最後のマスカラ|毎週ショートショートnote
――よし!
丁寧に塗ったマスカラをチェックして、私は気合を入れる。まぁ、彼氏の優斗はいつもマスカラなんて見てないけど。でも、今日はちゃんとマスカラを塗りたい気分だった。
待ち合わせ10分前、やっぱり優斗はいた。多分、30分前に来ていたんだろう。優斗は私を見て、驚いたように目を見開いた。
「あれ? 早いね」
「たまにはいいでしょ?」
カフェに入り、水を持って来た店員さんに優斗は「アイスカフェオレ」と言った。私は小さく「はぁ」とため息をつく。いつもこうだ。私はメニューも見ていないのに、優斗はさっさと注文する。いつもアイスカフェオレ。
「私はいいです」
店員さんにそう言うと、優斗は待ち合わせの時より大きく目を開いて私を見た。
「あれ? いいの?」
「いいのよ。すぐ出るから」
「だったら先に言ってくれればいいのに。テイクアウトにすれば良かった」
眉を寄せた優斗に、私はニッコリ笑って言った。
「別れましょう」
呆然とする優斗に「じゃ」と言って席を立った。
(了)
たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「最後のマスカラ」です。
些細なことだと思っていても、積み重なると、愛想を尽かされるかもよ…。(謎)
先週のお題は「秘密警察を宣伝してみる」でした。
ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!