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「俺と同じだけ稼いだら家事も分担するよ」と言うのは実はものすごく卑怯な理由

こんにちは、taigaです。
今日も切り込んでいくつもりだ。テーマは題名の通りである。
夫婦における家事分担の論争に対して、僕が考えたことを語ってみる。

またもや男性に耳の痛い話かもしれないが、かくいう僕も日本にいたころは同じ考えで、『家事育児は稼ぎに応じて分担する』ことが普通だと思っていた。だがそれは恥ずかしい間違いだと気付いたのだ。
まあ、一皮むけるかもしれないと思って、ぜひ記事を読んでみてほしい。

◆ 夫が妻に言いがちなセリフ「俺と同じぐらい稼いでくれるなら家事も分担するよ」

これは夫婦が家事分担で口論した際に、夫が妻に言う切り札の代表例だ。

日本では妻の方が収入が低いので、このセリフは妻が専業主婦だろうと、パートやフルタイムで働いていようと、同じだけ効果がある。
なんなら、同じ職種(医者同士、弁護士同士、研究者同士など)でも使える、ほぼ絶対に妻を打ちまかすことができる禁じ手だ。

「俺と同じぐらい稼いでくれるなら家事も分担するよ」
「家事はそれぞれの収入に応じて分担するべきだ」


だからこそ、これらのセリフを言った瞬間、もしギャルゲーなら、今まで必死に高めてきた好感度が一瞬で地に落とす行為となる。
ガッツリ課金している場合、セーブ待ったなしで一気にスタート地点、つまり『恋人』から『近所の公園でたまにゴミを漁っている人』ぐらいの立ち位置に戻るほど破壊力のある言葉なのである。

それぐらい、『男の稼ぎ』とは、日本社会で働いている既婚男性ならほぼ誰もが使える『最強の武器』なのだ。
そして、そんなものを平気で出して『えーと、僕レベル999なんですけどそれでも勝負します?』とか言っているようなものなのだ。
それを引き合いに出して、妻を論破して引き続き家事育児を担当させる。悔しさの混じった妻の表情を横目で見て、さぞ気分のいい事だろう。

多くの夫(または収入が多く、家事をしない側)は、これらのことを一度ぐらいは言ったこと、あるいは少なくとも心の中で思ったことぐらいはあるに違いない。正直に思い返してみると、どうだろうか。

◆なぜこのセリフがとてつもなく卑怯なのか?

これに対する答えはひどく単純だ。
冒頭でもちょっと匂わせたが、現在の日本は『天地がひっくり返っても女は男より絶対に多く稼ぐことができない社会構造になっているから』の一言に尽きる。
どんな高給取りの女性でも、同職種の男性と比べたら、その平均給与はほぼ必ず低くなっているはずだ。

なので、先ほどの「僕より多く稼いだら家事を分担してあげるよ?」と言った時点で、絶対に自分が勝てる土俵に相手を無理やり乗せて、ドヤムフン(やれるもんならやってみろバーカ)と笑うのと同じなのである。

しかしこう言うと、以下のような反発も来るだろう。

「いや、それでも俺よりも高給取りの女なんていっぱいいるだろ」
「女が男と同じぐらい稼ぐことが別に不可能ってほどじゃないだろ」

このような声があちこちから噴出してきそうだが、まあ待て。読んでくれ。
その主張は一見すると、確かに正論を言っているように聞こえる。
なぜなら確かに高収入の女性は日本中探せば『いないこともない』し、妻が夫よりも稼いでいる家庭も『存在しないわけでもない』。

だがやはり根っこの部分が盛大に間違っているのだ。
統計データの一番割合の小さな部分を血眼になって探して「ほら!ほら!いるじゃねえか年収1000万以上の女!ハイお前の負けー!論破!」となってはいけない、ということだ。

◆日本の女性は男性のたった70%程度しか稼げない

よくよく考えてみて欲しい。
日本の女性の平均賃金・生涯賃金は男性のたった70%ぐらいだ。
なぜなら多くの場合、彼女たちはキャリア途中で結婚・出産・育児というライフステージが必ずやってきて、『結婚しない・産まない』という選択肢を取らない限り、決して逃れることができない。

20代で就職し、一番働き盛りの30代に結婚・出産がやってきて就業率がガクンと減り、再び40代でパートやバイトなどで『家計を助ける仕事スタイル』に戻る。これは統計グラフなどでよくある典型的な大黒柱家計モデルである『M字型就業率』で、一昔前の先進国も全てこのスタイルだったが、今はだいぶ変わっている。

同じ先進国であるのに、かつての横並びだった仲間からおいていかれ、日本だけが、未だに何十年か前の世界に取り残されているのだ。

出産すると、仮に元の職場に戻れても、時短勤務に加え、子どもに関する遅刻早退、突発的な休みは日常的に発生する。
そして多くの他の社員はそれを疎ましく思う。これが日本の現実だ。

恐らく、女性政策に力を入れている国々は『妊娠・出産前提でのキャリア育成プラン』を考えているので、母親・父親の育休は当たり前のものとしてカウントしている。妊娠したことで嫌がらせを受けるとか、日本でなぜ未だに行われているのかが信じられない。不寛容すぎないか?ドイツでは一発アウトの案件だ。訴えれば100ゼロで勝つことができるだろう。

おまけに地方に行けば行くほど、昔ながらの考えが蔓延っていることも忘れてはいけない。ナウいクールなキャリアママが通用するのは首都圏や大都市ぐらいだ。片田舎では未だに「ママが働きに出るなんて子どもがかわいそう。お金に困っていないなら外で働くのは単に女のわがままだ。大人しく家にいればいいのに」と責められることも多い。

そんな今の日本社会で、彼女たちはこの残酷な社会構造から逃れることができない。なので日本の女性にとっては『そもそも男性と同じだけ稼ぐことが絶対にできない現実が目に見えている』ということになる。

◆女性だけに存在する『ガラスの天井』

女性の収入を語る上で、もちろん『ガラスの天井』も忘れてはいけない。
独身だろうと、子どもがいなかろうと、女の役職は一定のレベルで面白いぐらいにピタリと止まる。係長や課長レベルの女性は多くなってきたかもしれないが、部長クラスになると極端に減り、役員クラスになるとほぼ存在しない。どんなに鈍感な人間でも、そのくらいは分かるだろう。

ちなみにこれを『女は能力が男よりも低いから、努力が足りないから高いポジションにつけないだけだ、高い給与を貰えないのは女の責任だ』と考えている人間は、社会の本質が見えていないので、『なぜ?なぜ?なぜ?』と問題を一つずつ突き詰めて行ってみよう。問題の本質が見つかることを心から祈っている。

または僕の過去記事を読んでもらうと少しは参考になるかもしれないので、一応リンクを貼っておく。

そんなわけで、日本に限って言うと、女性であるがゆえに、ただそれだけで、もう自動的にほぼ出世できなくなっていると言っていい。
結婚してようとしていまいと、実際のところ関係ない。独身を貫いていようが、DINKSのような子なし夫婦だろうと、日本の女性の出世は一定レベルでピタリと止まることの方がほとんどなのだ。
なぜなら、そうでなければ日本国内で女性管理職が圧倒的に少ない理由に説明がつかないからだ。

他の国の女性管理職は平均約30%、ドイツだと公務員でも確か40~60%ぐらいなので、日本の女性管理職が令和になった今でも未だにたった1ケタ台というのはとても誤差の範囲とは言い難く、『日本の女性だけが能力が低いんだよ!』などとは、どんな鈍感な人間でも決して言えないだろう。

これはやはり古いままの社会の価値観と、それを敢えて是正しようとしない日本政府の意図、というのを感じざるを得ない。
ちなみに言うと、どの先進国も戦後ぐらいまで、スタートラインは同じだったのだ。だからこの結果は日本がいかにこの分野での法改正・社会変革を怠ってきたか、ということである。

◆まとめ

ここまで読むと、いかに日本の女性が男性よりも稼げない現実に置かれているかが、少なくとも何となくは理解できただろう。

彼女たちは現在の日本の社会システムを理解して、ここに迎合しないと問答無用で完膚なきまでに叩き散らかされる日本社会の中で生きている自覚があるので、そもそも女性の多くは最初から出世・高収入など期待していない。

そんな彼女たちは、日本社会の求める人生のフェアウェイ(=結婚)に乗らされ、妊娠出産するとキャリアブランクができ、時には雇用形態も変わり、『出世・高収入』などという華やかな言葉はどんどん消えていく。そしてその後は給与水準が上がり辛いマミートラックに乗せられていく。

このように女性の平均給与が男性よりも少ないという事実がある中で、自分の給与を引き合いに出して、妻を絶対に論破できると確信している勝負を分かっていてけしかける。

「家事は収入に応じて分担しようよ。収入が少ない方がより負担するのは当たり前だよね?」

だからこそ、このような言葉が非常に卑怯なのである。

もし今まで理不尽な言葉を妻(またはパートナー)に投げかけていて、この記事を読んで「やべえ!」と思ってくれたのなら幸いだ。
今度相手から家事の分担を相談されたら、きちんと話を聞いてお互いが納得できるラインを探してみるといいと思う。

というわけで今回は以上だ。また次回!

この記事を最後までお読み下さいましてありがとうございました。 これからも皆さんにとって興味深い内容・役立つ情報を書いて更新していきますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。