【うつ病って薬で治るの?】身をもって体感した"抗うつ薬"の効果とその怖さ
シリーズで掲載している「うつ病体験記」。
今回は、うつ病の治療には欠かせない「薬」の話。
“薬”って聞くと「副作用が怖い」「依存性が高い」とかあまり良いイメージを抱かない人は多いと思います。
僕は、うつ病を治療している時に心療内科の主治医から処方された「抗うつ薬」を約2年間、毎日飲み続けていました。
今回は、実際に僕が抗うつ薬を飲んでいた時の体験談、身をもって体感したその効果や副作用について書いていきます。
【記事に掲載する内容について】
うつ病に対する薬の効果・副作用は各々の症状や処方される薬の種類が違うので個人差があります。
今回の記事の内容は、あくまで私の体験談として参考にしていただけたらと思います。
※僕が過去にうつ病になった経験や、その経験から感じたことや学んだことを以下のマガジンにまとめています。
うつ病で苦しんでいる方、もしくはそのご家族の方などにとって少しでも参考になれば幸いです。
身をもって体験した”抗うつ薬”の効果と副作用
まず「うつ病を克服するのに必ずしも薬は必要なの?」ということに関して。
僕が思うに…
薬は必要だと思います。
ただ、薬はあくまで対処療法。
服薬治療を経験して、薬はうつ病を根本的に解決させるものではないと考えています。
以前の記事にも書きましたが、
僕は心療内科へ通院することや薬を飲むことに対してかなりの抵抗があり、症状がかなり悪化するまで病院に行くことができませんでした。
日常生活にも支障をきたすようになり、自分の気持ちだけではもうどうしようもなくなってしまった段階で、初めて心療内科に行き、そこで「うつ病」と診断されたのです。
そこで初めて、
うつ病を治療するために「薬」を処方され、約2年間、薬を飲み始めることとなったのです。
僕が処方されて飲んでいた主な薬は以下の通り。
(もちろん症状の変化とともに量や薬の種類は変わったりしました)
・フルボキサミンマレイン酸塩錠(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
→主に脳内の神経伝達物質セロトニンの働きを改善し、意欲を高めたり、憂鬱な気分などを改善する薬。
・セパゾン錠(抗不安薬)
→脳の興奮などを抑えることで不安、緊張、不眠などを改善する薬。
・ラミクタール錠
→興奮性神経伝達物質の遊離を抑制して神経の過剰な興奮を抑え、気分の変動を抑える薬。(抗てんかん薬として開発された薬だが、躁状態・うつ状態を予防する効果があることが発見されたことから双極性障害などの治療にも用いられる。)
※治療初期はフルボキサミンマレイン酸塩錠とセパゾン錠の2種類。症状が緩解してきた治療終盤はラミクタール錠のみを処方されていました。
初めて薬を飲んだ時の感覚は今でもよく覚えています。
「え?これもう治ったんじゃない!?」
と思えるほど気持ちが前向きになりました。
いつもネガティブなことばかり考えていたり、思考が働かずにボーっとしていた頭の中が嘘みたいに爽快になったのです。
その他にも、
・やる気が湧く
・食欲がでる
・ぐっすり眠れる
といった効果を感じることができました。
特に今までなかなか眠れなかった夜が、薬を飲むことによってぐっすり眠れるようになったのは自分にとって大きく、精神的にも体力的にも非常に助かりました。
その時は本当に今まで悩んでいたり苦しんでいたりしたのが何だったんだろうというくらい気持ちが楽になりました。
しかし・・・あくまで薬。
その効果は長くは続きません。
薬の効果が切れてくると、また元の状態に・・・。
薬を飲み始めた当時はまだ働きながら治療をしていたので、
朝に薬を飲んで仕事に出かけても、夕方には薬の効果も切れてきてしまい、仕事中に頭がボーっとする状態になってしまったこともあります。
何とか職場の人たちに悟られないように気を張って振る舞ってはいましたが、それがまた精神的に追い込んでしまいました。
最初の頃は「薬を飲んだ時」と「薬の効果が切れた時」の自分の状態のギャップがとても大きく、そのギャップにとても苦しまされました。
「薬が切れるとやっぱりダメなんだ…」とさらに落ち込んでしまうという悪循環にも陥ってしまいました。
その症状のギャップとともに苦しめられていたのが薬の副作用。
副作用にも十分注意しなければなりません。
もちろん処方される薬の種類によって変わってきますが、僕の場合は特に眠気に苦しみました。
当時は車で職場まで通勤していたので、朝に薬を飲むと通勤途中に猛烈に眠気に襲われるということがありました。
本当はこのような薬を服用している時は車の運転などは控えなければならないのですが、車以外の通勤手段がなかったこと、職場に通院していることや薬を服用していることを知られたくなかったため、当時の私はそのような行動をとってしまったのです。
さらに帰宅する時間になると、薬の効果が切れてしまって思考があまり働かない状態になっているので、車の運転は非常に危険です。
幸い大きな事故などはなかったのですが、今思えば非常に危険な行為だったと反省しています。
実際に服薬してみないと薬の効果や副作用は分からないと思いますが、僕はこの体験から適切な薬の量の大切さを肌で感じました。
もちろん薬の量をコントロールするのは医師であるため、私たちがどうにかできる問題ではありません。
しかし、薬を飲んだ効果・副作用を主治医にしっかりと伝えて、自分の症状に合った薬の量に調整してもらうことは非常に重要なことです。
適切な薬の量にコントロールしてもらう重要性
僕は「抗うつ薬」を飲むことはもちろん初めてでしたし、周囲にもそういった薬を飲んだことのある方はいなかったので、薬の効果や副作用に関する知識は全くありませんでした。
ですので、この薬の効果や副作用は普通のことで、処方された薬が自分の症状に合っているものであると疑いもせずにいました。
薬の効果が切れた時のギャップの激しさに対しても当たり前のことだと思い込んで耐え続けていました。
しかし僕は途中で通院する病院を変えたのですが、新しく通院した病院で初めて自分はかなり多い量の薬を飲んでいたことが判明したのです。
※病院を変えた経緯に関しては以前の記事に詳しく書いています。
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新しく主治医となってくれた先生に当時飲んでいる薬の種類と量を伝えると
「え?こんなに薬の量飲んでるの!?」
「とりあえず薬の量を減らそうか」
と言われたのです。
確かに薬の副作用や薬の効果が切れた時のギャップには苦しめられていましたが、薬の飲んだ時の気分の上がり具合や頭のスッキリさは抜群でした。
だからそう言われた時に、僕は正直「薬を減らしても大丈夫なのかな…」とかなり不安な気持ちではありました。
当時は藁にも縋る思いで通院して薬を飲んでいたので仕方ありませんが、こう思ってしまっていた時点で薬というものに"依存"傾向にあったのかもしれません…
では薬の量をコントロールしてもらった結果はどうだったのか?
薬を飲んだ時の一時的な効果はもちろん減りましたが、薬を飲んだ時と薬の効果が切れた時の気分のギャップが少なくなり、副作用としてかなり強く表れていた眠気もほぼ改善されました。
特に気分の落差によって情緒もかなり不安定になっていたので、量を減らしたことにより一時的な薬の効果は減ったとはいえ、それが改善されたことが気持ちの安定に繋がりました。
その先生いわく、初めに飲んでいた薬の量はかなり多かったとのこと…。
もちろん先生によって、薬に対する考え方や治療方針が違うので最初に診察していただいた先生を一概に責めることはできませんが、主治医を選ぶことの大切さもこの経験から学ぶことができました。
もし服薬治療をしていて、
・日常生活に支障をきたすレベルの副作用が生じる
・薬を飲んだ時と効果が切れた時の気分の落差が激しい
ということが生じているのであれば、もしかしたら症状に対して薬の量が多すぎる可能性も考えられます。
薬を飲んだ時の効果がとても良いから副作用や気分の落差は我慢すればいいというわけではありません。
そのような場合は主治医と相談することをおすすめします。
また絶対に自己判断で薬の量を調整したり、薬を飲むのを中止しないようにしましょう。
もし相談しにくい場合や相談しても主治医が何の対応してくれない場合は、僕のようにセカンドオピニオンという形で思い切って別の医療機関を受診して相談してみるということも一つの手です。
僕が服薬をやめることのできたタイミング
服薬を適切な量に調整してもらってから状態は少しずつ落ち着いていき、症状や薬の効果などをみながら徐々に薬の量を減らしていくことができました。
うつ病に対する服薬で怖いのは依存性。
うつ病になったことのない人でも何となく「なかなか薬を飲むのをやめられない」というイメージは持っているのではないでしょうか?
正直、僕も薬にかなり依存的になっていました。
「薬を飲まなくなったら、また元に戻ってしまう」
「このまま薬を飲み続けていればいつか絶対に良くなるはず」
カウンセリングなども同時に受けながら、少しずつ症状が改善に向かっていっているにも関わらず、そういう想いからなかなか心療内科への通院や服薬に対してかなり依存的になっていたのです。
あくまで僕の体験談として読んでいただきたいのですが、
薬を飲み続けていくことによって少しずつ薬の効果は感じにくくなっていくものだと思われます。
要するに薬を飲んでいても気分の上がり下がりの幅があまりなくなっていくという感じ。
かなり簡単に作成しましたが、以下の図のようなイメージ。
ただ、このような変化は少しずつ症状が落ち着いてきていることの表れなのだと考えます。
症状は落ち着いてきたからといっても、この時期はこの時期でかなり大変な苦労がありました。
以前に比べれば良くなってきているけど、なかなか変わらないという状態が長い期間続いたのです。
いわゆる回復の「停滞」を強く感じた時期。
おそらくこの時期は薬だけで回復できる限界に来ていたのかもしれません。
僕自身、うつ病を克服できた過程の中でこの時期が最後の壁として立ちはだかったのです。
薬を飲んでもあまり効果を感じられないけど、薬を飲まないのは不安という状況。
うつ病の症状ではなく、「薬を飲まなかったらまた元に戻ってしまうかも…」という不安を打ち消すために薬を飲んでいるようなものでした。
主治医の先生からも「そろそろ薬飲まなくても大丈夫そうだけど・・・」と言われていましたが、薬を飲むのをやめるのが怖くて「分かりました」とはなかなか言えませんでした。
さらに「じゃあ調子の良い時は飲まなくても大丈夫だよ」と言われても、きっちり処方された分の薬は飲み切っていました。
では、そんな壁にぶち当たっていた僕が、
なぜ通院をやめることができたのか?
なぜ薬を飲むことをやめることができたのか?
もちろんそれを判断するのは主治医の先生ですので、自分の判断だけで決して通院や服薬をやめないようにして下さい。
僕の場合は
たった一つのあるきっかけでした。
そのきっかけとは、
主治医の先生が通院していたその病院を退職するという出来事。
もちろん主治医の先生は「退職するからもういいだろう」という無責任な対応をしたのではなく、その当時の僕の症状が通院や服薬を今やめても大きな問題とならないと判断しての提言でした。
ここから先は薬ではなく、自分で一歩踏み出して行動していくという段階に来ていたのでしょう。(復職などに対して)
他の先生への引き継ぎを行おうとすればいくらでもできたわけですが、その先生に最後の一歩を踏み出す背中を押してもらったような形です。
何とも他人任せな理由でしたが、それでも何の問題もなく薬を飲むことから卒業できたのです。もちろん最初は不安な気持ちでいっぱいでしたが。
うつ病になっている本人からしたら、
医師から通院を卒業できる状態、薬を飲むのをやめても問題ない状態と言われていても、なかなかその一歩を踏み出すことはかなり怖いことです。
「また、あの時みたいな状態に戻ったらどうしよう…」
「薬を飲み続ければもう少し良くなるんじゃないかな…」
頭の中はそんな不安で溢れていることでしょう。
僕もその不安が強く、主治医の先生から大丈夫と言われても、なかなか通院や服薬をやめることができずにズルズルと時間だけが過ぎ去っていきました。
通院を終了するタイミングや服薬を終了するタイミングは明確な基準があるわけではなく、医師の方針やその人の症状などによって変わってくるものです。
ただ、症状が落ち着いてきて薬を飲んでも体感的に効果をあまり感じられなくなってきている、かつ気分の上がり下がりがあまりない状態になってきているという段階は通院や服薬を卒業する時期が近づいているのではないかと考えます。(※これはあくまで僕の体感なので参考程度に)
あとはどんなに小さなことでもいいのできっかけを作ってあげること。
僕のような強制的なケースはかなり希少ですが、例えば新年を迎えたなどの時期の移り変わりでもいいので、何かしらきっかけを作ることは大切です。
ただ、それは主治医の先生が「いつ通院や服薬をやめても問題ない」という判断があることが前提です。あとは自分の決断次第という状況の場合。
決して自己判断で中断せず、主治医の先生の指示にしたがってください。
もし、うつ病で苦しんでいる当事者のご家族など身近な人が読んでくれているのであれば、最後の壁を乗り越えるために手を差し伸べて支えてあげて下さい。
本人の状態や状況をしっかり把握して、薬をやめても問題ない時期にきていると主治医の先生から言われたら、通院・服薬から卒業するきっかけを一緒に探してあげて下さい。
本人も「いつかは…」という想いがあり、きっかけを探しているのかもしれません。
"薬だけ”では決して治らない
僕が服薬していた経験を通して今思うことは「"薬だけ”ではうつ病を根本的に解決することはできない」ということ。
薬だけでは必ず限界があります。
これは強く思います。
間違えないで欲しいのは、薬を飲むことは悪いことではありません。
うつ病を克服する上で服薬治療はかなり重要です。
薬を飲むことによって落ち込んでいた気持ちが前向きになり、行動する気力が湧いてくるのは事実です。
薬はうつ病を治すものではなく、うつ病を克服するために行動を変えるきっかけを作るために必要なものと捉えていただいた方がいいかもしれません。
例えば、ずっと部屋に引きこもっていた人が薬を飲むことによって外に一歩出られるようになることもあります。
そして、外に出ることによって太陽光を浴び、心や頭がスッキリするという可能性も大いにあります。
このように行動が変わることによって考え方や心が変わることを「行動療法」といいます。
僕はカウンセリングを受けていた時に心理カウンセラーの先生から、(毎日部屋に引きこもっていた僕に対して)
「今週は自分の部屋以外の家の中を一か所でいいから掃除してみよう」
と具体的な行動を促していただいたことがあります。
これがいきなり「街に出て知らない人に話しかけてみよう!」なんて言われたら絶対にできません。(それは今の僕でもビビります)
どんなに小さなことでもいいので無理のない範囲でいつもと違う行動をおこしてみることが大切です。
廊下を雑巾がけしたり、窓を拭いたりと…最初は1日5分とか10分という非常に短い時間でしたが、少しずつ行動を変えていくようにしました。
正直、最初は心の中で「そんなことやってもうつ病は良くなるわけないだろう」と否定的な気持ちでした。
もちろん掃除をしようなんてやる気も全く湧いてきません。
「やる気のないままでいい」と言われていたので適当に5分くらい行う程度。
本当にちょっとした行動の変化ですし、心の変化なんて1回で実感できるものではありませんでした。
しかし、それでも積み重ねていくことで少しずつ心も変化していったと思います。
ほとんど部屋の中に引きこもっていた生活も部屋以外の家の中で行動する時間が増え、そこから家の外へと少しずつ少しずつ行動の範囲を広げていくことができました。
そして行動を少しずつ変えていくことと同時に、カウンセリングで自分自身を見つめ直し、自分がうつ病になってしまった原因や間違った心の癖と向き合ってそれを修正していくことでうつ病を克服できたのです。(ここに関してはまた別の記事で詳しく書いていきます。)
自分の行動を変えていく。
自分の考え方を変えていく。
それが本当の意味でうつ病を克服するために必要なことだと僕は思います。
薬を飲んでうつ病の症状や気分の落ち込みを抑え込むだけではうつ病を克服できたとは言えません。
ただ、うつ病の症状が辛い時はこういうことを考える余裕なんてありません。そもそもできないのです。
まさに僕もそうでしたから。
だからこそ薬を飲んで少しずつ症状を落ち着かせていくことで、行動したり自分自身を見つめ直す余力が少しずつ出てくるのです。
過去の僕も含めて大抵の人は「薬を飲めばきっと治る」という勘違いをしており、薬に依存してしまう人は非常に多いと思います。
薬は必要だけど、“薬だけ”では治らない。
薬だけでは必ず限界があります。
これは絶対に頭に入れておく必要があります。
どんなに小さなことでも良いので自分の行動を変えてみる。
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