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書評キラーの著者6人による39冊(新聞書評の研究2019-2021)

はじめに

筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています。

なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。

全紙に紹介された書籍やタイトルの分析など、過去の連載はこちらをご覧ください。

書評に強い著者

今回は、書評に取り上げられた回数が多い著者を紹介します。各紙の書評に頻出するということは、クオリティーの高い著作を立て続けに上梓したことの反映です。心からリスペクトします。なお、文庫化時に書評が掲載されたものも含みます。10回以上著作が書評に登場した著者の一覧です。(敬称略)

著書が紹介された回数

ブレイディみかこ氏 22回

いま、最も勢いのある書き手といえるのではないでしょうか。

22回という回数は突出しています。タイトルはご本人が考えるのでしょうか。とても素晴らしいですね。以下の7タイトルが紹介されました。

『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』

『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』

『女たちのポリティクス』

『ワイルドサイドをほっつき歩け』

『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』

『女たちのテロル』

原武史氏 17回

アカデミズムより楽しく、ジャーナリズムより勉強になります。以下の7タイトルが紹介されました。

『歴史のダイヤグラム 鉄道で見る日本近現代史』

『一日一考 日本の政治』

『「線」の思考』

『「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄』

『地形の思想史』

『「松本清張」で読む昭和史』

『平成の終焉』

中島京子氏 16回

やわらかい描写が好きです。6タイトルが紹介されました。『夢見る帝国図書館』は5紙に紹介されています。

『やさしい猫』

『ムーンライト・イン』

『ゴースト』

『樽とタタン』

『キッドの運命』

『夢見る帝国図書館』

ちなみにかつての帝国図書館は、いま「国際子ども図書館」となっています。建物には当時の面影があります。

作品中にも登場する上野の「 国立国会図書館国際子ども図書館」(筆者撮影2022/4/22)

大木毅氏 15回

安全保障に関心が高まる中で、良質の知見を新書で解説してくれる点が素晴らしいと思います。6タイトルが紹介されました。

『日独伊三国同盟 「根拠なき確信」と「無責任」の果てに』

『「太平洋の巨鷲」山本五十六 用兵思想からみた真価』

『ドイツ軍攻防史』

『戦車将軍グデーリアン 「電撃戦」を演出した男』

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』

『「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨』

柴崎友香氏 13回

『百年と一日』は、全5紙に紹介された12冊のうちの一つです。4タイトルながら、13回の書評掲載です。すごい。

『ビリジアン』

『待ち遠しい』

『百年と一日』

『千の扉』

橋本治氏 13回

橋本氏は2019年に亡くなられました。享年70歳。前年に『九十八才になった私』を書いておられたのに・・・。残念です。

『橋本治のかけこみ人生相談』

『これで古典がよくわかる』

『父権制の崩壊あるいは指導者はもう来ない』

『精読 学問のすゝめ』

『思いつきで世界は進む』

『黄金夜界』

『マンガ哲学辞典』

『そして、みんなバカになった』

『人工島戦記 あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科』

以上が頻度順5位までの6人の著者です。

次回からは、出版社編です。新聞書評にめっぽう強い出版社を探っていきます。


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