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「史」のつくタイトル最強説(新聞書評の研究2019-2021)

はじめに

筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています。

なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。

5紙中4紙に掲載された101タイトルについてはこちらをご覧ください。

単語レベルで考えてみる

今回は、新聞の書評面に紹介された本の特徴をタイトルから分析します。重複も含めて約12500にのぼる書評のタイトルから、名詞だけを抜き出してカウントしました。「正」の字を書かずに済むように、形態素解析という手法とそれを行うプログラムを使っています。

100回以上の頻出ワード

同じジャンルの言葉としては、「史」(475回)と「歴史」(185回)が突出して多くなっています。そこで、「史」を含むタイトルに焦点を当てたいと思います。

6%は”歴史”本

2019年から2021年までの3年間に掲載された全国紙5紙の書評の書籍タイトルに「史」が使われている事例は、「史」と「歴史」のほかに、「秘史」「先史」「史上」「史料」「戦史」「史学」「史観」「史実」「史論」「前史」「哲史」「史記」「史的」「史話」「成史」「哀史」「史論」「尚史」「成史」「正史」「通史」があります。

「日本史」「世界史」などは、「日本」「世界」と「史」という具合に2つの単語として認識しています。単語の仕分けは、形態素解析エンジン(janome)が持つ内部辞書に照らしています。

そこで、「史」「歴史」だけでなく、「秘史」や「通史」などまでを含めた一群の単語の集合を「歴史グループ」と定義し、このグループの単語出現数を調べたところ、計約710回でした。これは全体(約12500)の約6%を占めます。

なお、『江戸川乱歩と横溝正史』、『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談』、『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』など、人名に使われた「史」は集計から差し引いています。また、「歴」を含むタイトルも調べましたが、「歴史」以外には「履歴」「遊歴」しかなく、かつ、極めて少数なので、ここでは「史」のみを対象に考えます。

それでは、タイトルに「史」を含む、3紙以上に紹介された書籍を紹介します。小説も一部含まれますが、便宜的にこれらの本を”歴史”本と呼ぶことにします。

紹介されている書籍やコラムへの感想はコメント欄へぜひ。

4紙に紹介された4冊の”歴史”本

『中国料理の世界史』

『古関裕而の昭和史』

『世にも危険な医療の世界史』

『殴り合いの文化史』

3紙に掲載された30冊の”歴史”本

『動物園・その歴史と冒険』

『日中関係史』

『日本外食全史』

『日本近現代史講義』

『日本蒙昧前史』

★小説です。

『反穀物の人類史』

『文明史から見たトルコ革命』

『暴力と不平等の人類史』

『「ユーザーフレンドリー」全史』

『「共食」の社会史』

『21世紀落語史』

『Humankind 希望の歴史』

『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』

『もののけの日本史』

『鬼子の歌 偏愛音楽的日本近現代史』

『月下の犯罪 一九四五年三月、レヒニッツで起きたユダヤ人虐殺、そして或るハンガリー貴族の秘史』

★小説です。

『検証 平成建築史』

『現代美術史』

『言葉たちに 戦後詩私史』

『私のイラストレーション史』

『書物の破壊の世界史』

『生命の歴史は繰り返すのか?』

『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』

『大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件』

『地形の思想史』

『電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史』

『サラ金の歴史』

「史」がつく書籍がいかに多様かがわかります。だれでも一つくらいは読みたくなる本があるのではないでしょうか。タイトルに困ったら「史」を軸に考えるのが近道なのかとも思います。

次回は、これらの"歴史"本の中から、極めつけにエッジの立った面白タイトル本を紹介したいと思います。

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