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南部ヨーロッパ旅行で訪れた美術館と印象的だったアート作品たち

夏にバルセロナ、アルル、マルセイユを旅行し、いくつかの美術館に訪れた。
日本ではなかなか体験することができないようなテーマの展示や貴重な作品群を鑑賞し、インスピレーションをもらってきた。

バルセロナはピカソやミロ、ダリなどの画家が活躍した街だし、アルルは晩年のゴッホやゴーギャンが生活した土地として有名だ。
マルセイユは元々はゴッホがパリから南フランスへ向かう際に目指していた土地で、ルノワールなど多くの画家に影響を与えた街でもある。アフリカからの移民にとってはヨーロッパの玄関口としても機能してきたため、地中海文化においても重要な場所だ。
その土地の空気の中に身を置きながら、アートを通じて歴史を学び感じる行為は非常に有意義なものだった。

当記事では訪れた美術館をまとめ、印象に残った作品を写真で記録しておこうと思う。


ヨーロッパ旅で訪れた美術館

Museu Picasso de Barcelona / ピカソ美術館

バルセロナで有名な美術館といえば、ピカソ美術館。
十年ほど前にバルセロナを旅行した際にも訪れたのだが、当時の記憶はほとんどない。
美術館一階にはピカソのポートレート写真が飾られていた。

ピカソの恋人だったFernande Olivierと過ごした時代をテーマとした展示が行われていた。
ピカソの作品だけでなく、ピカソの友人たちの作品も充実していた。

Fernande Olivierと過ごした時代は、あの有名な青の時代の直後。多くの美術館では、ピカソの初期キャリアにおいては青の時代にフォーカスしがちなため、本展示は個人的にかなり興味深かった。
青の時代含めてだがキュビズムに傾倒する前の方が、絵に対するハングリーさや熱量のようなものが何となくあるような気がして、個人的には感じるものがある。

赤背景に黒目の大きな女性がインパクトあった。
Fernande Olivierの彫刻。
ブルーと肌色の配色が良かった。

朝一番の枠で鑑賞をしたため、そこまで人が多くなくゆっくりと鑑賞することができた。

一目でピカソの絵だとわかる
目が印象的だった。
関係ないと思うけど、微妙にクリムトっぽい雰囲気があった。
バルセロナの空。

バルセロナのピカソ美術館は建築的にも好みだ。
窓から外を眺めると目に入ってくる、太陽の光に照らされたベージュの壁と雲一つない真っ青な空が、イメージするバルセロナそのものだった。

壁一面に作品が。
若き日のピカソ。
個人的にデッサン作品が好きで、長時間立ち止まって見ることが多かった。
ピカソはクアトロガッツのメニューなどの絵を手掛けていた。
青の時代の作品集も。
バルセロナの風景を描いた有名な作品。
こちらもバルセロナの風景。
表情のインパクトが強い収容所の受刑者のポートレート。白い帽子は梅毒患者であることを表す。
ゲルニカにも影響を与えた絵。
広すぎず狭すぎず、作品のボリュームが絶妙に良かった。
パステルカラーが印象的だった。
鳩の作品群。バルセロナには鳩がたくさんいるので、人々にとって身近な生き物なのだろう。
ベラスケスのラス・メニーナスをオマージュした作品。
ラス・メニーナス関連の作品群はかなり充実していた。
大きな目のインパクトと鮮やかな色使いが良かった。
晩年は陶芸にも傾倒していた。
芸を極めるためには究極的には絵だけやっていても駄目で、全体的にやる必要があったのだろう。
シンプルなパティオ。

パーマネントの展示もかなり良い。
パリのピカソ美術館と比べるとピカソのキャリア的に重要な作品が少ないとも言われているらしいけれど、そんなことはない。個人的にはパリに負けないほどの良さがあると思う。

作品以上に建築の素晴らしさも感じることができる、素晴らしい美術館だった。

Museu de l'Art Prohibit

Museu de l'Art Prohibitはバルセロナで最も訪れたかった美術館。
政治的・社会的な観点でタブー視されてきたアート作品だけが展示されている、かなり尖った美術館だ。

最初の階段を登る際に見えるポートレイト。

ジェンダー的な抑圧や人間の欲求を表現した作品、政治批判に切り込んだ作品、宗教的なタブーに踏み込んだ作品など、時代が時代なら大変なことになったであろうアートたちが盛り沢山。
どの作品も、実際に眼の前にすると考えさせられるものがある。

アウシュビッツを彷彿とさせるような作品。
女性の性欲はタブーとされてきたことに問題提起した作品
毛沢東を扱うモダンアーティストは多いと思うが、ここでも作品展示されていた。
いろいろすごい作品。
圧巻の30組の靴。
尿の中に沈められたキリスト像。
磔にされたドナルド。すごい光景。
トランプへの冷やかしのような作品。
資本主義の象徴とも言えるマクドナルドを使ったアメリカへの皮肉。
大きな美術館ではないけれど、おそらく大理石であろう建築もかなり美しかった。
このスペースの左側に並べられた作品は、かなり過激でフェティッシュだったので掲載不可。
慰安婦を扱った作品。
これは普通に使えるトイレ。こんな所までかなり作り込まれていて感動した。
数分のビデオ作品も上映されていた。
かなり暑かったけれど、テラスに出ることもできた。
エレベーターもこの世界観。

以前訪れたアムステルダムのSex Museumの内容もかなり衝撃的かつエンタメ的に面白いものではあったが、こちらの作品群の方が一つ一つのアートから感じられる深みや複雑性、重厚感が格段に大きかった。

キース・ヘリングの作品。
バンクシーの作品。
本物の人かと勘違いしそうなリアリティ。
多分、コーラの冷蔵庫に入ったソ連の警官みたいな人。
過激な映像作品がループされていて、なぜか少し笑えた。
見応え十分だった。

Fondation Vincent van Gogh Arles

南フランスのアルルでは、Fondation Vincent van Gogh Arlesに訪れた。
アルルと言えばゴッホ。この美術館も必ず訪れたい場所であった。

宇宙や星をテーマに美術館全体が構成されており、各展示室ごとにDARKNESSやCOSMOSなど、さらにテーマが細分化されていた。
SFと芸術を組み合わせたような、非常にわくわくするような展示内容であり、終始ポジティブな気分で鑑賞することができた。

ゴッホの「ローヌ川の星月夜」。

普段はアルルではなくパリのオルセー美術館に保管されているゴッホの「ローヌ川の星月夜」が、僕が訪れたタイミングで展示されていた。
美術館を訪れる前日の夜にローヌ川を見ていたので、絵画と実際の風景を比べながら思いを馳せて楽しむことができた。

壁を利用したアート。
丸いキャンバスが宇宙感ある。
ビッグバンを想起させるような色使い。
コーヒー = 宇宙。
フロアごとの統一感が非常に高く、作品鑑賞に没入できた。
ゴッホのタッチにはいつも胸を掴まれる。
星月夜をオマージュした映像作品。
ストーリーのように、階を跨いで展示は続いていた。
シチュエーションと表情がシュールだった。
幾何学模様が良い。
配色が内面の心情を表しているような気がした。
輪郭の朧さが印象的。
光の使い方が良い。
最後の部屋にはゴッホがいた。
こんなアートは見たことがなかったので、かなり好奇心が掻き立てられた。

屋上からはアルルの街を眺めることができた。
天気が良い中で温かい空気を感じながら歴史的な建築群を眺める時間は、非常に贅沢だった。

鳩の大群が遠くに見えた。
Vincentの門を上から見下ろす。
出口の壁面も作品らしい。

Musée Réattu / レアチュー美術館

アルルではレアチュー美術館にも行った。
アルルに来るまでこの美術館のことを知らなかったのだが、旅中に興味を持ったので訪れた。

控えめなパティオ。

宗教画のコレクションやピカソの作品などが保管されており、今まで見たことのない作品ばかりで予想以上に楽しむことができた。

序盤は宗教画が多め。
抽象化の究極。
ヌード写真のコレクションが多めだった。
ピカソの作品。彼の晩年の作品は個人的には好きな作品も多いものの、どうしてもセルアウト的に見えてしまうこともある。実際はどんな目的や気持ちで描いていたのだろうか。
ピカソの母のポートレート。

展示後半はヌード写真やストリート写真のコレクションの展示が充実しており、写真好きとしては非常に面白かった。
ヨーロッパの写真家の作品から得られるインスピレーションは、毎回とても大きい。

鑑賞中に雨が降ってきた。
展示後半はほとんど写真。
体のしなやかさが伝わってくる写真。
ストリートスナップのエリアはとても勉強になった。
マグナム・フォト的な写真が多かった。
この時代のパリのストリートスナップは最高だ。
デザインも。
雨が止みそうになかったので、少し弱まるのを待って退散した。

Mucem / ヨーロッパ・地中海文明博物館

マルセイユではMucemへ訪れた。
地中海のすぐ隣りに博物館があり、最高のロケーションだった。ユニークな建築も最高。

鑑賞時間が十分になかったので、駆け足での鑑賞となってしまった。
しかし展示のクオリティが高く新しい発見も多かったため、非常に面白かった。

ポスターのセンスが良い。

Musemでは展示室ごとに扱うテーマが異なっていた。
個人的にはナチュリストに関する文化やアートにフォーカスした展示に興味を持っていたのでかなり楽しみにしていたのだが、期待以上のものだった。

ナチュリストの展示。
ナチュリストについて考える機会なんて、今までなかった。
絵画作品もちらほらあるけれど、
写真作品がメイン。
全裸でトレッキングをしたり、
全裸でヨガをする文化があるらしい。
服も着ず髭も剃らずにビーチで暮らす老人。

ナチュリストの展示は過激というよりもどこかシュールな作品が多かった印象。
ナチュリストとヌディストの違いや、ベジタリアンとの違いなどについても考えるきっかけとなり、なぜ彼らがナチュリストを選択しているのかについて考察することも面白かった。

パーマネントコレクションの人気作品を集めた展示。
割とポップな作品が多かった。
電車の扉を利用した作品。
良かったけれど、個人的にパーマネント作品を集めた展示にはそこまでグッと来る作品はなかった。
Yvon Lambertのコレクションとのコラボ展示。
有名な印象派の作品をオマージュした作品。
バスキアのアート。
スヌープ・ドッグの凄さを改めて知った。
近くで見ると視点が定まらないような、不思議な感覚になる写真作品。
地中海文化をテーマにした展示。
彫刻のコレクションがかなり良かった。
モロッコのタンジェから見た地中海の映像作品。
アルジェリア側の地中海文化をテーマにした作品。
アルジェリアの大地。

パーマネントのコレクションの中で人気の作品を集めた展示、Yvon Lambertのコレクション、地中海文化をテーマにした展示など、どれもかなりマニアックかつ興味深かった。
アメリカカルチャーの象徴としてSnoop Doggのポートレイト作品が展示されていたり、アフリカ側の地中海文化にフォーカスした作品群が充実していたりと、個人的には印象に残るものが多かった。

これ以上ない空気感。

屋上はレストランになっていた。
別館へ渡ることができる橋があったので、海を眺めたりしながら空気感を楽しんだ。

屋上から橋を渡って別館へ行くことができる。
登れないけれど、Mucem本館の屋上はこんな感じ。
海のすぐ隣りというロケーションがやっぱり良い。
別館も見学しがいがあった。

まとめ

そんな感じで、写真が多めではあったが、ヨーロッパ旅行中に訪れた美術館をまとめてみた。

ピカソの過ごした土地でピカソの絵を、ゴッホの過ごした土地でゴッホの絵を見ることや、ナチュリズムのメッカとも言える南フランスでそのようなテーマの展示を見ることは、やはり別の場所で鑑賞するときよりも感じ方が違うと思う。
今回の旅でそのような体験ができたことは、とても貴重だったと感じる。

とはいえ、鑑賞時間を十分に取れない美術館があったのは少し心残りでもあった。
またいつか訪れる理由ができたと思いつつ、その時を楽しみにしたいと思う。

▼昨年のヨーロッパ旅の美術館レポート

ではまた。

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