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ルーブルの猫 上下 「読書感想文」

松本大洋 さんによる漫画です。

ルーブル美術館の屋根裏に棲みついた猫達。人間から隠れて暮らしていたが、一匹の白猫がその掟を破り、冒険に出かける。
絵画から聞こえる声に導かれて入った世界には...!?

とある雑貨屋さんの本コーナーで、ふと目に止まって。

何、このシュールな絵。

その昔、ハードカバーの漫画の吉田戦車さんの「伝染るんです。」を彷彿とさせるタッチの。思わず、買ってしまった。

ルーブル美術館だし、猫だし。

私は、侮っていました。
どこかそう…雑貨屋さんだったし、漫画だし、みたいな気軽さで手に取ったのは確かで。

でも。

ただ。

手に取って、よかった。のです。

原田マハさんの小説も好きで、ゴッホや印象派の絵画や、美術館も好きで、自身も絵を描くのが好きな私。絵と向き合う姿勢には、少しこだわりがあったり、なかったり。
この漫画は、画家にも美術館にも学芸員にも絵画修復士にも警備員にも、スポットがあたり、そこここに扱いの丁寧さを感じる。
屋根裏の猫たちの、のびやかで強かで少し切ない暮らし。絵のタッチがページをめくると人間化して、猫たちが劇団四季のようにモードチェンジしているのが素晴らしくて。

ふんだんに、惜しみなく、何コマも費やして置かれる間、映像が流れるかのよう。

私も猫と暮らしているけれど、彼らのスタンスは独得で、愛着の加減がときに信じられないほどアッサリしている。(さっきまで話していた蜘蛛を、パリパリと食べてしまうところとか。)

猫と、絵とは似ているのかもしれない。

猫が話せたり、絵の中に入れたり、必ずしも有り得ない、と言いきれないところ。たった一人で対峙していたら、ちょっと通じてしまうもの。心の内を何となく、見透かされているような気がして、つい通じてしまいそうだもの。奥の奥の方で。

夜のルーブルの寒さ、コーヒーの温かさ、おじいさんの涙の大きさ、ゆきんこの白さ。

素敵な物語でした。
漫画だと侮って、すみませんでした。
きっと、何度も読み返すことと思います。



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