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引き算の美学、掛け算の創作(十二月の十七音まとめ)

手直しするときにいちばん大事なのは、余計な言葉をすべて削ることだ。

スティーヴン・キング『書くことについて』より

金言を引かずとも「書くことは削ること」を座右としてきました。
文章は短いほど良い。人物の状況と行為が分かれば十分で、心情や主張は書かずとも文脈から感じさせよと。
美学と言うよりもはや信仰に近いか。
毎回、頼まれもせず三分の一を削って400文字にする偏執。

そしてその究極が十七音の俳句だとも思ってきました。

ある時、夏井いつき先生とコピーライターの方の対談記事を読みまして。
共通点の多い中、唯一「コピーは引き算」という作法に「そこだけ違う」とおっしゃたんです。「俳句は掛け算」だと。
表現したい言葉と全く別に掛け合わせたら面白い言葉を選んできて、その化学変化を楽しむんだって。

コロンブスの卵。新たな創作ヒントを頂いた気分です。
削ぎ落すだけでなく、膨らませる遊び心。
自分の場合なら――
俳句 × 写真
400文字 × 十七音
一方が一方の説明に終わらない工夫。
日記を小説風に書いているのも含め、来年はそんな冒険(失敗)も楽しんでいけたらと思っています。


[十二月の俳句一覧]

句歴三年目。「日常に付箋を貼る」をベースに季語の力を借りてより創造的飛躍ができたらと思うようになりました。
※ 日付をクリックすると、当該エピソード(400文字)が開きます。

1日 注射する子らの泣き止むくしやみかな
3日 コースターの着ぶくれ母子を目で追へり
3日 日向ぼこして待つ夢の国パレード
4日 孫が望むデジタルコイン雪催
5日 サプライズ仕組む子の声霜の声
6日 敗北の痛み剋する寒鴉
7日 大雪や応募締切日の近し
8日 クレヨンにちっこきみどり冬ぬくし
9日 真っ新な二人掛けソファレノンの忌 ☆
11日 刈り上げ深き中年の湯ざめかな
12日 雪蛍CQ天国聞こえますか
13日 セーターの胸に新生児のおなら ★
15日 梟や星へ成就の報告す
16日 冬凪の青ポストより出す懺悔
17日 園児らの聖夜劇ハンケチ二枚 ★
18日 熱燗に撮影ミスのアーカイブ
20日 落葉踏む一つ物語を終えて
21日 水洟の「せんせい いしょう ありがとう」
22日 鬼ごつこ追はれて嬉し霜柱
23日 「ん」のつく食べ物競ひ合ふ柚子湯
24日 サンタさん目印はマカロニリース
26日 枯木星寄り添つてバス待つ家族
27日 煤払ひ単三電池抜くおまる
29日 逝く年や奇麗に食べし中華皿
30日 一つ前の駅より歩くホシヅル忌


太字は妻の選んだお気に入り三句。
六歳息子の特選 ★は、13日 セーターと17日 聖夜劇~ の二句でした。

妻「セーターは、抱っこしてる情景とおならのミルクの匂いの温かさが伝わってきた。は、この季語がとても幻想的でいいなあって。もちろん私の個人的な喜びもあるけれど……。柚子湯は、親子の仲睦まじさが柚子の香りと同時にふっと浮かんできたところ――です。」

息子「赤ちゃんのおならは僕もいいと思った。あとやっぱりクリスマス発表会のやつかな。忘れられない思い出だ。」

スキ数(☆)では、レノン忌の句でした。これは小説風日記も良かったんですかね。自分としても理想の記事になりました。
今年もたくさん読んでいただき、ありがとうございました!



※先月のまとめも、もしよろしければ____🖋



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