父からネクタイを借りて、

最近の夕食時の話題は一つ。
来週に控える「息子五歳の誕生日と七五三撮影会」
実家の母も参加してくれ、妻の父母も合わせ大所帯なお祝いとなりそう。

当日のネクタイを迷ってると話したら、妻に妙案。
「じいじの使ってたの、持ってきてもらえば？」
母に電話すると二つ返事でＯＫ。
「いいのがある」そうだ。（どんなの？）
じいじも参加できてよかったね、と盛り上がった。

食後にりんごをつまんでいると、息子が天国の話を始めた。
保育園で教わったという。
どういう場所で、どういう人がいて、どんなふうに暮らしているか。
絵本を見せてもらったそう。

「絵の中にじいじがいたよ」
息子のリップサービスだろう、ニコニコしながら言う。
「カラオケしてたよ」
生前、がん闘病の通院以上にカラオケに通っていた父。
――ああ、歌ってるかもしれない。

「忙しいから、来てくれるかな？」
――五木ひろしがかかってたら無理かも。

えーっ

天国にいるひとのこと冬林檎

（てんごくにいるひとのことふゆりんご）

季語（三冬）：　冬林檎