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生きづらい。辛い。先が見えない。そんなとき、お坊さんがすすめる漫画とは?

仏さまや仏教についてもっと知りたいときや、日々に不安を感じたとき。仏教書のみならず、一見、仏さまとは無縁そうな本にも、仏教のヒントが隠れていることもあります。僧侶や仏教関係者である編集委員たちが選ぶ、仏教がもっと楽しくなる漫画をご紹介します。

悩めるブタが教えるまったく新しい「心」の教科書


『ブッタとシッタカブッタ 1 こたえはボクにある』
小泉吉宏 KADOKAWA、2003年

シッタカブッタカ

ブタが悩みます。
 「ボクは神経質でだめなやつだ」
 「こんなに愛しているのに」
 「どうして不幸なの」
 ……地団駄を踏む彼をふっと笑いながら、でも自分の姿でもあるとはっとします。「これは宗教の本ではありません」とありますが、作品名からして仏教が根底にあるのは明らか。それが4コママンガで表現され、仏教的な発見が続きます。欲をなくそうという欲に苦しむブタさん、ほんと、私のことでしたよ。(F)

悩するAIたちに寄り添う医者を描いたSF医療漫画


『AIの遺電子』(全8巻)
山田胡瓜 
秋田書店、2016年

AIの遺電子

仏教はヒューマニズムではありませんが、私の「不完全さ」を見つめることを大切にします。『AI の遺電子』の舞台は、人間が「完全さ」を求めて創り出したAIと人間が共存する世界。人間の「不完全さ」を欲するAI たちの姿から、「人間とは」を改めて考えさせられます。(Y)

少女漫画の金字塔から知る「生きること」の重み


『ポーの一族』(全3巻)
萩尾望都 
小学館/小学館文庫、1998年

ポーの一族

14歳で時が止まった2人の少年、エドガーとアランが主人公。永遠に生きることのもどかしさと孤独感が、100、200年と時代が移り変わる中で切なく描かれています。永遠のいのちが、かえって儚く感じられ、生きることの重みが美しい絵と共に描かれています。(E)

倫理の教師が生徒たちに語りかける「より善い生き方」


『ここは今から倫理です。』(連載中・既刊4巻)
雨瀬シオリ 
集英社、2017年

ここは今から倫理です

宗教と倫理や哲学の違いは「救い」があるかどうかではないでしょうか。先生と生徒の葛藤からは「考えることで一時的に救われることがあっても、人間が人間を完全に救うことはできない」と感じます。そこが丁寧に描かれているからこそ、宗教者として魅力を感じる作品です。(Y)

真宗門徒なら、アジャセ王の逸話だけでも読むべし

『ブッダ』(電子書籍版・全14巻)
手塚治虫 
手塚プロダクション、2014年

ブッダ

神話やSF を織り交ぜながら、著者の死生観が描かれた『火の鳥』。本作は、最初はその一編として構想が練られたそう。もちろん、人間・シッダールタが生きた80年間と、遊歴の記録を羅列しただけの釈尊伝には収まっていない。

仏教が前提とする輪廻や縁起という世界観が、壮大なスケールとユニークな展開で語られている。真宗門徒ならアジャセ王にまつわる因果だけでも読んでみてください。きっと観無量寿経を読むのが楽しくなるはず。(K)

■番外編:子どもと一緒に楽しむなら……

往年の名作絵本から読み解く仏さまの心


『花さき山』
著:斎藤隆介、絵:滝平二郎
岩崎書店、1969年

花さき山

誰にも分かってもらえない……いいえ、そんなことはありません。山ンばが里のみんなの事を何でも見ていてくれたように、阿弥陀さまはいつでも、私のことを見ていてくださいますよ。そんな思いが自然とわいてくる、浄土真宗に通じる素敵な絵本です。(F)


※本記事は『築地本願寺新報』2020年7月号に掲載された記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。



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