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書籍『コロネーション』紹介文


訳者より:チャールズ・アイゼンスタインの書籍『コロネーション』に収められているエッセイ本文は、これまでに当サイトで翻訳し紹介してきました。このたび書籍全体の翻訳が終わりましたが、まえがき、エピローグ、各エッセイへの導入文は書籍のみの収録で、ネット公開できないので、日本語版を部数限定で自費印刷する許可を著者より頂きました。A5版、全250ページ、1冊2500円+送料200円でお分けできます。ご希望の方は訳者までご連絡下さい
 今回ここに翻訳しましたのは、チャールズ・アイゼンスタインのサイトに掲載された書籍『コロネーション』への著者による紹介文です。


『コロネーション』

論争と絶望、希望と孤立、勇気と分裂、隠遁と再合一。私たちはどうすればこの複雑なコロナの時代に意味を見いだし、新たな存在として現れ出ることができるのだろうか?

私の最新刊はコロナ時代の最良の著作をまとめたもので、前書きと後書き、各エッセイへの短い導入文を加えています。本書の題となった2020年4月のエッセイ『コロネーション』も収めています。

パンデミックがうやむやのうちに終わってから、コロナは政治的無意識の中に幾分か沈んでしまいました。以前なら感情的になる問題も今ではそれほど政治色を帯びたものではなくなり、アイデンティティーと帰属意識という社会的な力を背負ったものでもなくなりました。それが意味するのは、コロナを巡る理解と意味付けを拡げる用意が人々にできたかもしれないということです。

私の2020年と2021年のエッセイは当時の問題に反対の立場を表明するという以上のものでした。そう、私は時事問題を批判的に捉えていましたが、より大きな全体像の中に組み入れることを常にねらっていました。したがって、本書のエッセイは一つも古さを感じさせないどころか、コロナ時代の熱狂と忠誠心が鎮まった今、さらにその重要性を増していています。残念ながら、私が言おうとしたことのニュアンスと複雑さの大部分は、当時の社会心理的な原初の力の嵐にかき消されてしまいました。ヒステリーとそれに対するヒステリー、盲目的な服従と反射的な反抗、群衆倫理と集団的精神病、処理されぬままの死の恐怖と社会に潜在する鬱憤。

今その嵐は収まり、私が書いたことを受け入れる新たな態度ができつつあるのを感じます。そこで私は2020年と2021年のコロナ関連のエッセイを本書にまとめ、外の社会と内の心理を結ぶパンデミックという架け橋を描き出しました。この先何年かの間、『コロネーション』が極めて重要な理解活動の一助になることを、私は少し遠くから信じています。そう、極めて重要なのです。私は本書に緊急性を感じます。パンデミックで噴出した社会的な力は今も水面下で煮えたぎっています。それに付け込んだイデオロギーの装置は今もそのまま残り、そこに付随するコントロールの技術はかつて無いほどに発達しています。私たちが許せば、歴史はいとも簡単に、ますます極端な形で繰り返します。

コロナについて私が書いた最初のエッセイ『コロネーション』で、パンデミックは通過儀礼だと説明しました。通常が中断されたことで、私たちの中に潜んでいたものが暴き出され、それが私たちに新たな選択を突き付け、新たな能力を求めます。コロネーションとは戴冠式の意味で、これが主権獲得のための通過儀礼であって、そこで無意識の選択が意識的なものになるのだと私は書きました。コロナが灯した光は私たちがこれまで向かってきた先を照らし出しました。疎外され、ロックダウンされ、テクノロジーに仲介され、イデオロギーは二極化し、権威主義で、機械化され、コントロールがますます強化される世界。このような傾向は2020年に突然始まったのではありません。いま私たちには行く先がはっきりと見えたので、それはもう必然ではありません。私たちは神聖なものを基にした別の世界を選ぶことができます。

『コロネーション』は競合する様々なコロナの物語を引き合いに出しますが、そのどれにも囚われることはありません。2020年のある時点に私がどこかのポッドキャストで話したのは、コロナを理解できるとしたら、私たち一人一人はコロナについての確固とした信念、たぶん現実を一つにつなぎ止めているそのような信念を、少なくとも一つ手放す必要があるということです。その理由は、公衆衛生当局が規定する完璧に正統的な現実であれ、フェイスブックやツイッターであれ、ファクトチェッカーや主流メディアであれ、最も現実離れした陰謀論の並行宇宙であれ、そのような極端の間のどこかであれ、私たちのいたコロナの現実は根拠と理性だけから作り出されたものではなかったからです。その熱狂の幾分かが鎮まった今、砕け散った古い現実の破片を組み立て直し、健全で一貫した新たな理解を作る営みを、私たちは始めることができるのです。『コロネーション』はその営みの助けとなることを狙ったものです。確かに、それはパンデミックをめぐる全ての疑問に答えるものではありませんが、新事実が毎日のように現れている時に、そんなことができるものでしょうか。でも私が約束できるのは、新たな明瞭さと主体性を少なくとも一つの問いに与えるだろうということです。その問いとは、いま私たちがどんな世界を選ぶのかということです。

原文リンク:https://charleseisenstein.org/books/the-coronation/



目次

まえがき

ジカウイルスと、コントロールの心理構造
コロネーション
陰謀という神話
麻痺
白人至上主義の宴
祭の命 (「祭の死」から改題 )
ファシズムと反祭
群衆倫理とワクチン未接種者
生贄としての王
この地球という寺院
工業的医療を超えて
リハーサルは終わりだ
道は我らの前に立ち現れる

エピローグ: 帰り道


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