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16.売上が伸びないときにやってしまいがちな行動とは

事業をスタートしてみたが、なかなか売上が増えない時期があります。そんなときに「こうすれば売上が伸びるはず」と思って取り組むことが、実は効果的ではないこともあります。もうちょっとで芽がでそうなときに方針を変えてしまうことも少なくありません。目先のわずかな売上のためにとった行動でお客様が離れてしまうこともあります。そんな例をあげました。

※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して紹介しています。

テーマ22:売上が伸びないときに

◆あるレベルを超えないと成果が出ない

ビジネスは山登りにたとえることができます。
山には雲がかかっていて、登っているときは頂上が見えない状況だとしましょう。これは、今の自分ブランドも先が見えないという状況の比喩です。

p120山の図

このようなとき、通常は図中❶のように雲の中でも試行錯誤しながら徐々に頂上に向かって進みます。すると、ある程度のところで雲が晴れて視界が開けるでしょう。この雲の晴れ間が「閾値」という状況です。
閾値とは、刺激によってある反応が起こるとき、ある値以上に刺激が強くなければ、その反応は起こらないという限界値のこと。ビジネスにも閾値があって、あるところ以上まで登り続けないと成果が出ないのです。

ところが、雲が濃いので図中❷のように、あと少し頑張れば成果が出るというところで諦めて、また最初から別の道で登り始める人もいます。
自分の商品が売れるよう願って、別のアイテムを作り出したり、作風を変えたり、売り先を変えたりという、テコ入れを図りますが、閾値を越えないので売れるようになりません。
「儲かっていないときに打つ手は間違っていることが多い」という意識を持ち、自分の進んでいる方向を再確認する必要があります。

また、図中❸のように先行きが見えない雲中を嫌うあまり、あちらに手を出し、こちらに手を出し。少しでも評価が得られそうなことを探すばかりで本気になって取り組まず、ふもとをグルグル回っているだけということもあるでしょう。
少しは反応を得られるので調子に乗ったところで、成果がついてきません。本気で取り組まないものに成果はついてこないのです。


たまに図中❹のように、トレンドに合っていたり、競合が少ないなどで閾値が低いことがあります。そうするとパッと早く雲が晴れて、早い段階で売り上げが伸びてくるのです。
閾値が低いところは「何を誰にどのように売るか」という戦略を考える時点で決まっています。頭を使って儲かったのですから、ビジネスセンスがあるといえるでしょう。

閾値が高く、頑張り続けないと成果が出ないブランドが図中❹のような早く成果が出るブランドを見てしまうと、自分のやっていることに不安を感じて、図中❷のような逆戻りの道を行ってしまうこともあります。
自社ブランドがどういう状況なのかはその場ではわかりづらいものですが、頂上ではない方向、つまり間違った戦略や考えに進んでいても山は登れません。いかに閾値を越えるかという意識を持つことが大切です。
この意識は、モノを作ることではなく、顧客を作るという方向に向いていなければなりません。顧客を増やして一段一段階段を登るのです。


◆売り上げが上がらないときにやりがちなこと

事業を始めると、つぎ込んだ資金が膨らんでいるのに、売り上げが少ない「死の谷」と呼ばれる時期が訪れます。この谷をどうやって乗り切るかは切実な問題。
資金があるうちに、事業としての感触を得ていかなければ、進むか退くかという判断ができません。ビジネスとしての才覚や市場がないのに「今までの投資が無駄になるから」とさらに投資をして傷口を広げることになります。
ビジネスを始める人はほとんどの場合、自分は成功すると思っているでしょう。だから、始めたからには前に進もうとします。でも、事業の可能性があるのかどうかの判断材料になる顧客の声や支持してくれるバイヤーなどがいないとしたら、どうなるのでしょう? 本当に追い詰められて、貯金が底をつくまで進むことになるかも……。
資金がなくなってくると、余裕がなくなり、冷静な判断ができなくなります。そして、萎縮して失敗しないような作戦をとろうとするのです。追い詰められたときにとる作戦は、間違っていることが多いのではないでしょうか。

売り上げが伸びないと、少ない顧客の意見に影響されたり、今やっていることよりもやっていないことのほうが儲かりそうな気がして、手を広げたくなります。それが次のページで紹介するやってしまいがちな失敗例の数々。
次ページで挙げたような方法は、大きなブランド、資本力があるブランドが取るべき方法です。資金の乏しい弱小ブランドは、「集中化」という方法で戦うべき。イチかバチかで集中化するのは無策すぎておススメできませんが、試行錯誤しな がら力を集中化することはブランドの強みを作ることであり、小さなブランドには大切です。

売れていないときにこそ、冷静に自分が戦う武器は何かを見つめ直しましょう。創業期のデザイナーの場合、デザインの新鮮さやブランドの切り口の鮮やかさが武器になることが多いのです。

◆やってしまいがちな失敗例

●安く売る
売り上げが上がらないときの対処方法を知らないと、商品を安くしないと買ってもらえないと思い込みます。「在庫になるなら、安くても現金にしたいし、利益が出なくても売り上げ維持のために数を売らなくてはならない」と考えてしまうのです。
これは一時的に売り上げが上がっても、ブランドを好きになってもらうことにはつながりません。安く売るので資金がなくなり、徐々にジリ貧になってしまいます。思考停止して、安く売るのではなく、高くても欲しがってくれるために何をするのかを考えて実行しましょう。

●新たなブランドを立ち上げる
なかなか売り上げが上がらないと、自分のブランドは支持されてないと自信を失っていきます。そしてこのまま続けていていいのか不安に。
進む方向に迷いが出て、「今のブランドは失敗してしまった」「新たに現状に合ったブランドが必要だ」と考えて新たなブランドを立ち上げ、ただでさえ乏しい開発力や営業力を分散してしまうことになります。
方向が間違っていた場合は新たなブランドにすることで成果が生まれますが、閾値に達していないのだとしたら、もう少し頑張らなければ結果が生まれません。その判断を誤らないようにしましょう。

●売れ筋アイテムを増やす
購入してくれる少数のお客様の声に影響されすぎて、すぐにアイテムを増やしたり、市場で売れているアイテムの後追いをします。面白いアイテムを思いついたので、これなら売れるはずと思うことも。
売れ筋を狙って小手先で開発したアイテムでは完成度が低くて勝負になりません。また、無難なデザインになり、小さいブランドの強みである個性が希薄に。個性が弱くなればさらに売れなくなります。

●コストを下げる
「売り上げが低迷しているので、利益を確保しよう」と製造コストを抑えることも少なくありません。その結果、素材や縫製をケチって安っぽくなったり、プロモーションツールの質が低下したり、販売員の質を落としたりします。
このようなお客様のためのコストを下げてしまうと、ブランドの魅力が弱くなって、だんだんファンが逃げてしまい、さらに売れなくなるのです。

●とにかく展示会に出る
自分の商品に根拠のない自信を持っていると、「もっとバイヤーが集まる展示会に出れば成果が生まれる」と考えてしまいがち。むやみに展示会に出展してバイヤーに繰り返しアピールしても、レベルの低い商品を見せるのは逆効果です。
商品が悪くて売れない場合は、ブランドコンセプトの見直しや、商品のレベルアップを図らなくてはいけません。
何度も展示会に出ることで資金が減り、新たな商品開発ができなくなる危険性もあります。

◆コラム 売ってみないとわからないは思考停止

クリエイターに限らず、ファッション関係のみなさんが好きな言葉のひ とつが「売ってみないと売れるかどうかわからない」。たしかに商品企画担 当やデザイナーの思惑と異なった商品が売れたり、イチ押し商品が売れな かったり、予測を外すことも少なくないでしょう。しかし、「売ってみない とわからない」と言い訳して、消費者が欲しがっている商品を突き詰めて 考えることや最後の一点まで売り切る努力を放棄する場合もあるのです。経験やスキルが浅いのに、そのうえ考えることまで放棄したら、どうやっ てビジネスを成長させていくのでしょうか?
クリエイターや技術者、研究者などは、モノのことばかり考えて、売る ことに関しての情報が不足しがちなのにも関わらず、販売を軽視すること が多いのです。
それでは売れる商品が作れるはずもありません。
意識的にバイヤーや商品のヘビーユーザーなどの声を聞きに行く必要が あります。自分にとってビジネスの先輩を見つけて教えを請うのもいいの ではないでしょうか。とにかく情報不足、知識不足で考えた作戦では役に 立たないことがあるので、それを確かめなくてはいけません。



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