外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」 第20話 リストラクチャリングをする覚悟

第20話 リストラクチャリングをする覚悟 

今年は全社員の3%程度を目標に本人と話し合って雇用削減をしました。

弊社は日本においては成長過程にあり、更にメジャープレイヤーになることを目指しています。そのためには、成長を可能にする優秀な社員と強い組織が必要です。

強い組織とは「適正な人材が適正な場所に配置され100%の能力を発揮する組織」です。強い組織によって、会社はパフォーマンスを上げ、競合との競争に勝ち、成長します。会社が成長することで、資金を含めた資源に余裕が生まれます。そして、会社は更に成長するために何をしたらよいかを考える中で人材の獲得とリテンションを目指します。そのため、社員の給与や制度も改善されることになり、結果、働きやすい組織を作ることが可能になります。

もちろん、リストラは労働環境をよくするためではなく、会社の競争力を高めることが目的ですが、その副産物として労働環境の改善にもつながるということです。 会社が成長することは働いている人の労働環境をよくするための必要条件といえます。

会社が成長するために「リストラクチャリング」が必要であるという話をしましたが、その時、人事としてはどのような対処が求められているのでしょうか。

リストラの場面で対象者が問題になるのは、多くの場合、ポジションと個人のミスマッチが発生していることです。つまり、会社の求める業務とその人のスペックがあわないということです。まずはOJTや一定のトレーニングによってそのギャップを埋める努力が行われなくてはいけません。人事としては、部門での評価とその後のフォローアップが適正に行われているかを正確
に把握する必要があります。

しかし、会社の求める業務とその人のスペックのギャップがどうしても埋まらない場合、長期的視点に立って、転職を推進することになります。そのために、会社は転職をサポートするスキームを提供する必要がでてきます。人事としては転職支援や退職加算金といったスキームを準備し、そのサポートをします。転職への働きかけは、以上のようなすべての条件が整ってから行うことになります。

但し、例え理論的には正しくても、会社を去るということは、大きな決断で短期的には本人の痛みを伴うものです。対象者には誠意をもって接し、その痛みをできるだけ共有し、また課題を軽減するように努めなくてはいけません。それは、言葉ほど簡単なことではありません。該当者も職場や人事もものすごいエネルギーを使います。

それでも、やはり会社としてはしなくてはならないことだと腹をくくることこそ人事担当のスタンスです。細心の注意を払いながら、誠意をもってできることはすべてやる、そして批判があれば謙虚に受け止めるという覚悟を決めるのです。


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