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裏読書を読んで

【読書ノート】

『裏読書』

手塚マキ著 Discover


書を持って街に出よう。

出かける時に僕は必ず本を持って行く。

行く場所によって、本のサイズや種類などを考えて持っていく。

デートみたいなものだ。

その本と一緒に出かけるのだ。


「夏目漱石〜こころ」いつまでも教科書に載っていていいのだろうか


夏目漱石の『こころ』は人間の心の奥にある愛と友情の葛藤を描いた名作として知られています。

国語の教科書で読んで、心に残っている人も多いでしょう。

確かに人間関係の複雑さや、生きることの面倒さを描くストーリーは素晴らしいのですが、僕は登場人物の一人である「先生」の自己愛にまみれたマウンティングが気になってしまいました。

Kに負けたくない先生は、何とも信じられない行動に出ます。

お嬢の母親に、「娘さんを下さい」と結婚を申し込み、Kが好きな人を勝手に奪いに行くのです。

もちろん本気でお嬢に恋をしていたのだとしたらいいんです。ただ僕は、先生の中に真の恋愛感情があったとは思えないんです。

こころの時代設定は明治の終わり頃。

明治天皇の崩御によって、時代が大きな転換を迎える。

天皇の葬儀の日の夜、後を追うように陸軍大将伯爵乃木希典と妻の静子が自殺しました。

こうした背景は、物語の中にも入り込んできており、先生は遺書に書き残しています。

乃木大将の自死には多くの議論がありますが、少なくとも「こころ」の中の先生は乃木大将に象徴される自死をブームと捉えて、それに乗っかる自分を「俺はイケてるだろう?」という具合に「私」にマウンティングしたのではないでしょうか?

「こころ」は不朽の名作です。

その上である意味、「こころ」の賞味期限は切れているということを、僕達は自覚しなければならない時に来ています。

歌舞伎や落語みたいに大昔のおとぎ話として、距離感を持って楽しめば良いのではないでしょうか。


「容疑者 X の献身」の女性の描き方

靖子はシングルマザーとして、美里を育てています。

“このかよわき2人の女性”の未来を守るために、自分の手を汚すことすら厭わな石神。

靖子は女性であることによって、石神に自分を「庇護の対象」だと思わせてしまった。

靖子は小説内で「私だけ幸せになれない!」なんて絶対言っちゃ駄目です。

「なんであんな女のために頑張るんだよ!」って読者が地団駄を踏むような女性が登場して初めて、石神の恋や愛は「報われない本当の献身」として成立する気がしています。


そういえば直木賞の選考委員の五木寛之さんは、選考会の中でこの小説を、

『推理小説としてほとんど非の打ち所のない秀作』

と評価しながら、

『男達を惹きつける何かを持った、靖子という女のオーラが伝わってこないのが、私にとっては不満だった』

と指摘していました。


感想&考察

他にも数多くの作品を評価していますがこのように、作品を読んで自分で感じることは、

「本当に自由でいいのだ」

と本書を読んで心から感じた部分です。

本とデートをするくらい本を愛している私は、著者の意見には「冒頭部分だけは」強く共感することができました。


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