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その男、イクメンパパに非ず。

気になっていた。
前方に座る一家。
パパ、ママ、男の子はうちと同じ構成。
そして透明のプールバック。

家族で市民温水プールへ向かうバスの中。
アナウンスが聞こえず迷っていると、向こうのパパが颯爽と運転手に聞きに行ってくれた。
漏れ聞こえる会話から次の次と分かる。ありがとう。

白髪交じりの紳士。
私と同じで四十過ぎてからの子か、と共感を抱く。
違うのはその精力的な献身。
プールに入ってからも、子供に泳ぎの手本を見せたり、浮輪を引っ張ってあげたり。
父の役割を存分にこなす彼に少し嫉妬を覚えたほど。

衝撃が走る。
休憩の時、向こうの坊やが彼を「じいじ!」と呼んだ。
お……お爺様だったのか。
思わずスイムキャップを脱帽した。

二時間たっぷり泳いだ帰路。
またバスが同じになった。
今度は向こうが後ろ。

二十分の距離にうつらうつら。
五歳息子も私にもたれかかって寝息を立てる。
と、ひと際大きないびきが背後から聞こえびくん。
お爺様のものだった。


プール後の後部座席の鼾かな

(ぷーるごのこうぶざせきのいびきかな)

季語(晩夏): プール、プールサイド


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