清水しゃもじ

恥ずかしい へんな話をかきます。

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花粉と変態

これは私が大学1年生の頃の話である。まだあまり大学にも慣れておらず、日々緊張しながら大学に通っていた。スギ花粉の蔓延する4月の後半、花粉症の私は鼻をズビズビさせていると、隣に座っていた男性が私に 「これ使います?」 とポケットティッシュをくれた。花粉症患者の必需品である箱ティッシュが底をつき、困っていた私は大いに助かった。もらったポケットティッシュで鼻をかみ、私は一時的な鼻の快調を得た。しかし、鼻水の心配から解放され、思慮の余裕といったものができると、私は再びある別種の不安が

    • 恋愛雑記帳

      「可愛い子を好きになること自体は悪いことではないだろう。しかし問題なのは”可愛い子”の画一化であって、”可愛い子”と聞けば猫も杓子も概ね決まった顔を連想することに私は疑問を感じ…うんたらかんたら…」 などと唱えていたら、気づくと20歳。異性との交際経験はもちろんなし。恋愛に関心が向かぬほど没頭する趣味があるかと言えば、そうでもない。何を間違ったのだろうか。 俺はもっと恋愛について理解と教養を深めてから行動に出ようと考えていた。しかし、それが間違いだったのかもしれない。いつ

      • 照明の揺れる食卓の下で

         カーテンの隙間から昼の白い光が射していた。夫はグラタンを作っていた。私がだらしなく食卓に突っ伏してスマホをいじっていると、オーブンに入ったグラタンが焼けてきたようで、ホワイトソースの焦げた香りが私の鼻を掠めて行った。 「そろそろできたかな」 夫はそう言うと、ミトンを手につけて、オーブンからグラタンを取り出した。  私と夫が一つ屋根の下で暮らすようになってから、およそ1年が経つころだった。今日は特別何かあるわけでもないただの休日。仕事もなく所在ない、とろけるような時間が過

        • 鈍感な男

          気になる子がいた。彼女は私のSNSによく「いいね」や「返信」で反応をくれた。 しかし、ある日を境に、それはなくなった。 彼女に彼氏ができたからだ。 私は嬉しかった。あれが好意であったとわかったから。

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          不条理

          耳と言ったら囁いた 瞳と言ったら逸らされた 鼻先と言ったら近づいた 唇と言ったら赤らめた ちんぽと言ったら笑われた

          にゅるにゅるー

          にゅるにゅるー

          雪だるま

           大学1年生の12月初旬、昼頃に目が覚めると、札幌は雪が積もっていた。窓を開けると、地面は滑らかな白い雪で覆われている。私は春に東京から札幌に引っ越してきたばかりで、東京では雪が降るとしても2月とか、1月だったから、12月初旬の積雪は初めての経験だった。 「ねぇ!めっちゃ雪積もってるよ!すごくない!!」 気づくと、私は彼女に電話をかけ、興奮気味に話していた。  「ね!めっちゃ真っ白!」 電話越しに溌剌(はつらつ)な声が返ってきた。彼女も相当興奮しているようだった。彼女

          新解釈「雨ニモマケズ」

          雨にも負けて 風にも負けて 夏の暑さにも負ける 軟弱な心を持ち 欲深く、よく怒り、 いつも大声で嘆いている 1日に白米3合と 唐揚げと少しの目玉焼きを食べ あらゆることを 自分の感情に入れ、 話を碌に聞かず、 すぐ忘れ 札幌の北区の24条の 無駄に小洒落た家に居て 東に元気な子供あれば、行って文句を言い 西に快活な母あれば、行ってもっと働かせ 南に死にそうな人あれば、行ってさっさと死ねと言い 北に喧嘩や訴訟があれば、行って後ろから囃し立て 深い夜には涙を流し 陽気の夏で

          新解釈「雨ニモマケズ」

          リンゴジュース

           そういえば、最近、リンゴジュースを飲んでいないなと気づいた。最後に飲んだのはいつ以来であろうか。記憶が確かであれば、それはちょうど1年前、浪人時代の時である。  あの時は、本当に変わり映えのしない日々を送っていた。夜が明け、朝になると、予備校へ向かい勉強。再び暗くなったかと思えば、帰宅し、就寝。発狂しなかったのは奇跡と言ってよい。息をつく暇といえば、昼食と夕食くらいであった。我々に残された決して長くはない安息の時間。この時間くらいは、非日常を体験したい。そう思うのは疲弊した

          リンゴジュース

          紛失

          今まで一緒にいたのに、突然消えてしまうもの。退屈で、虚しいバイト先の帰り道も2人でなら、色とりどりの看板で彩られた夜の新宿だった。あいつと一緒に、スキップをして、一回転して、それはまるで映画の主人公のように踊るのだ。あぁ、なんで失ってしまったんだろう。俺の何がいけなかったのだ。もう一度会いたい、今すぐその角から飛び出してきてくれないか、俺のワイヤレスイヤホン。

          マンゴープリンと海-前編-

          南国のある国に住む叔父から、手紙が届いた。 精霊が生まれました。可愛らしい男の子です。中学生以来一度も会えていない、みっちゃんの顔もみたいし、今度の夏休み、ぜひ家族で遊びにきてください。湿度の高い日本の夏とは違って、こちらは大変過ごしやすいです。照りつける太陽、青い海、最高の夏になりますよ。待ってます。  みっちゃんとは、私のことである。精霊?母は、手紙を一読すると、弟(私から見た叔父)が現地で怪しい新興宗教にハマってしまったのではないかと心配していた。まぁ、でも多分、叔

          マンゴープリンと海-前編-

          僕らの秘密基地

          小学5年生の夏休み。仲良しグループのリーダー佐々木翔は友達を集めてこう言った。 「ねぇ、みんなで秘密基地つくらない?」 佐々木ら仲良しグループは、5人グループで、いつも集まって、工作やおにごっこ、悪戯、悪巧み、など小学生のする遊びを片っ端から堪能していた。佐々木はみんなを取りまとめ、計画の発案、組織の最終責任者として、いつも、5人の前を歩いていた。彼は、小学5年生にしては情が厚く、同年代と比べても利発な方であることは間違いなかった。 「あとさ、俺たちのマークつくらない?そして

          僕らの秘密基地

          への字

           深夜のコンビニ前、彼女は俺の鼻に勢いよく指を突っ込んだ。痛くないはずがない。彼女はニヤニヤと笑っている。俺は鼻血を垂らしながら、困惑したそぶりを見せつつ、それに満足していた。彼女は決してサディストというわけではない、俺はそれが彼女の照れ隠しであることを看破している。彼女はいつも、俺に悪戯を仕掛ける時、決まって口をへの字にする。そして、その悪戯に俺が困惑すると、への字は解け、幸せそうな顔で笑う。 「なにすんだよ。鼻血出ちゃったじゃん」 「ティッシュ欲しい?」 「もってん

          落単

          俺は終わった。明日は期末試験で、俺の取った講義はそこで全ての成績が決まる。ならば勉強しなければならない。しかし、俺は今noteをかいている。これはどういうことか。テストから逃げているのか。現実から目を背けているのか。いや、わからない。2,30文字に一回、入力するたびにiPhoneの左上の数字が一つ増える。また一つ。さらに一つ。気づくともう24時。あぁ、なんてことだ。我々はいつだってギリギリになってから、本質に気づく。  そうか、我々は極度の近視を患っているのだ。ある程度、課さ

          便所妄想記

           トイレという空間は実に良い。特に自宅のトイレとあらばこれほど落ち着く空間はないだろう。俺はふと、トイレの何が落ち着きを生むのか考えた。トイレという空間は目的があるのだ。排泄という生理現象。現代人というのは実に、難解で、逃げ出したくなるような課題の山積と戦っている。もはや兵士の域である。しかしながら人として動くかぎり、排泄というのは免れぬ、第一に優先すべき、義務であって、人々はそれを逆手に取っては、 「やれやれ、うんちだから仕方がない、一旦仕事は置いておこう」 などと思う。こ

          眩暈

          猫のクロは、目を覚ますと自分が光になっているのに気づいた。そこは、黒のようでいて白く、まるでゴッホの絵画の中にいるような、不思議な場所であったが、どこか自然と懐かしかった。ここは夢の中である。心像は浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し、朧げな街がそこにはあった。古めかしいアパートに、クロの部屋が浮かぶ。六畳一間で、四方は本に囲まれ、冷蔵庫と、その上にあるバカみたいにサビついた電子レンジが懐かしかった。今はもう誰もいない。机の黒電話がクロに何か話しかけている。言葉の意味はわ