酒井泰幸

和歌山県那智勝浦町の色川地区でフォレストガーデンを作っています。

酒井泰幸

和歌山県那智勝浦町の色川地区でフォレストガーデンを作っています。

最近の記事

  • 固定された記事

【日本語訳】気候:新たなる物語(チャールズ・アイゼンスタイン)目次

(訳者からのお知らせ) 《目次》 プロローグ     プロローグ:迷宮 第1章:存在の危機     失われた真実     「彼ら」の正体     戦い 第2章:気候原理主義を超えて     他のことは関係ない?     炭素還元主義のあべこべな結末     社会の気候     原因への突進     あらゆる原因の母     コミットメントが息づく場所 第3章:気候論争のグラデーションとその向こう側     私が付くのはどちら側?     懐疑論の世界を訪れる   

    • 利子と利己心(前)

      訳者コメント:  所有と貨幣と利子のもたらす社会と生態系の破壊についてカール・マルクスが残した指摘を基に、テクノロジーと成長を是とし、中央集権国家によるコントロールで運営されるソビエト連邦が作られましたが、これは国家サイズの企業体のようなものでした。想像ですけれど、日本の大企業で働いたことのある人なら、ソビエト社会に放り込まれても全く違和感は無いと思います。日本の企業では、役員は選挙で選ばれるわけではありませんから、民主主義などありません。予算計画に基づいた計画経済を粛々と執

      • 他者の経済学

        訳者コメント: 自然生態系の中では、ある生き物の老廃物は他の生き物の養分となります。しかし人間の産業と経済の生み出す廃棄物は、他の生き物を養うどころか殺す毒となります。毒を捨てるには場所が必要で、それは「他所」だから、そこにいる他者たちを踏み付けにすることによって処分するのです。「なあに、金さえ払えば受け入れるはず」というのが主流経済学の前提で、道路や原発や軍事基地の建設計画が持ち上がるたびに繰り返されてきたことです。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 4.9 他者の経

        • 時間、お金、商品

          訳者コメント: 自分で何かをするのはタイパが悪い。そんなことしてるぐらいなら、お金を出して既製品を買った方がいい、人にやってもらった方がいい。じゃあその間に自分は何をするのか? 自分の時間を売ってお金にすれば、得られたお金でできることが増える。お金で買えるのは「商品」と「サービス」。それがじつは、売り渡してしまった時間の、失われた人生の、代用品に過ぎないということに、もっと自覚的であっても良いのかもしれません。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 4.8 時間、お金、商品

        • 固定された記事

        【日本語訳】気候:新たなる物語(チャールズ・アイゼンスタイン)目次

          魂の資本(後)

          訳者コメント:  私は幸いなことにモノづくりの大好きな子供として育ちました。熱心に通った「発明クラブ」では大先輩の技術者たちが新しいアイデアを発想する方法について真面目に教えてくれました。でも高校大学と進むにつれ、自分で考えるというよりも、覚えなければいけない数式やら何やらに圧倒されました。技術者として企業に就職しましたが、求められたのは上から与えられた要求に基づいて製品を設計すること。それなりに面白いことではありましたが、パズルを解くようなものでした。(宮崎駿の『風立ちぬ』

          魂の資本(後)

          魂の資本(前)

          訳者コメント: 子育て中の親御さんたちに、ぜひ読んでもらいたい内容です。ここでは子供の世界から(大人もですが)遊びが奪い取られ、オモチャやエンタメとして売り戻される様子が語られます。いまどきのオモチャ屋を覗いてみると、アニメのキャラクター商品をはじめ、既製品のプラスチックのオモチャがあふれています。私が子供だった1970年代のレゴブロックは数種類の四角いブロックだけで成り立っていたのですが、それを組み立ててお城でも車でも動物でも、何でも作って遊んでいました。今のレゴブロックは

          魂の資本(前)

          自然の資本(後)

          訳者コメント: ここで語られるのは、環境経済学と生態経済学(エコロジー経済学)の違いだと思います。環境経済学は主流経済学の一部をなしていて、環境汚染のように金銭的尺度で測れない「外部性(エクスターナリティー)」を数値化することで「内部化」し費用便益分析(コスパ)で評価できるようにすることに主眼を置きます。工業製品の製造から廃棄に至る全てのコストを合算する「ライフサイクル・アセスメント(LCA)」や、炭素会計などです。これと似ているようで全く異なるのがエコロジー経済学で、人間の

          自然の資本(後)

          自然の資本(前)

          訳者コメント: 著者のチャールズが「自然資本」と捉えているものは、まさに経済学でコモンズと呼ばれているものだと思います。アメリカの生物学者、ギャレット・ハーディンが1968年に『サイエンス』に論文「The Tragedy of the Commons(コモンズの悲劇)」を発表したことで一般に広く認知されるようになった概念です。かつて放牧地は誰のものでもない共有地、コモンズでした。牧夫はそこに牛を数多く放牧すれば自分の儲けが増えます。そこでおおぜいの牧夫が自分の経済的利益を最大

          自然の資本(前)

          文化の資本(チャールズ・アイゼンスタイン『人類の上昇』)訳者コメント

          Facebookでチャールズ・アイゼンスタイン『人類の上昇』の翻訳を紹介するときに書き添えていた前書きを、noteにもアップしてはどうかという提案をいただいたので、試しに本文とは別立てで書いてみます。 今回のは第4章5節「文化の資本」です。前編後編に分かれています。私たちの文化を構成している「知識」が、著作権と特許という形で囲い込まれ、所有され、金銭化されてきた流れを議論します。 今回の内容は私の生い立ちから職歴に至る流れの中に共鳴する部分が多くあったので、前書きにしては

          文化の資本(チャールズ・アイゼンスタイン『人類の上昇』)訳者コメント

          文化の資本(後)

          この節の訳者コメントはこちらに。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) (前半から続く) 同じような状況がイノベーションにも当てはまるのは、科学的発見の自由な利用が、その応用に関する法的所有権によってますます制限されているからです。生物医科学の領域で、従来から行われていた情報や菌株などの自由な交換が崩れつつあるのは、遺伝子操作された微生物が特許を取得できるようになった、つまり所有できるようになったからです[14]。かつてなら科学の進歩は競争よりも協力に基づいていました。人

          文化の資本(後)

          文化の資本(前)

          この節の訳者コメントはこちらに。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 4.5 文化の資本 文化資本とは、言語、芸術、物語、音楽、アイデアなど、人間の心の産物が蓄積されたものを指します。それらが所有権の有効な対象とみなされるようになったのは最近のことであり、専門家によって大衆の消費のために生産されるようになったのも最近のことです。 狩猟採集時代には、芸術や音楽の分野で卓越した才能を持つ人もいたでしょうが、「芸術家」や「音楽家」という独立したカテゴリーが存在しなかったのは

          文化の資本(前)

          社会の資本(後)

          訳者コメント: 文明はあらゆる資本をお金に換えてしまいます。人間関係は「社会の資本」ですが、その中心にあるのが子育てと愛の営み。それが商品化されていく過程を分析します。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) (前半から続く) 何百万年にもわたって人々が自分でやってきたことの一つに、自分の子供を世話することがありますが、それは最も親密な友人や親族にのみ託される神聖な責務です。私の「いい商売のアイデア」によれば、子育ては絶好のビジネスチャンスです。〈規模の経済〉を活かした専門

          社会の資本(後)

          社会の資本(前)

          訳者コメント: 農耕が農業者の職業となり、調理は加工食品という商品となって、どちらもお金と交換するようになった結果、私たちは自分で食物を作る方法を忘れてしまいました。食事は人と人との絆を作る親密な活動だったのに、それが売り買いの対象になり、私たちは「消費者」になりました。そして絆そのものも売り買いの対象になっていきます。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 4.4 社会の資本 社会資本とは、生活を支え豊かにする人間関係の総体です。物理的なレベルでの社会資本は、衣食住を提

          社会の資本(前)

          匿名性という力

          訳者コメント: 今回は、お金とその匿名性が社会の絆を破壊しコミュニティーを崩壊させる仕組みを論じます。ギフトが恩義を伴い人の絆を強めるのに対し、お金による取引は人の関係を切り離します。社会の金銭化と専門化は、自己定義とアイデンティティーをも奪うのです。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 4.3 匿名性という力 金銭化された人生が孤独なのは、私たちの人生に関わる人々を匿名の役割分担者へと落とし込むからであり、お金のやり取りはその性質上、恩義(obligation)を一般

          匿名性という力

          群衆の中の孤独

          訳者コメント: 日本には、あらゆる物事に既製品と専門家が存在するので、個人の努力は無意味なものになり、そのことが心を蝕みます。「経済的自立」を良しとする人にとって、既製品と専門家は「ありがたい」ものであって、「そんなこと他の人に金を払えばやってもらえる」が捨て台詞になるのです。(まさにその言葉を、前の結婚が破綻したときに投げ付けられました。) (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 4.2 群衆の中の孤独 お金が共同体の解体に深く関わっているのは驚くことではありませんが、そ

          群衆の中の孤独

          「我」と「我が物」という領域

          訳者コメント: 世界から切り離されたちっぽけで孤独な自己は、その欠乏感を、自分でない物を自分に取り込むことで補おうと求めます。私たちが理想とする「経済的に独立した人」は、幸運や善意に依存しないだけのお金を持っていて、誰にも依存しておらず、いつでも「誰かに金を払ってやってもらう」ことができるので、義務も無く、誰の恩義も受けていません。だから私たちは他人や自然に対してここまで冷酷になれるのです。 (お読み下さい:訳者からのお知らせ) 第4章:お金と所有4.1 「我」と「我が物」

          「我」と「我が物」という領域