[読書感想文]ROW&ROW
村山由佳さんの恋愛長編小説です。
主人公は43歳、広告代理店に勤めるデキる女涼子。夫は3つ年下の美容師、孝之。結婚して13年目の夫婦の間に、20代の美登利が現れ、男女のバランスは生々しく面白いように崩れていく。
久しぶりに生々しい恋愛小説を読んだ。
主人公は私と同じ歳だけれど、働く環境も立場も全然違う。都会でバリバリ一線で働くやり手な彼女と、郊外で自宅兼仕事場で美容師として働く夫・孝之なら、私は孝之の方の立場に近く読み進めていっていた。
20代の美登利が、真っ直ぐに孝之に好意を寄せる。それはそれは真っ直ぐで、そりゃあ可愛いだろうなぁ、と思ってしまう。
彼女を生々しく抱くとき、全身に力が漲り、なんでもできると腹の底から湧き上がる活力。尽きることの無い欲望で周りは見えず、すべてがそこへ向かうかのように思えてならないのだ。
愛しい。
バカバカしいほどに、絆されて。
あぁ、なんてバカなんだろう。。。
甘美なスリル。
けれどこんな目で、そんなにも真っ直ぐに求められれば、もうどうとでもなれという気にもなってしまう。
恋というものは、いつでも、「頭」の言うことを聞いてくれない。
かたや、涼子はといえば、仕事も出来て職場での信頼は厚く、魅力的だ。それも、ちゃんと寂しさや虚しさが彼女に隙を作る。
いい女だ。
鎧を着て、心までも頑丈な、隙のないやり手よりも、ふとした表情や態度に垣間見る「弱さ」は、格別だ。
独身の若い野々村、昔の男(妻子持ち)の矢島、体の相性はどちらも良かったけれど、懐かしく知り尽くした体は、より涼子を解放する。「自由を思い出す」セックス。
小説の中のことだけれど、とてもセンセーショナルな出来事を経たけれど、どこか「有り得る」ような、男女の思考や欲望や性質がリアルに描かれていた。
「結婚に向かない」
ということが、もしもあるというなら。
ここに描かれる男女の誰もが、もしかしたら「向かない」のかもしれない。
そもそも。
いや、こんなことを言ってしまうと元も子もないのだけれど、「結婚するべき」のような刷り込みが、ややこしくしてしまうのでは。結婚している私が言うことではないのだけれど。
やりがいのある仕事と、好きな物に囲まれた部屋と、猫との生活がとても明るく見える。
グングン読み進めている間、夫は出張中で、出張中はいつものことだけれど、ほとんど連絡がない。
たとえば彼が今、都会のホテルでロマンティックな夜を…と想像してみたりして。
どんな女性だろう。
髪は長いのかな。優しいのかな。
いいな。。。
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