45歳はじめての転職 第12話 ある日本企業の社内事情

第12話 ある日本企業の社内事情

段々と面接に慣れてくると受け答えも的確になってくる。心にも余裕がでてきてなおさら調子が上がってくる。

外資の質問は非常にダイレクトだ。例えば「今までのあなたの仕事で最も高い成果を上げたものはなにか?」「自分の能力で強いところはなにか?」など、自分がいかに優秀かを臆面もなく語らなければならない。

自分をほめるといったことは日本人にとっては違和感のあるものだ。しかし何度もそのような場面に立ち、そこをうまく切り抜けるために初めは恥ずかしそうに言っていたことも、繰り返して言っていると最後には慣れてきて堂々と言えるようになるから不思議だ。外資の場合、面接官も堂々と自己主張する場合が多い。

こっちもそっちも自己主張しあうのだ。しかしこのようなパターンに慣れてから日本企業の面接に同じようなノリで接するとしっくりいかないことがある。

ある日本企業での話。1次面接の試験官Gさんは管理系の役員、入社すれば私のボスになる人であった。年齢は私と同じで人柄も良さそうに見えた。面接も問題なく終わった。非常に好印象であったことはその場でわかった。すぐに2次面接が決まった。

後日、面接前日に私から電話を入れた。面接前にオフィスを見学させてもらいたいと思ったからだ。

Gさん「構いませんがどうされるのですか?」
私「職場の雰囲気を見たいのです」
Gさん「わかりました」

2次面接当日。面接官は社長であったが、その前に職場見学を終えてGさんと私で雑談をした。話はネットワークインフラの運営についてであった。この会社はeビジネス系の会社であり、当時の私の会社と近い分野であり、自然とその話になった。

私「我が社では今インフラについては私が担当しているので御社の課題もよくわかります。コストと効率のバランスをとるのは難しいですね。」
Gさん「そうですね」

2時面接での社長とのやりとりは非常にうまくいった。社長はその場でOKのような受け答えをした。創業者で若くしてビジネスを成功させた彼はどちらかというといまどきの青年で、率直な人だった。「希望の給与とポストについて後でGさんに伝えてください。」

私「わかりました。」

後日、私もヘッドハンターも内定がでるものと思っていたが、あにはかなやOKはでなかった。理由は「うちにはもったいない人だから」というものだった。

想像の域をでないが、社長が面接後Gさんと最終的な相談をしたときにGさんが採用に難色を示したのであろう。1次面接でOKを出し、推薦をしたはずのGさんがなぜ反対したのか。

Gさんは部下になる私に少しプレッシャーを感じたのではないか。私が人事の領域を超えて、Gさんのエリアまで入ってくるように感じたのではないか。

確かに、私は積極的に発言し、また行動した。外資の面接で体得したメンタリティのままに。しかし、Gさんにとってはこれがかえって違和感に感じたのではないのか。この会社での私のふるまいは積極的過ぎたのだと思う。


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