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7時間歩いて見た朝焼けは、写真を撮る理由に見えた|横浜-鎌倉30kmさんぽ

ずっとやりたいことがありました。
夜通し歩いて、朝日を拝む。

汗ばむ夏でもなく、凍える冬でもない、いまやろう。
そう思い立ち、仕事終わりに旅支度を始めました。

歩くこと7時間。
足の痛み、筋肉の悲鳴、迫りくる時間など、私を襲うなか。
眼前に広がる朝焼けは、私が写真を撮る理由を見せてくれました。

今回は、約30km・8時間半の行程と、その中で感じた心の変化について語ってみようと思います。
先に述べておきますが、犯罪や事故への遭遇、ケガをしたときのリスクなど、決してオススメできる行為ではありません。
マネは推奨しませんし、したとしても責任は負えませんのでご注意ください。

だいぶ長くなりましたので、「朝焼けをサクッと見てぇゾ!」という方は『朝焼け』の章からご覧ください。

今回のルート

今回のルートはこんな感じです。

横浜駅~鎌倉駅~江の島大橋まで

横浜駅を出発し、鎌倉駅を経由して、江の島大橋の本島側まで歩きます。
Googleマップ上の距離にして29.2km、実際はトイレを求めて彷徨ったり道に迷ったりで、余計に歩いているのでだいたい30km。

鎌倉駅は経由せずとも行けるのですが、距離の調整と、せっかくならワクワクする道を通りたいと思い、北鎌倉~鎌倉駅~江ノ電沿線を通るルートにしています。

Google先生は6時間で歩けると言っていますが、疲れによる減速や休憩、撮影時間を考慮すると7時間くらいかかる計算です。
さらに今回は朝日撮影に1時間半くらいかけているので、計8時間半の旅路です。

当日までの準備

前回の長距離散歩記事『踊ってない夜を知らないけど、15km歩いて靴下の大切さを知った夜。』にて、いろいろ準備について触れていました

・靴下はちゃんと足首おおえるやつ履く
・スマホのバッテリーがもつか心配
・休憩場所あるか確認は必要
・靴下大事
・仮にスマホのバッテリー切れたとしてどう対応するか
・靴下
・カメラのレンズ選択に悩む
・くつした

踊ってない夜を知らないけど、15km歩いて靴下の大切さを知った夜。
より

まず靴下ですが、G.U.でくるぶしまで覆えるものを購入。
これで朝まで安心。

そしてスマホですが、スペック不足を感じていたので買い替え。
さらにANKERの10,000mAhのモバイルバッテリーも購入。
バッチリ。

さらにさらに。
歩きながら食べるお菓子と飲み物まで装備。
最高ですね。

唯一の失敗は、カメラのバッテリーを充電していなかったこと。
なんせ当日に「今日行っちゃうか!」とノリで決めたので、充電間に合わなかったんです…
これは反省点。

当日:横浜駅まで移動

仕事から帰り洗濯と身支度を済ませ、いざ横浜駅まで移動です。
ラッシュではなかったものの人が多く、(ここにいる人は家に帰るというのに…自分は夜遊びだぜ)と思いながら歩いていました。
時の流れを感じたのは、飲み会の後なのかテンション高めな人が多かったことでしょうか。

さて。
11月11日23時。
横浜駅を出発し、鎌倉までの旅を始めます。

「サグラダファミリアより長く工事してる」
でおなじみ日本のサグラダファミリア横浜駅

ワクワクしつつも、眠気に勝てるかな、ケガはしないだろうか、朝までに間に合うだろうか、と心配も沢山。
しかし歩みを止める理由にはなりません。
行くだけです。

最初の問題「トイレ」

歩く人がいない孤独感、それがいい

まず私が最初のゴールと設定したのは鎌倉駅。
横浜駅から21kmの距離にあるのですが、距離的にもランドマークとしてもうってつけです。
ちなみに23時に出発して、鎌倉駅到着予定は4時。

目標を設定したとはいえまだ遠い。
0時半ごろ、(本当に鎌倉に着けるのだろうか…)なんて思いながら。
どんな記事にしようかなって考えて、ネガティブな思考を払います。

そして1時ごろ、最初の問題が発生します。
トイレに行きたいのですが、幹線道路沿いなためコンビニが近くにない!
コンビニに入ったとしても、トイレを貸し出していない!
この問題は旅の最後まで付きまとうことになります。

とにかく急ぐしかない。
焦りと尿意を抱えながら歩くこと30分、1件のファミリーマートに遭遇。
ここでお手洗いを借りられ、命拾いしました。。。
飲み物を購入し、感謝しつつ旅を続けます。

眠気、襲来

街頭ですらエモく見える
街に賑やかさが戻っています

トイレ問題を解消し、意気揚々とあるっていた午前1時45分。
ふくらはぎに少々疲労を覚え始めます。
同時に眠気からか頭がボーっとする。。。

きっと眠気のせいですが、変なことも書いてました。
本当に眠気のせいです間違いない。

眠いせい。きっとそう。みてるー???

そして迎えた丑三つ時。
ホラー要素は一切ないのでご安心ください。
ここで取り出したのは、11日が「ポッキー&プリッツの日」だったのでプリッツ。
私はポッキーよりプリッツ派です。

チキンの味は薄かったですが、しょっぱさがちょうどいい

歩き始めてから3時間、トイレ以外に休憩なしです。
ご褒美で気分は上がりつつも、疲れは着実にたまっていました。

最初の休憩、そして焦り

私以外に歩いている人も
高架と川、リフレクション

2時37分、足先や足の裏側に違和感が出始めます。
おそらくは足が充血して膨張し、靴の締め付けがキツくなってきたことに起因するアレコレと推測しました。

ですが幹線道路沿い、かつ深夜。
休憩できる場所なんてそうそうありません。
藁にも縋る思いで2時41分、バス停のベンチを見つけます。

こんな時間なので、バスは来ません。
職質に合う怖さも抱えつつ、バス停で休ませてもらうことに。
靴を脱いでリラックスです。

ここで行程を再確認。
鎌倉駅到着が当初4時の予定でしたが、これはノンストップで行った場合。
撮影や休憩などを挟んだことで、20分ほど遅れが出始めています。
12日の日の出は午前6時過ぎ。
鎌倉駅から海辺まで歩くことを考えると、そんなに猶予がないのです。

焦りは禁物と思いつつも、焦らずを得ません。
10分だけ休憩し、2時51分に出発。
休んだものの、足の痛みは取れません。

第三の刺客、天気

レモニ オ
オシャ

3時。
遅れが出ているのを「写真撮ってるし、しゃーない」と納得させながら歩きます。
ここで空を見上げたところ、月がぼやけています。
雲が出始めていました。

この日に旅を決行したのは、天気がよかったから。
しかし予報が外れたとなると、計画が破綻します。
自力では何もできないもどかしさを抱えつつ、とにかく歩みを進めます。

3時14分、横浜市栄区から鎌倉市へ入ります。
眠気がピークに達し、疲れもあって次第に何も考えられなくなります。

そして予想はしていたのですが。
鎌倉を最初のゴールにした理由のひとつが、私に襲い掛かります。

鎌倉という地形、さらなる脅威

鎌倉は北と東西を山に、南を海に囲まれている地形をしています。
平地が少なく、アップダウンも激しく急なのです。
すでに4時間超歩いている体に、この地形が牙をむきます。

登りはキツいだけで済みます。
しかし下りは捻挫や転倒のリスク、何より体を支える足首へのダメージがものすごい。
めちゃくちゃ体力を持って行かれました。

そんな中、空を見上げるとオリオン座が。
冬の到来を感じつつ、先ほどまで空を覆っていた雲が晴れたことを知ります。
これは朗報と、疲れた体にムチを打ちながら進みます。

3時41分、横須賀線の線路に到達。
これを辿れば北鎌倉駅。
…と思いきや、ここで再度トイレ問題発生。

何が問題かといえば、ここは観光地なのです。
コンビニでトイレを貸してくれない確率が高い。
実際3軒ほど回りましたが、すべてダメでした。

とうとう法を犯さざるを得ないのか…
そう思いながら、鎌倉駅を目指して急ぎます。

ありがとう、公衆トイレ。ありがとう、鎌倉。

獣が出てきそうな林道。
落石注意の看板があるトンネル。
尿意。

そんな困難にあいながら、トイレを求めて鎌倉駅を目指す。
駅の東口にトイレが設置されていることを知っていたからです。
しかし1時間近く我慢しており、限界が近いことも確か。

そんな折4時24分、一筋の光明。
住宅街に公衆トイレがあるではありませんか。
鎌倉の御仏・神々に助けられました。
すべてに感謝を申し伝えつつ、ようやく苦から解放されます。

そして夢にまで見た鎌倉駅。
4時33分、ようやく到着です。
横浜駅を出発してから、実に5時間半。

ここで休憩を取ります。

改めて鎌倉駅~江の島大橋のルートを確認します。
中継地点として、由比ガ浜~稲村ヶ崎~七里ヶ浜を経由します。
稲村ケ崎まで約50分、日の出が6時ですから、本当に時間ギリギリです。

なのでプランを練り直します。
朝焼け撮影を由比ガ浜~稲村ヶ崎で行い、日が高くなるに合わせて七里ヶ浜を歩く計画。
これであれば、足の負担を考慮しても可能です。

4時46分。
足首の痛み、お尻と太ももの筋肉の違和感を抱えながら出発。
近くのコンビニで、後で楽しむためのビールと水分を買います。
ラストスパートです。

海が聞こえる

もはや疲れすぎて、スナップ撮影がおぼつかなくなってきました。
メモには「人ばっか撮ってるからか50mmのスナップ感覚がズレてる。」と書いてありますが、どちらかと言えば疲れでしょう。
もう色々おかしくなってました。

途中大幅に道に迷います。
10分ほどロス。
この時間帯の10分は大きすぎ…

しかし間に合う。
そう確信し、歩みを進めると。
海が聞こえてきます。
5時16分、由比ガ浜海水浴場に、海に到着です。

由比ガ浜より、東の空が明るくなる

アドレナリンが出ているのか、疲れを感じなくなって。
しかし痛みを抱えつつ。
東の空がほんのり明るくなるのを見て、稲村ヶ崎へと急ぎます。

感傷に浸りながらいよいよ。
5時21分、由比ガ浜と稲村ヶ崎の中間あたりで、朝焼けを撮り始めます。

朝焼け

光の道と船のコラボレーション
まるでモネの世界
これを見るために来たんだ

ここからは言葉もなしに撮り続けました。
私の眼前にあるのは、かつて画家・モネが見たであろう日の出と同じ光景です。
場所は違えど、この美しさは共通ですから。

刻々と色を変えながら、新しい一日を告げるように昇ってゆく日。
数時間前には不安材料であった雲も、どこか感傷に浸らせるような趣があります。

撮って、撮って、撮って。
もう言語とかいらない。
気の向くままレンズを向けて、気の向くままシャッターを切る。

40分間、ここで撮影していました。
とりあえず間に合った達成感と、残りの行程に対する意気込み。
いよいよ旅もラストです。

朝の景色、そしてゴール

ススキと秋の朝
稲村ヶ崎の松

徐々に高くなる太陽を背に、江の島大橋を目指します。
程よいところで、先ほど買ったビールを…と言いたいところで再び問題発生。
そうです。トイレです。

この時点で目指すべきトイレは決まっていました。
私の中で「見た目おしゃで映えるからポトレ撮りがちだけど実はトイレ」でおなじみ「片瀬東浜公衆トイレ」。
だいたい徒歩40分。

しかも写真を撮りながら歩くので、めっちゃ遅い。
さらに砂浜に足を取られてさらに遅い。
結局旅の最後まで尿意との戦いになってしまいました…
いい写真が撮れたので差し引きプラスですが。

まぁ道中はすっ飛ばしまして。

11月12日 7時45分、無事トイレを済ませて全行程終了。

歩行距離で約30km、時間にして8時間45分。

全てを終え、3時間前に買ったビールとチキン、残していたプリッツを頂きます。

鎌倉ビールのIPAは初見だったのでお試し

もうね、最高ですよ。

うまいのなんの。

やり切った感。
そこに注ぎ込まれる、IPAのさわやかな柑橘の香り、苦み。
チキンの肉々しさ、プリッツの塩気。
生きてるなぁ…

ここで緊張の糸が切れまして。
30分くらいウトウトしてしまいました。

さて、この後は寄り道しつつ帰ります。
8時47分、江ノ電江ノ島発鎌倉行きに乗ります。

ここで思う。
「電車ってすげぁな、座ってたら動くや」

おわり。

朝焼けは、写真を撮る理由に見えた

この後鎌倉駅で下車して、鶴岡八幡宮を参拝。
旅の感謝と、年内の見守りのお願い、年末また来ますの挨拶をして引き返します。
途中「さくらの夢見屋 小町通り本店」でお団子を3本頂きました。
もう頭回ってなくて写真撮り忘れました…おいしかった…

そして朝焼けを撮った感想。

自分が見たいと思って行って、自分がステキだと思うように撮って。
感覚を鋭敏にしながら、その美しさを伝えられるように、形にする。
それが写真を撮る理由だ。

そう強く思いました。

実は旅に出ようと思ったキッカケは、悩みに向き合いたかったから。
自分が撮っているモデルさんが、他のフォトグラファーさんに撮られているのを見て、嫉妬してしまったのです。
自分が何もできていないとき、他の誰かがステキに撮っている、と。

あとは自分の妄想。
自分でない誰かが撮ってそれで十分なのなら、自分は見捨てられるのではという不安。
スケジュールが合わないのは、実は嫌われているからではという妄想。
治したいと思った自分の悪癖に苦しめられていたからでした。

そんな感情は、旅の中で強制的に考えられなくなりました。
そして無心で写真を撮って、自分で感動して。

他の誰かがどうこうではなく、自分にできることをして、自分が感じたステキを提供することしか出来ない。
作品という結果だけでなく、その過程にも重要なことは詰まっている。

そのうえで好みの相性だったり、コンスタントに撮るなり、その他さまざまな要素が絡んで”いい写真か否か”に繋がるのだと。
自分一人で何でも解決しようとしてしまいますが、コミュニケーションですから相手の影響も存在する、そう認めるべきだなと思い至りました。

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無謀にも思えた30kmの旅。
また目的地を変えてやってみたいなと、すでに思っています。
しかし距離をこれ以上伸ばすのは、時間的にもトイレ的にもやばそうなので、30kmが限界かもしれません。

あとはロケハンも兼ねたいですね。
ルート提案の材料を増やしたい!

さて、今度はどこへ行きましょうか。
乞うご期待

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