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白梅

白梅

「しらうめ?何それ」

「しらうめさ、ま、じゃ。白梅様。この町を守る御神木じゃ」

煙を吐きながらじいちゃんは言った。

「昔はわしも白梅様と話せたんじゃがのう…」

「今はしらうめとお話できないの?」

「まだ若かった隣のじいさんと、近所の悪ガキを川に流そうとしてサツに世話んなったり、そこらのばあさん騙して金せびろうとしたりしてたら、いつの間にか声すら聞こえんようになっとったな」

かっかっ、と

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蝕

今日も水晶玉を見つめる。

水晶玉に映るのは、私より537歳若い人間の男。
…と、いつもそばにいる人間の女。

楽しく笑う2人。

水晶玉の向こうの彼を見るたび、あの日を思い出す。

森で帽子を無くした私。

隠さなければ、隠さなければ、と必死になって帽子を探していた。

「これ、君の帽子?」

そう声をかけられて見上げると、帽子を持っていたのは人間の若い男。

「あり…がとう」

久々に私の口か

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影

足元に伸びる影を見つめた。

彼女は赤い瞳でこちらを睨んでいた。

彼女もまた泣いていた。

額を触っても、ない。

けれども影には確かにあるのだ。

醜く生えた一本の角が。

Synchkrie

願いを叶える苗木

願いを叶える苗木

『大特価!!』

そう大きく書かれた札は、スーパーの野菜売り場でよく見かける。

しかし、売られているのは玉ねぎやじゃがいもなどではない。

鉢に入った苗木だ。

願いを叶える苗木

「おねえちゃん、その苗木、気に入ったのかい?」

腰の曲がったおばあちゃんは、にんまりと笑ってそう言った。

「あ、いえ、そういうわけでは…」

「今なら税込みで9999円。安くしておくよ」

「えっ」

高っ!この

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