レッドカーペットを歩きたい《ショートショート》
僕の夢はレッドカーペットを歩く事だった。
小さい頃、ファンタジー映画の主演俳優たちがレッドカーペットを歩く映像を見てからというもの、どうしてもレッドカーペットを歩きたかったのだ。
俳優を目指して演劇部に入り、高校卒業後は大学の外国語学部に通いながら、劇団にも所属した。
劇団ではほとんど役名をもらうことのなく、いくつかの小劇場で端役をしたり、裏方の手伝いをしたりした。
しかし、どれだけ努力しても俳優としての才能が開花する事はなかった。
俳優としてレッドカーペットに歩く夢はそこで断たれてしまった。
― 16年後 ―
「パーカー、次はこっちだ。そのあともあるから早めにお願いね。」
「わかったよ。」
『パーカーさん!公開おめでとう!今日を迎えられた感想を一言ください!』
「初めての主演映画で、こんな超大作になると思ってなかったから、びっくりだよ。嬉しすぎてまだ現実だと思えないくらいだ。」
その光景を眺めながら、次々に来る豪華俳優陣を捌きまくっている。
ここはレッドカーペットの上だ。
俳優として立てなかったレッドカーペットだ。
しかし、洋画俳優を目指していた時に学んだ英語力を生かして、通訳とマネージャー兼任し、今レッドカーペットの上を歩いている。
「パーカー。そろそろ、上映時間だ。行こう。」
夢のレッドカーペットを、俳優たちと共に何度も歩くことができた。
T-Akagi
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