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#骨董

迷妄する

迷妄する

428 (渋谷)
724106 (なにしてる?)

同僚から飲みの誘いかぁ…。

今日は会社帰りに新しいウォークマンの再生時間延長と音質向上を試しながら買い物をする。色もオヤジ臭い色今までのものから明るい色になったので、少し見せびらかすつもりで、カバンから入れたり出したり。駅ビルの洋品店や雑貨屋を覗いて、西友で食品を買って家に戻ったところだった。

家に戻ってもまだ音楽は鳴り続けている。
わたしが

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収める

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扉の小窓を覗くと、丁度彼は「キチント」に没頭しているところであった。

「キチント」というのは、彼の毎日の整理整頓作業のことだ。研究室の隅から隅までを、毎朝9時からきっかり1時間かけて整える。

毎日の事だから整える部分など殆どないのに、誰がなんと言おうと、同じ工程で、同じ場所を、同じやり方で整える。机の端から10cmのところに並べた3本の鉛筆の長さ、ブラインドの角度、飛び出たティッシュの向き——

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拾う

拾う

こんなことは初めてだ。

わたしが山に仕掛けた野生鳥獣を生け捕るための罠に鹿でも鳥でもなく、人が掛かっている。

寝ている。いや、意識を失っている。

見たところ家を追い出されたのか、焼け出されたのか?という感じである。
服もボロで長髪を木の皮で縛っている。男女の見分けはつかない。

地面にはハギレと割れた瀬戸物やガラクタが散乱していた。このヒトが持っていたものだろう。
初めてのことに慌てふためい

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馳せる

馳せる

夏の隅田川をゆうらりと進む屋形船。

連日連夜、呑めや歌えやの大宴会。

18歳になった私は、その日初めてお酌のお仕事をしたのでした。今でいうところのコンパニオンです。コンパニオンという言葉すらこの頃はあまり聞かなくなりましたけれどね。

取りどりのお酒と男たちが入り乱れる中に、そのガラスの瓢箪はありました。うるわしく凛と立つ瓢箪。その佇まいは、自ら夏の夜風を涼しく吹いているようでした。

青いガ

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模する

模する

炎天下、今日も作業服を着て道端で棒振る。スーツの初老のサラリーマンが面倒そうに私にイチベツして通過していく。工事現場付近の住人らしき老婆は、訳のわからんことを言いながら絡んでくる。
時間の経過を祈りつつ、交通安全の定義について想いを巡らす。

そんなこんなで、日が暮れたら家に戻り、汗も流さず缶ビールにありつく。ツマミに先ずは枝豆を茹でて、晩酌をスタート。

ぷち、ぷちぷち。プチっ。プチ。

これを

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