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テレワーク不要論から見えてくるマネジメントの考え方...あなたは?

(写真は富士山の麓にある河口湖のほとり:2017年7月撮影)

世界的規模での感染症が社会にもたらした影響は大きく、また広範囲に及んでいることは誰も疑わないでしょう。

その影響が私たちの社会生活に直接的に、また間接的に変化をもたらしました。あるものは一時的のように思われますが、永続的な変化も少なくありません。

その中の一つに働き方の変化があります。

そんな働き方に関する変化、テレワークについて考えてみましょう。

テレワークを推進すべきであるとか、テレワークを辞めるべきだと、その賛否を明示するつもりはありません。

テレワーク・リモートワーク

テレワークやリモートワークは以前から存在していました。

しかし、今回の感染症対策で一時的かもしれませんが、広範囲に普及しました。

米国ではパンデミック以前からリモートワークやテレワークが一定数実施されていました。

パソコンが普及する以前の1970年代に考え出されたそうです。この記事は本格的に感染症防止策としてのテレワークが日本で実施される前の記事です。

もともとは、通勤時間を削減する。労働者が移動するのではなく、仕事を移動させようというアイディアだったようです。

しかし、パソコンの普及によって米国では、テレワークが進んだと思われます。

テレワークとリモートワーク、意識的に使い分けているケースもあれば、同義語として使っている場合もあるように思います。

テレワークもリモートワークも、「離れた(Tele、Remote)」ところから「働く(work)」という意味ですから、基本的には同じ意味です。

本来の働く場所(オフィス)から、離れたところから働くという意味です。

上の記事にもあるように米国ではWork Remotelyという表現が一般的で、Remote-workという言葉は、意味は通じますが、あまり使われないように思います。

米国の住宅は日本に比べて大きく、自宅に書斎があることも珍しくなく、テレワークやリモートワークが在宅で実施しやすい環境にあると言えるでしょう。

日本では自宅に仕事をする環境がつくりにくく、在宅勤務が米国とは異なっていたため、リモートワークやテレワークが、会社が用意するサテライトオフィスや、レンタルスペース、カフェ等の飲食店、コワーキングスペースなどが用いられました。

「時間・空間」についての考え方

協働しながらのモノづくりや接客業など、時間と空間を共有しなければならない仕事については、テレワークやリモートワークを全面的に導入する事はできないでしょう。

ここでは知的労働者と言われるオフィスワーカーについて考えてみましょう。

テレワークを余儀なくされた空間を共有しない働き方について経営者と従業員では見方が違うように思います。

従業員は多様な働き方が可能になったり、満員電車や長時間の通勤がなくなったりと、肯定的な意見が多く聞かれます。

「空間」という面では、自宅に仕事をするのに相応しい「空間」がなくても、「時間」の使い方が自由になることがリモートワークの利点だと感じているのでしょう。

つまり「自律時間」が増えることを評価しているのだと思います。

一方、雇用者側の経営陣や上司からは、消極的な意見が多い様に思います。

コミュニケーションが円滑にできない、スタッフのマネジメントができないので、生産性が上がらないというものが主なものです。

「空間」を共有しないICTを用いたオンラインのコミュニケーションは「時間」と「空間」を共有するコミュケーションとは異なりますので、同じようなコミュニケーションを行う事はできませんね。

私自身、多くの研修やコンサルをオンラインで行うようになりましたが、オンラインでのコミュニケーションでは、セッションの長さ、やり取りの仕方、ブレイクアウトルームなどの個別コミュニケーションの入れ方などなど工夫しなければなりません。

現在も学びながら調整しています。

総務省はICTの活用によってテレワークを推進しようとしているようですね。

コミュニケーションが円滑に進まないとの意見については、ICT技術の利用とオンラインコミュニケーションの仕方によって乗り越えることができる事が多いように思います。

しかし、「スタッフのマネジメントができない」という課題についてはICTで解決できること以上のものがあるように思います。

数ヶ月前、電気自動車で有名なテスラのCEOであるイーロン・マスク氏が公言した背景にも同じ課題が潜んでいると思います。

マスク氏は「オフィスに出勤して最低40時間は働くように」と公言したのでした。

マスク氏の発言は波紋を呼びました。

リモートだとマネジメントできないから生産性が低い

日本での雇用者でマスク氏に「よくぞ言ってくれた」と共感した人がいたかもしれません。

上述の「週40時間はオフィスで働くように」とのコメントに反応した人達に対して、マスク氏が「出社せずに働いているフリをしてるんだろう」と否定的な意見を述べたことが、更に波紋を呼んでいます。

つまり、マスク氏はオフィスの外で働くなら、働き手はサボってしまい、生産性が落ちるだろうと考えている訳です。

もちろん、自宅の書斎よりも、シェアオフィスよりも、もっと快適で週40時間どころか、そこに住んでいたくなるようなオフィスならば、分からなくもないのです。

GoogleがMITのキャンパスにオフィスを設置した時に、見学をさせてもらいましたが、そんなオフィスでした。

Googleは現在テレワークとオフィスワークのハイブリッドを実施していることから分かるように、オフィスにいて上司の目がなければ、サボってしまうからオフィスを魅力的なものにして、出社させようと考えている訳ではないのです。

しかし、マスク氏の発言は、従業員がオフィスでなければ「自律的」に仕事をすることはできないだろうと考えているようにしか受け取ることができません。

マネジメントはドラッカーによって次のように定義されています。

「組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関」

「明日を支配するもの」ピーター・ドラッカー

今から30年近く前にドラッカーの授業を受けたときに、ドラッカーは「マネジメントを一言で言い切ってしまうなら」と前置きしてこのように言いました。

「マネジメントとは『人を人として扱うこと』である」

マスク氏によれば、人は怠ける、サボる自律性のない生き物なのだ、ということになるでしょうか。

マスク氏は世界一の億万長者になりましたので、彼の人間観が正しいのだとの考えもあるでしょう。

しかし、人が生産性を継続的に上げるのは、その人の主体的、自律的なエンゲージメントによると思いますし、一人ひとりが仕事を通して「成長」することを通して、より良い成果が生み出されるのだと思います。

リモートワークやテレワークについてどのように取り扱うかの前に、根底にあるマネジメントの思想が問われるのだと思って、これからも「ひとづくり経営」を通して皆さんを応援する気持ちを新たにしています。

長くなりましたが、お付き合いくださりありがとうございます。



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