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【短編小説】桜

 発育不良の夜がバッカルコーンを開いて眠りを捕食する。
 金網を潜り抜けて俺たちの柔らかい夢が千切られていく。福笑いのようにバラバラな街。または達磨落としで打ち抜かれた生活。置かれた場所で咲けない花が並んだ花屋の店先。公園のブランコを揺らす他人事の風。
 インターネットで煌めく世界が俺たちを拒む。俺たちは目を開けたままインターネットを見る。マンデルブロー集合を宇宙だと言う年代はとうに過ぎ去った。リタリンで笑えるトウが立った新人。デビュー前。夜明け。一番美しい瞬間。

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