未来断捨離｜毎週ショートショートnote

「無料であなたのお部屋のゴミ屋敷判定をいたしますが」

突然やって来たスーツ姿の男を見て、俺は笑った。ずいぶんと面白い仕事だ。いや、俺が笑ったのは、俺は整理整頓や掃除に関しては人一倍、いや、人の百倍気を遣っているので、ゴミ屋敷なんぞとは無縁だ。

「どうぞ」

俺は面白半分で「ゴミ屋敷判定員」を部屋に招き入れると、男は「ほうほう」と言いながら部屋のあちこちを見回し、手に持ったバインダーに何かを書き込んでいる。

「出ました。ゴミ屋敷判定AAA（トリプルエー）です」

意味が分からない。

「つまり……どういうこと？」
「近い将来、この部屋はゴミ屋敷になるってことです」

俺は「ふぅ……」とため息をついた。こいつはバカなのだろうか。

「床にチリ1つ落ちてないのに、なんでそうなる？」
「そういう部屋ほどゴミ屋敷になりやすいんですよ。そういう人と部屋、たくさん見てきましたから」

――数か月後。

「これはこれは……なかなかですね」

ゴミ屋敷となった俺の部屋を片付けるため、あの時の男が来た。

「大丈夫ですよ。バッチリ片付けますから」

清掃料215万円。

途中から気付いていた。

俺は暗示にかけられていたということを。

（了）

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たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「未来断捨離」です。

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先週のお題は「最後のマスカラ」でした。