お月様は聴いている|掌編小説(#シロクマ文芸部)
――月の耳が聴いている。
昔、祖母がよく言っていたこの言葉を、僕は本当のことわざだと思っていた。
自分の行いは、お天道様がちゃんと見ている。
自分が言った言葉は、月の耳がちゃんと聴いている。
行ったことも言ったことも、必ず自分に返って来る、と。
おかしな話だ。
「お天道様は見ている」という言葉は有名なのに、「月の耳が聴いている」という言葉はないに等しい。
祖母は「お月様は、こっそり聞き耳を立てるくらいがちょうどいいって思ってるんだよ」と言っていた。
なるほどね。
夜明け前に目が覚めて、カーテンの隙間から月が見えた時、こちらからそっと語りかけてみようか。
――眠れないんだ、と。
お月様は、なんて返してくれるだろうか。
(了)
小牧幸助さんの「シロクマ文芸部」、参加用です。
太陽よりも、月の方がロマンを感じるのはなぜでしょう。
こちらもどうぞ。
テーマ「眠れない夜に」で「CONGRATULATIONS」を頂きました!
ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!