スウェーデンの社会システム・移民の場合その1

今回のスウェーデンの社会システムは、移民の場合です。私自身が移民なわけですから、私の体験談をお話しします。

スウェーデンは人口が少ないので(2002年時点で900万人弱、2016年時点で988万人)は、移民の受け入れ体制が整っています。特に戦火を逃れてきた難民の受け入れには積極的です。私がスウェーデンに来た1998年にはコソボ紛争があったため、ユーゴスラビア移民が多く、最近ではアフガニスタン移民がとても増えました。移民の顔を見ると、その時代が分かる気がします。しかし、移民を受け入れることによる問題も増えているので、受け入れがやや厳しくなってきているようです。(ちなみに、2016年現在はシリア難民の受け入れが大量すぎて、さまざまな問題が起きています)

さて、移民にとっていちばんの壁となるのが言葉です。スウェーデン側では、移民の人々に1日でも早く職について働いてもらいたいと考えているので(つまり納税者になってほしい)、そのための支援は惜しみません。まずスウェーデン語コースですが、全ての移民が平等に受けることができます。Swedish For Immigrants(SFI)というスウェーデン語コースは居住地区によって多少違いはありますが、レベル別に分かれていて、定期的に試験も行われます。

生徒にとっては無料のコースでも、講師にはきちんと給料が支払われているので、正式な言語の講師が教えています。授業は初心者のコースから全てスウェーデン語のみで行われます。初めは戸惑いますが、私のクラスは経験豊富なすばらしい先生だったので、言葉がわからなくても意味を想像できるように教えてくれて、何とかついていくことができました。まず驚いたのは、先生が2、3日で生徒20名ほどの名前と顔を覚えてしまったことです。私などは、ユーゴスラビアの生徒たちの長ったらしい名前(セットランナーとかスラルビッツァなど)を覚えるのに半年かかったというのに。

スウェーデン語は英語に近いこともあり、アルファベットを使うヨーロッパ系の生徒はあっという間に上達して行きました。私のようなアジア系はそろって落ちこぼれです。アジア系は言語体系も発音も全く異なるため、学校側はアジア系生徒のための発音のコースまで開いてくれました。そうこうしてこのSFIを卒業すると、次は大学に行くスウェーデン語レベルまで勉強したい人のコースの他に、高校レベルでの他の授業もあります。自国の事情で教育を受けられなかった人々のための高校卒業資格を取れるコースもあります。ありがたいのは、スウェーデンは生涯教育という考えがあるので、いくつになっても勉強ができるという環境です。ちなみに私はウェブデザインのコースに通いました。

授業料が無料の上に、学生手当てを受けることもできます。難民はアパートと生活手当てまで与えられます。スウェーデンは福祉の国ということで有名ですが、ちょっと行き過ぎではと思うこともあります。働けるのに働かず、いろいろ事情を作っては手当てを受け取ってそれで暮らしているという移民が多いのも事実です。この手当ては例の高~い税金から支払われているわけですから、スウェーデン側としては1日も早く働いて税金を支払ってもらいたいのですが、なかなかそうそう真面目な移民ばかりではないようです。

追記:スウェーデン語学校につきましては、現在はだいぶ状況が異なっていると思われますので、新しい情報はウェブサイトなどで確認して下さい。

2002.4.30執筆、2016年リライト

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