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成田 くうこう (小説、詩、エッセイ)
2017年9月1日 06:27
雨粒が爆ぜたら未分化な黄色い光が広がって黄ばんだ朝がやってくる広がった光が止めても止めても押し寄せてきて隠れても隠れても気づいたら後ろにいるからもうどこにもいけなくなってしまって灰色の海に浮かんでいるような朝、朝始まりを聴きながら緑色のまどろみの中に墜落するから全部溶けてなくなるよ、ぜんぶ、ぜんぶだからそれまでに私に追いついてすべてがなくなってこの冷えた土の上が一体どこだか分か
2017年9月4日 18:00
美しくぬかるむ泥の上吸い込まれる革の靴青いピーコートひるがえり半分だけの白い月水に沈むニレ科のけやき旋回するひくい鳥その低空のさざめきをウォークマン、聴きながら見る
2017年9月6日 23:27
光線のように降り注ぐ雨の中内臓の溶ける音を聴けよ埃が空気を切り裂く微かなヘルツ反響し合う寄る辺ない夜に見た事のない種類の鯨を見よ深刻な場所としての木星の海では計り知れない粘土の風がすべてを平らにしていて大嫌いな瞬間の基軸の中でゼリーのような命が揺れている全てが透明な植物性プランクトンのようになって今、精巧なステンドグラスの怪獣がこなごなになるようなその音
2017年9月11日 10:04
その言葉はやわらかい種類の液体のように黒い海の境界をたゆたっていて そこで生まれ関節の数をたがえた雪は記憶となりやがてついえたここにいようと笑う君の皮膚の裏で崩れる骨のその音はいつかの原始の水を温め流れだした調和の中で忘れられない悲鳴を時間の外に閉じ込めるのだろう「泡を吐いた夢を見るよ」「君を見てるとなんだかすごい悲しいんだ」「笑いながら手を振るからみていてね」そう
2017年9月12日 17:25
光をすう雨粒が 刹那 点となる点となった白い光 せつな 線を引いて切ないあふれだす気持ち 無駄に 流すという無駄をイアフォンで 耳 ふさいで 冷たく暗い音に沈めるかかとから溶けるよ ほら かかとから落ちるよ 固く ぬれた 地面でゆれる 空気に 冷えた みらいは今も 見えるよ 赤い 海辺さびた においと なみだ こらえてあのね 最後に たべて ゆびから
2017年9月14日 02:51
散らばる虹色の、油膜のような残像機械のような冷たい眠り呼吸のせつな、乾いた血の混ざる人工灯の洪水、その粒立ちまであわあわと細かい音の波、目を閉じてもなお入り込む電磁波の群れ、しきりに何かを温めようと彷徨う闇に浮かぶ黄色いクラゲ、剥がされた爪のようひとひらの羽虫、一日と命が持たない一人になれない寂しさ、私から生きる力を奪うその夜に私は弱さの中にとどまることをここに
2017年9月21日 22:54
朝に夕に思いつのらせたままそれでも澱のようにたまったそれらは私の体の中で無意味に発熱し体温を無秩序におかしくするばかり何もかもを滞らせたまま心と体は切り離され切り取られたそれとの距離見失ってしまうのは何よりも怖いねってねぇ怖いねっていろんな人が事あるごとに肩を叩いて教えてくれるねぇ信じて決めた場所まで走り出しなさいってあなたは言うけど私は生まれつき足が重いから