マンゴープリンと海-前編-

南国のある国に住む叔父から、手紙が届いた。

精霊が生まれました。可愛らしい男の子です。中学生以来一度も会えていない、みっちゃんの顔もみたいし、今度の夏休み、ぜひ家族で遊びにきてください。湿度の高い日本の夏とは違って、こちらは大変過ごしやすいです。照りつける太陽、青い海、最高の夏になりますよ。待ってます。

 みっちゃんとは、私のことである。精霊?母は、手紙を一読すると、弟(私から見た叔父)が現地で怪しい新興宗教にハマってしまったのではないかと心配していた。まぁ、でも多分、叔父に子供が生まれたということなのだろう。おめでたいことだ。しかし、叔父さんは今まで独身と聞いていた。現地でいい人に巡り会えたのだろうか。
 叔父さんとは手紙に書いてある通り、中学生以来、会っていなかった(今、私は大学1年生だから、大体4年くらい会ってないことになります)。おじさんは独身で、子供がいなかったこともあり、たいそう私を可愛がってくれていた。しかし、仕事の関係で、叔父さんが南国に移住してからは、しばらくあうことがなくなった。
 両親に「夏休み叔父さんに会いに行こうよ」と誘うと、今年の夏休みは両親とも仕事の都合であまり休めないらしく、どうしても行きたいなら、私一人で、行かなければならなかった。私は海外はおろか、日本の旅行でも、家族とか友達とかと行くばかりで、一人で飛行機に乗ったことがなかった。正直不安だった。しかし、まぁこの年で一人で飛行機も乗れないというのは、どうなのか。いや、でも海外だぞ、私にとっては未開の地だ。海外に一人で行ったことある大学生なんて、片手で数えるほどしか知らないし、スリとかひったくりとかあったら怖い。うーん。でも、南国で夏休み。めっちゃ行きたい。私が悶々と悩んでいると、母は、そんなに行きたいならと、向こうの空港に着いたら、叔父さんに迎えにきてもらうように手配してくれた。母、マジ感謝。
 夏休みになった。電車で、空港に着くと、国際線のターミナルに入った。いろんな肌の色の人でごった返していた。緊張しながらも、保安検査を受け、出国検査でパスポートを見せ、何事もなく飛行機に乗る。飛行機が離陸して、少し時間が経つと、いつのまにか緊張は冷めていた。テキトーな映画を見ながら、
「なんだ、海外旅行、私にも結構簡単にできるじゃないか。みんな、すまんな。私はもう一人で海外に行けるのだよ。友達と海外に行くことがあったら、国際人として私が君たちをエスコートして差し上げよう。ふふふ。」
などと、溢れんばかりの自信に満ちていた。まぁ、着陸して、入国検査うけると、英語が全然喋れず、結構長い時間、足止めくらっていたんですけど。叔父さんとの待ち合わせ場所に着くと、叔父さんは、私が小中学生の頃となんら変わった様子はなかった。しかし、強いて言えば、色が黒くなっていた。叔父さんに大学生活など、近況をテキトーに説明しながら、駐車場に向かい、車で叔父さんの家までいくと、白い外壁に、おしゃれなフェンスのバルコニー、熱帯といった感じの観葉植物。映画に出てくる南国の家という感じであった。家は海に面し、夕焼けが青い海をオレンジ色に変えていた。叔父さんが、私に言った。

「着いたよ」

あぁ!ついに私は南国に来たのだ!!

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