#6 支援学校の子ども達~障害のある子どもをどう捉えるか~

#4 ,5でお話しさせて頂いた通り私は新卒で保育士として働き、数年で辞めてしまった。(辞めた理由は#4,5を読んで頂けると幸いです。)

保育士を辞める話し合いをしながら、来年度からどうするかも考えだしていた。
情けない話、上司との人間関係に躓き、仕事量の多さ、子ども達の命を預かる責任の重さに耐えられなくなってしまった。
なので「違うこんな仕事をしたい!」というより「今の仕事を辞めたい…」というネガティブな感情での転職だった。

どんな仕事が良いか決める際、大学時代の複数の友人が特別支援学校で働いており、よく話を聞いていた。
支援学校の先生は高校の先生と同じくらいのお給料をもらえるのでお給料も良い、17時に自分の仕事が終わっていれば帰ることができる、1クラスの子どもの人数も少なく、手厚い教育ができるなどの良い話ばかりに惹かれた私はすぐに住んでいる都道府県の教育委員会から講師募集の資料を取り寄せ応募した。
支援学校も人手不足なようですぐに採用が決まり、私に来て欲しいという複数の支援学校から電話を頂き、1番最初に電話を頂いた学校でお世話になることとなった。

初めての支援学校での教員生活。
まず私が赴任した学校は肢体不自由の子どもが通う支援学校だった。
面接の際に肢体不自由校です、という説明は聞いていたが無知な私は松葉杖程度なのかなと思っていた。
そんな甘い考えで新学期を迎え、始めて子ども達と会うとみんな車椅子に乗っており、知的障害があり会話ができない、数名は車椅子だけでなく呼吸器をつけながら登校していた。

肢体不自由の子どもの中には、気管切開し、そこにカニューレというものをつけており定期的な痰の吸引や、胃ろうや腸ろうなどからペースト食を注入する経管栄養などの医療的ケアが必要な子どもも多くいた。
教育というより、介護に近いような時間も多く、トイレの介助や歩行機の訓練などもたくさんしていた。

また、保護者との関りもとても難しかった。
今思えば当たり前だが、我が子に肢体不自由の障害があれば、他人に世話を任せるのは心配事の方が多い。
熱心な保護者は送り迎えにも同行し、私が新しい教員だと知ると、前どんな仕事をしていたが、どんな学校に行っていたかなど詳しく聞かれ、おむつ替えや食事の介助を横でずっと見ておられた。

もっとこうして欲しい、それじゃ痛いはずだなど、たくさん横で言われ続けた私は、帰り道でもその保護者の幻聴が聞こえるようになった。
ある時、それは朝起きて笑ってしまったのだが、その保護者が私の家の中に前で入ってきて私の一挙手一投足を横でずっと見ているという夢を見たこともあった。

保護者だけでなく子どもと関わるのもとても難しかった。
会話もできないし、中には発声することも体を動かすこともできない子どももおり、何を思っているか分からずどう関わって良いかわからなかった。

しかし関わっていくうちに嬉しい時とそうでない時の声の違いが分かるようになってきて、発声や体の動きがない子どもであっても視線のわずかな違いで感情を何となくわかるようになってきた。
最初は構えてしまっていたが、私も徐々に自然と関わることができるようになってきた。

医療的ケアも呼吸の音を聞き分けて痰の吸引を行えるようになった。

痰が上手く吸えると、自分のタイミングが間違っていなかったこと、なにより担当した子どもがたくさん吸えた後、にっこり笑ってくれる。
このことが子どもの役に立てたと実感できる嬉しい瞬間だった。

子どもと信頼関係ができると自然と保護者とも信頼関係ができてきた。
1番の要因は子どもが私に対して笑顔を見せるようになったからだと思う。

また、教員をしていて別で驚いたのは、肢体の支援学校で働く教員は担当する子どもに応じた生活に必要な道具を上手に手作りすることである。

手先を上手く動かせない場合、樹脂の粘土で持ち手を太くした食器を用意したり、食器の食べ物をすくいやすくするように傾斜の付いた皿置きを作ったりしており、私も教えてもらいながら見様見真似で様々な道具を作っては試し、使いにくそうなら改良してを繰り返していた。

作った道具、例えばスプーンと皿置きを使って子どもが少しでも食べやすそうに給食を食べると、それもとても嬉しかった。
自分の頑張りが報われた瞬間であり、自分の存在意義がそこで証明できた。

肢体の支援学校への転職動機は良い物とは言えなかったが、今思うと全く知らない分野のことを勉強できとても良い時間だった。
肢体不自由の方の見方も変わった。

まだまだ世の中には障害者に対する差別や偏見が存在している。

甘い考えで偽善的な考えかもしれないが、少しでも障害者に対する差別や偏見が減りお互いにとって住みやすい世の中となって欲しい。

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