは、ケネディ氏の頑固なイスラエル支持に心を痛めながらも、アメリカ社会を覆う分断を癒すために助言を重ねてきました。ケネディ氏の撤退表明を受けて、チャールズが心の内を語ります。長文のエッセイなので3部に分けて掲載します。

        • 固定された記事

        【日本語訳】気候:新たなる物語(チャールズ・アイゼンスタイン)目次

        • 壮大な屋内

        • ロバート・ケネディ・ジュニア氏の選挙活動中止発表を受けて(チャールズ・アイゼンスタイン)(その3)

        • ロバート・ケネディ・ジュニア氏の選挙活動中止発表を受けて(チャールズ・アイゼンスタイン)(その2)

          ロバート・ケネディ・ジュニア氏の選挙活動中止発表を受けて(チャールズ・アイゼンスタイン)(その1)

          訳者コメント: 2024年のアメリカ大統領選挙で無党派の候補として立候補していたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が、選挙運動を中止しドナルド・トランプ氏の陣営に加わると、8月23日に発表しました。ケネディ氏の選挙顧問を引き受けていたチャールズ・アイゼンスタインは、ケネディ氏の頑固なイスラエル支持に心を痛めながらも、アメリカ社会を覆う分断を癒すために助言を重ねてきました。ケネディ氏の撤退表明を受けて、チャールズが心の内を語ります。長文のエッセイなので3部に分けて掲載します。

          ロバート・ケネディ・ジュニア氏の選挙活動中止発表を受けて(チャールズ・アイゼンスタイン)(その1)

          心を型にはめる

          訳者コメント:  今回はチャールズの学校批判が全開です。学校のあり方は、そんなもんだよなあと思うほどに、当たり前として意識に刷り込まれてしまっていますが、学校が量産するのは工場や文明という巨大機械の歯車として黙って働く「労働者階級」です。そのために、学校は人間の本性も家族もコミュニティも破壊します。かつて囲い込み(エンクロージャ)によって農民を土地から切り離して都市へあぶり出し労働者にしたように、自給的農村社会は工業社会とは対立するものだったのです。  私の住んでいる山村地域

          心を型にはめる

          脱却への圧力

          訳者コメント:  コントロールでがんじがらめになった人生に喘ぎながら、そこから降りて抜け出す勇気を持てないでいると、魂が無意識のうちに状況を壊しにかかります。  私にも経験があります。会社で押し付けられる無理難題と、パワハラとも言えるような上下関係。それが家庭に染み入って結婚生活も軋み始める。それが頂点に達したとき、3.11原発震災というショックが襲う。常連という以上に入れ込んでいた、親友のレストランが廃業して夜の居場所もなくなる。妻からは離婚を言い渡され、反原発運動から会社

          脱却への圧力

          イエスとノー

          訳者コメント:  ぼくには子供がいないので、子育てという仕事に関わったことはなく、自分の生い立ちから推測するしかないのですが。親からはいつも、どうあるべきかという強いメッセージを受けていたと思います。親がぼくに与えるものは全て、「ためになる」という条件でふるい分けられたもので、「くだらん」ものごとは排除されていました。ぼくが大学生となり親元を離れるまで、そのフィルターは完全に内部化されぼく自身のものとなっていたので、親に反抗するという選択肢があることさえ気付いていませんでした

          イエスとノー

          生と死

          訳者コメント:  個人的な体験ですが、私がJICAの青年海外協力隊に参加したのは30歳の時で、それまでの私は親が承認する生き方に縛られていました。親のいう通り、とにかく勉強して良い大学に行って良い会社に就職する。しかしそこに待っていたのは自分を殺さないと生きていけない世界でした。「会社が必要とするものを自分は持っていないし、自分の持っているものを会社は必要としていない。」そのとき私は生まれて初めて「無難な人生」を外れる決心をしたのです。試験に合格した後、両親には決めたこととし

          勝者と敗者

          訳者コメント: 自他の二元論が支配する現代社会では、どの宗教にもある「自分を愛するように他人を愛せよ」という教えは曲解され、神の罰を受けない限り何をしても良いことになってしまいました。他人に優しくする理由は、閻魔大王に怒られないためなのです。私たちがすべきなのは、自分自身に制約を課して、善き人間であるように「頑張る」こと、ということになります。世界から切り離し不完全な存在となってしまった自分を補うには、自らが勝者となって、敗者の世界から奪い取ったものを自分の周りに蓄積する努力

          勝者と敗者

          ぼくが田舎移住を選んだワケ (そしてチャールズ・アイゼンスタインを翻訳する理由)

          いつもの翻訳から離れて、自分語りをしてみます。 寄生虫とアレルギー 寄生虫がアレルギーを緩和するという話があります。「寄生虫博士」として知られた藤田紘一郎氏が提唱した説です。人体が回虫やサナダ虫のような多細胞の寄生虫に感染すると、侵入者である寄生虫から身を守るために、免疫グロブリンE(IgE)と呼ばれる抗体が作られます。IgEはアトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などのアレルギー疾患を引き起こす物質でもあります。しかし、ある種の寄生虫の分泌物が刺激となって作られるIgEは構造が

          ぼくが田舎移住を選んだワケ (そしてチャールズ・アイゼンスタインを翻訳する理由)

          人間の完全な堕落

          訳者コメント: 東京オリンピックを招致するため、当時の安倍晋三首相が2013年の国際オリンピック委員会総会で高らかに宣言したのは、(2年前の震災で破壊された福島原発の状況は)「アンダー・コントロール」だというものでした。この言葉が象徴的に示したのは、コントロールできないものをコントロールするという人間の欲望でした。  この節では、キリスト教プロテスタント主義の概念である「人間の全的堕落」を手がかりに、宗教と科学とテクノロジーが、内的・外的世界の両方で、自然状態を悪と見なしてコ

          人間の完全な堕落

          ガザの傷を癒すには(チャールズ・アイゼンスタイン)

          訳者より: 報道を目にする限り、ガザでの虐殺が止む気配は無く、イスラエルと強く結び付いた米国はイスラエル支援を続け、米国と強く結び付いた日本は傍観者を決め込んでいるように見えます。著者は、この対立する世界で「どちらが正しいか」決着を付けようとする限り和平への糸口はないと書きます。残虐行為を働いた者を処罰するなら、復讐を誓う若者たちが次から次へと現れるでしょう。過去の行為を忘れはしないが、赦す。自分の正義も相手の正義も否定することはないけれど、とにかく赦して戦うことを止めるとい

          ガザの傷を癒すには(チャールズ・アイゼンスタイン)

          資本の危機

          訳者コメント:  革命は英語でレボリューション、つまり転回し「ひっくり返る」ことで、荷物を積み過ぎた船がバランスを崩して逆さまに転覆するようなものです。そういう意味では自然に起きることですが、搾取され尽くしていない市場や資本や植民地が、地図の上だけでなく社会の中に残ってる限り、真の革命が起きることはなく、資本主義が延命されてきたのです。現在の社会に漂う閉塞感は、資本主義がとうとう危機に追い込まれている証なのかもしれません。第4章の締めくくりとして、やや悲壮感の漂う文章となって

          資本の危機

          利子と利己心(後)

          訳者コメント:  遠い未来のことは、いま目の前にあることよりも「小さく」見えます。今日お茶碗1杯のご飯があるのと、1年後にお茶碗1杯のご飯を約束してくれるのと、どちらが有難いかといえば、今日のご飯でしょう。これが減価とか割引といわれるもので、私たちの直感に一致しているように見えます。それは遠近法のようなものです。利子とは、この遠近法の絵画の中で、目の前で伸ばした手に持った50円玉が50m先まで移動したとき、同じ大きさに見えていなければならない(つまりヤップ島の石のお金のように

          利子と利己心(後)

          利子と利己心(前)

          訳者コメント:  所有と貨幣と利子のもたらす社会と生態系の破壊についてカール・マルクスが残した指摘を基に、テクノロジーと成長を是とし、中央集権国家によるコントロールで運営されるソビエト連邦が作られましたが、これは国家サイズの企業体のようなものでした。想像ですけれど、日本の大企業で働いたことのある人なら、ソビエト社会に放り込まれても全く違和感は無いと思います。日本の企業では、役員は選挙で選ばれるわけではありませんから、民主主義などありません。予算計画に基づいた計画経済を粛々と執

          利子と利己心(前)