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トップダウン組織の想像力の無さと「はっちゃん」に学ぶべきこと③

②で、沖縄戦の集団自決に関するドキュメンタリーについて書きました。
ここではようやく「はっちゃん」について書いていきます。
①と②が政治と戦争、というテーマだったのですが、この記事では「助け合い」について考えたいと思います。
(この一連のシリーズは、休日立て続けに見た面白いコンテンツの内容と感想を紹介するものです)

ザ・ノンフィクション:おなかも心もいっぱいに
~はっちゃんの幸せ食堂~

群馬県の桐生市で、1人500円で食べ放題の食堂を営む「はっちゃん」こと田村はつえさん(以下、はっちゃん)を追ったドキュメンタリーです。
はっちゃんは、戦前の1935年に群馬県桐生市で生まれ、戦後は学校に行くこともままならないまま働き続け、3人の娘さんを育て上げた後、57歳で日本一周の旅に出ます。
日本一周中の福岡で、見ず知らずの自分を家に泊めてくれた方の優しさに感動し、自分も「人に優しくしたい」という思いで食堂を始めたそうです。
1人500円なので食堂の経営は常に赤字で、不足分ははっちゃんの年金で補填しており、身銭を切って自分の思想を実践しています。
(ドキュメンタリーは、はっちゃんを福岡で泊めてくれた方との再会と、コロナ下での食堂の運営に対するはっちゃんの葛藤が主な内容です)
私ははっちゃんの心意気に、強く心を打たれました。

まず、家に泊めてくれた人に対する恩義をいつまでも忘れない、ということに感動しました。はっちゃんは戦後間も無く奉公に出されたため、読み書きが十分に出来ないそうで、福岡で家に泊めてくれた方の住所を記録しておくことが出来なかったそうです。それでもずっと心の中にその人に会いたいという思いを持っていたはっちゃんは、番組の支援もあったのか、再会を果たすことが出来ました。再会を果たした時のはっちゃんの嬉しそうな表情が、今でも忘れられません。

次に、人に優しさを提供するための事業をしようと思ったことがめっちゃいいと思いました。私たちは幼い頃から、人に親切にすべしと教わりますが、大人になるにつれて他人への関心が薄まっていくように自分自身含め感じます。自分の生活で精一杯で、人のことなんて構ってられません。
しかし、昭和期のような経済成長が難しいことは明らかで、国は財政難にあって社会保障の維持拡大が困難になってきており(政治家が早急に解決すべき課題です)、家族や地域社会との繋がりが希薄になってきた現代は、逆説的ですが他人同士の金銭を介在しない価値交換(助け合い)が大事になってくると思っています。
そんな現代において、身銭を切って美味しい食事を提供する、はっちゃんの一人社会福祉のような姿は、私たちが豊かに生きるためのヒントじゃないかと思いました。
黒木華さんがナレーションで、「情けは人のためならず」とボソッと言っていました。人助けは巡り巡って自分に戻ってくるということです。
私たちもはっちゃんと同じように、社会保障制度のような大きな枠組みを超えて個人がお互いを助け合う強い文化を作っていければ、これから迎える超少子高齢化社会にも豊かな暮らしを維持できるのではないかと思いました。
この「情けは人のためならず(利他主義)」の考え方についてはまた別途書いていこうと思います。

最後に、はっちゃんが言ったことで真理を突いているなと思ったのが、「お腹がいっぱいになっていれば幸せ」ということです。本当に、人間は食べた物で出来ていて、栄養のある美味しいご飯を食べることがめちゃくちゃ重要なのです。その意味でも、はっちゃんの500円食堂は偉大。感染のトレンドがもう少し穏やかになったら、必ず行こうと思ってます。

全体のまとめ(各コンテンツから学んだこと)

トップダウンで決められた施策は、概して想像力が無い。
①で、ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」のおまけインタビューより、GoToキャンペーンに対する鮫島記者のコメントで、現政権が進める政策が現実の世界に即さない形で進められているという意見を紹介しました。
会社勤めの方の中には共感して頂ける方もいるかなと思うのですが、GoToキャンペーンって、ダメなプロジェクトに似ている気がします。やりたいことは分かるけど(もしくはやりたいことも分からない上に)、え、それで解決すると思ってるの?という感じの。そして、概してそういうプロジェクトは経営陣からトップダウンで降ってきます。
②では、戦時中の住民の集団自決の背景に「戦陣訓」という軍人の心得があったと思う、ということを述べましたが、これもトップダウンで伝達されたアイデアです。これはそもそも書いてあることが間違いなので、現代で類似する例は無いと思うのですが・・・そういえば似た事件がありました。
かんぽ生命の不正契約問題は、トップダウンで決定されたノルマを達成するため現場が不正を働いた事件ですが、戦時中の日本軍と似てるところがある気がします。現場では、トップダウンで決まったことが間違っていると思いながらも、「決まったことだから」といって従ってしまうという。
上記の2つの例から私は、大きな組織でトップダウンで決められた施策には、概して想像力が無い、ということを学びました。
勿論経営に置いてトップダウンで大きな方向性を示し、リードすることは大事だと思っています。しかし具体施策を決める場合、巨大な組織になると、現場で起きてることと会議室で理解できることのギャップが大きくなります。そんな中で、会議室が現場のことを決めてしまうと、現場に導入した時に機能しない、ということになってしまいます。
一方で、現在コロナ対策で世田谷区がPCR検査の拡充を独自に行おうとしていることに見られるように、ボトムアップで現場の実態に即して施策を決めることの有効性が試されています。これがうまく行けば、地方分権を進めるべきだという世論が形成されるかもしれませんね。(個人的にはそれが良いのではと思っています。)

私たちは、もっと利他的になるべきかもしれない。
日本は、「課題先進国」だと言われており、世界最大の債務国であり、人口に対する高齢者比率が世界一であり、経済の停滞から抜け出せない状況にあります。そんな中でコロナが来て、悪化の一途を辿るように思えてならない、そんな時代です。
でも、身銭を切って他人に美味しいご飯を振る舞うはっちゃんのように、私たち個人が助け合うことが出来れば、持続可能性のある社会を作ることが出来るかもしれない、そんなことを思いました。

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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