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アインシュタインが追い求めた真理

今回は、20世紀を代表する天才物理学者「アルベルト・アインシュタイン」についてまとめます。アインシュタインと言えば、物理学で最も美しい理論とされる「相対性理論」の大系をほとんど1人で作り上げたという偉大な功績で有名です。
彼は、その相対性理論の元になる理論を、なんと26歳で発表します。その時、実は大学教授でも何でもないただのしがない公務員でした。更にこの年は「光電効果についての光量子論」と「ブラウン効果について」の論文も発表しており、その3つとも科学界に、ノーベル賞に値する程の大きな衝撃を与えます。後に「三大論文」と呼ばれて、この年1905年は「物理学史上、記念すべき年」とされ、「奇跡の年」と言われています。

そして、相対性理論を着々と作り上げ、「ニュートン以来の大天才」と評されるようになり、そのユーモアな人柄も相まって時代の寵児となります。
その後も彼自身は、相対性理論に終わることなく、真理の追求をし続けましたが、相対性理論を完成させ、亡くなるまでの30年間は決して順風満帆とは言えませんでした。アインシュタインに影響を受けた新進気鋭の科学者達が提唱した「量子論」を受け入れず、独自の「統一場理論」を追い求めた後半生の30年間は、「無益な研究に空費した悲劇だ」とも言われています。

次々と統一理論を追い求めていく中で時に自らのそれまでに作り上げた理論さえ否定しかけてしまうこともあったアインシュタインに対し,世間は相対論によるアプローチでは統一理論は完成しないと考えるようになります。


周囲に反対されながらも己の直感を信じて、真理を追求し続けたその思いに触れてみようと思います。

アインシュタインの三大論文①ブラウン運動

まずは相対性理論を含めた三大理論の概要についてまとめます。

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ブラウン運動:
花粉から水面にこぼれ落ちた小さな粒が、不規則なジグザクな動きをすること。

彼はこの原因を解明します。このブラウン運動は『水の分子』に衝突することによって引き起こされると考えたのです。当時、分子というミクロの物質が存在することは予想されていましたが、高性能の顕微鏡がないため証明できていませんでした。そこで彼は花粉の大きさとその動きから、当たる水の分子の大きさを推定しました。これが後にジャン・ペランが分子のサイズを証明することにつながります。
誰にも分かっていなかった「モノが何からできているか」という問いに答える術を見出したのがアインシュタインなのです。

アインシュタインの三大論文②光量子論

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光電効果:
電子が振動すると電磁波を出す逆で、金属に含まれている電子に光が当たると電子が飛び出すという現象。波長の長い光(赤外線)を金属に当てても何も起こらないが、波長の短い光(紫外線)を当てると金属から電子が飛び出す現象。

当時の物理学の常識では、光=波だと考えられていました。しかし、彼はこの光電効果を用いて、光=小さな粒だと論じました。
光電効果は「波の強さ」ではなく「波の種類」によって起こります。赤外線をどれだけ強く当てても光電効果は起きませんが、微弱な紫外線を当てると起こります。これは光を波と考えてしまうと説明できません。波であれば強弱でエネルギーに違いが出てくるはずだからです。
そこで光の正体を粒だとして、波長の短い光は一粒当たりのエネルギーが波長の長い光より強いため、光電効果が起きるとしたのです。
これは光という存在の正体を突き止めるために大きな貢献を果たしました。

しかし、光を波と考えないと説明できない現象も多くあり、それが後の「粒でもあり、波でもある」という確率論的な「量子力学」につながっていきます。アインシュタインが終生受け入れられなかった理論にも大きく貢献しているのです。


アインシュタインの三大論文③特殊相対性理論

相対性理論:
時間と空間の関係、そしてその中にある物質が、周囲の「時空」にどのような影響を与えるのかを解き明かす学問。
「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」の2つがあります。

まずは、特殊相対性理論についてから。この理論は「光の速さは、常に一定の速度(秒速30万キロメートル)に見える」という事実に基づいて作られています。それに従って世の中を捉えると、動くものは
①時間が遅くなる②長さが縮む③質量が増える
という特徴を持っていると分かったのです。(とは言っても光に近い速さでないと僕たちでは認識できないので、非常に分かりづらいですが。)
また、物質の中には「巨大なエネルギー」が秘められていることも明らかにしました。エネルギーを与えると加速するが、質量が増えます。そして重くなった分さらに大きなエネルギーが必要になり、与えるとまた質量が増えていくという悪循環に陥ってしまいます。そのようにして上限いっぱいのスピードになると、与えたエネルギーが全て質量へと変わってしまうため、スピードが上限を超えることはないのです。(ちなみに光に質量はありません。だから秒速30万キロメートルで動けますが、遅くなることも止まることもできないのです。)

この質量とエネルギーの関係を式で表したのが、かの有名なこの式です。
E=mc^2
E=エネルギー m=質量 c^2=光のスピードの二乗

これを見ると、物質のどんな粒子にも莫大な量のエネルギーが含まれています。ちなみに物質1グラムと等価のエネルギーで電球1億本を1時間灯し続けることができるそうです…!!

これにより全ての物質がエネルギーの別の姿であることを明らかにしました。なので物質からエネルギーを取り出したり、エネルギーから物質を作ることもできるのです。
これが後に「核分裂」として実現され、図らずも原子爆弾の基礎となってしまいます。

まとめると、特殊相対性理論は全く別のものだと考えられていた時間と空間を統一したことに多大な功績があります。1つの「時空」としてまとめられることを明らかにしたのです。

その後発表する「一般相対性理論」

次に一般相対性理論について。
こちらは「物体に重力が働く場合」について次々に新たな事実を明らかにしました。彼は、重力と慣性力を物理学上同じものとして捉えました。つまり重力がある場合と加速度運動している場合を置き換えても考えられるとしたのです。ここから、「地球の上でじっとしている」=「何もしなくても加速度運動し続けている」という観点が生まれたのです。
そこから、重力が強いと、周囲の時空が歪んだり、時間の進み方が遅くなることを解き明かしました。つまり、質量を持つ物質が、周囲の時空に影響を与えることを明らかにしました。
僕たちの世界は、時間・空間・物質がそれぞれに絡み合って、成立しているのです。

詳しい説明はぜひこちらの本を。


「神がサイコロを振るはずがない」という美学

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彼はこのように当時の常識を次々と打ち破っていきます。有名な言葉がこちら。

「常識とは、18歳までに身につけた、偏見のコレクションにすぎません」


アインシュタインは、神様を信じているわけではなかったですが、絶対的なものを2つに分けてとらえていました。それぞれの祈りに答える「人格」神と、宇宙の秩序だった構造に表されているような神とを区別しました。そしてこの後者を信じ、それを解明することこそ物理学の務めであると考えていました。突き詰めると、この世界の真理は単純で、宇宙を支配している法則は美しいから、直感で分かると感じていました。神が設計したものは美しいに違いない。美しければそれが真理だったのです。

「神は老獪だが、意地悪ではない」

だからこそ、若い科学者達が提唱する量子力学という「不確定性理論」を受け入れることはできませんでした。特に「ミクロの世界は確率論的にしか決まらない」ことに納得がいってなかったのです。
量子力学の基礎理論であるシュレディンガーの波は確率波であり、予測できるのは粒子がどこにある見込みが最も大きいかということだけでした。

しかし、アインシュタインは確率という不確定なものではなく、真理は調和に満ちていて、美しいと信じていたのです。そのため受け入れることはできませんでした。

EPRパラドックス:量子論に関する奇妙な法則
(法則1)
「一方が赤なら、もう一方は白」という関係が成り立つ。=「量子もつれ」
(法則2)
「それが赤or白か?」は実際に見てみるまで確定しません。分からないのではなく、原理的に確定しません。観測して確定されるまで赤と白どちらの可能性もあり得えます。「重ね合わせの状態」

最後まで「真理を追う」信念を貫き通した研究人生

物理学の中心が量子論になってもなお、アインシュタインはそれを認めませんでした。自分の信じた研究のみで最後までやり抜きます。それが「統一場理論」です。特殊相対性理論は電磁気力、一般相対性理論は万有引力が出発点になっています。彼は残りの人生の全てをかけて、この2つの力を統一しようとしたのです。
しかし、それは完成するに至りませんでした。この研究の仕方が正しかったのかどうか、それは誰にも分かりません。ただ、アインシュタインの死後,統一理論への出発点が量子力学にあることが共通認識となります。
もし、アインシュタインが量子論を認めていたらこの統一理論がどうなっていたのかは、「たられば」になってしまいますね。

自然界には様々な力があり、それらは全て4つの力として説明がつきます。電磁気力・万有引力・強い力・弱い力です。これらは現在、元々1つの力だったことが分かっています。それが宇宙ができる過程で別れました。この元の力が分かれば、宇宙の「真理」にたどり着くことができるかもしれません。アインシュタインが追い続けた真理はいつか解き明かされるのでしょうか。


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