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書記の読書記録まとめ

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今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
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2022年1月の記事一覧

書記の読書記録#382『電子移動の化学―電気化学入門』

渡辺 正,中林 誠一郎『電子移動の化学―電気化学入門』のレビュー レビュー物理化学での一分野である電気化学について,詳細がまとめられている教科書。アトキンスなどの副読本に使える。 もくじ1. むかし習った電気分解を忘れよう 2. 平衡論  2.1 エネルギーと化学平衡   2.1.1 すべてはエネルギーが動かす   2.1.2 エネルギーと単位   2.1.3 物質(系)のもつエネルギー   2.1.4 化学ポテンシャルと平衡   2.1.5 荷電粒子のエネルギー  2.

書記の読書記録#381『短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)』

『短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)』のレビュー 金達寿「朴達の裁判」は『戦後文学の現在形』収録作。 レビュー世界各地から集めた粒揃いの短編。知らない作家を知るいい機会になり,また近年の世界情勢を推し量ることもできる。 ピックアップ: コルタサル 「南部高速道路」 初っ端はアルゼンチンの文学。日常世界に隣接した気だるさの感覚がよく読み取れる。長いようで短い,時間感覚を麻痺させる,短編ならではの良さがある。 ディック 「小さな黒い箱」

書記の読書記録#380『電池がわかる 電気化学入門』

渡辺 正,片山 靖『電池がわかる 電気化学入門』のレビュー レビュー電気化学で何の知識が必要かを確認するための本。 もくじ1章  電池の歴史 2章  化学変化とエネルギー 3章  電極電位 4章  電解質 5章  電気二重層 6章  電極反応と電流 7章  実用電池の概要 8章  一次電池 9章  二次電池 10章  燃料電池 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#379『効果検証入門〜正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎』

安井 翔太『効果検証入門〜正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎』のレビュー サンプルコード https://github.com/ghmagazine/cibook/ レビュー評判の良さも納得の本で,原理と実装のバランスが読者層をうまく把握していると思う。実装しようとする人はもちろん,因果推論をとりあえず知っておきたい人にもおすすめできる。 3章までの理論面については,グラフィカルモデルやバックドア基準などに詳しいPearl本により補完するのがいいだろう。

書記の読書記録#378『入門 統計学(第2版): 検定から多変量解析・実験計画法・ベイズ統計学まで』

栗原伸一『入門 統計学(第2版): 検定から多変量解析・実験計画法・ベイズ統計学まで』のレビュー レビュー統計検定2級の範囲に関してはよく網羅されていると思う。一方で他の入門書に比較すると確率分布の記述が薄く,準1級以上への接続は悪い。 もくじ第1章 データの整理 ―記述統計学― 第2章 確率分布 第3章 推定と誤差―推測統計学― 第4章 信頼区間の推定 第5章 χ2 分布とF 分布 第6章 仮説検定と検出力 第7章 2 群の平均の差の検定 第8章 分散分析 第9章 多重

書記の読書記録#377『世界史の中のアラビアンナイト』

西尾 哲夫『世界史の中のアラビアンナイト』のレビュー レビュー西洋における『アラビアンナイト』の成立史が中心で,各写本や各版ごとの特徴が書かれている。著者はガラン版の翻訳者。 もくじ序章 エブリマンズ・アラビアンナイト 第1章 アラジン、アリババ、シンドバード 第2章 アラビアンナイト成立史 第3章 光は東方より―ガラン版 第4章 東方の夢―失われた写本を求めて 第5章 インドへの道―征せよ、ブリタニア 第6章 エジプト系伝承の集大成―ブーラーク版 第7章 オリエンタリズ

書記の読書記録#376『進化を続ける構造生物学: 新たなタンパク質機能の解明と創出』

松島 正明,伊中 浩治(編集)『進化を続ける構造生物学: 新たなタンパク質機能の解明と創出』のレビュー レビュー現に結晶構造解析や分子シミュレーションなどに携わっている研究者によるまとめ。 もくじノーベル賞受賞者からのメッセージ1 Robert Huber ノーベル賞受賞者からのメッセージ2 Johann Deisenhofer 1 結晶構造解析の基礎  2 偶然に頼らないタンパク質結晶化―迷宮からの脱出を目指して― 3 タンパク質の高度精製と高分解能結晶の作成 4 長波

書記の読書記録#375『ネットワーク科学: ひと・もの・ことの関係性をデータから解き明かす新しいアプローチ』

アルバート・ラズロ バラバシ『ネットワーク科学: ひと・もの・ことの関係性をデータから解き明かす新しいアプローチ』のレビュー レビューネットワーク科学の教科書として,本書を選んでおけば間違い無いだろう。もちろん数学の知識は必要だが(確率分布,グラフ理論など),無くても十分楽しめるような仕立てとなっている。 もくじ第0章 ネットワーク科学の誕生 序論 最初のネットワーク論文(1994) 失敗その1:第2論文(1995) 失敗その2:WWWのネットワーク図(1996) 再起動

書記の読書記録#374『百年の孤独』

ガブリエル ガルシア=マルケス(訳:鼓 直)『百年の孤独』のレビュー レビュー賛成寄りの感想,考察などは他の方に任せることにする。 他作品に比べれば読みやすい作品で,反復構造さえ掴めればそう難しくはない。 直近に読んだ『千夜一夜物語』があまりにゴテゴテな絢爛だったのもあるが,本作のマジック要素にそこまで驚きはない。いかにも近視眼的な描写が目につくだけだった。 読書家を名乗りたいようなら必読のようなので,(Bokklubben World Libraryにも選ばれている

書記の読書記録#373『ジェネラリストのための“メンタル漢方"入門(第2版)』

宮内 倫也『ジェネラリストのための“メンタル漢方"入門【第2版】』のレビュー レビュー漢方の非専門家向けにしては分量が多く,辞書として使うことになると思う。「漢方理論→代表方剤(生薬については簡略)→疾患への適用」の順に進む。精神科に限らず,ジェネラリスト全般に使い勝手の良いテキストだと思う。 もくじ第0章 まずは知ることから 本書の構成 漢方を知ろう 漢方の勉強法 本書の構成 "メンタル漢方" の立ち位置 第1章 処方をしてみよう 漢方薬の決まり文句 漢方を知ろう 1

書記の読書記録#372『ローゼンバウム 統計的因果推論入門: 観察研究とランダム化実験』

Paul R. Rosenbaum(訳:阿部 貴行,岩崎 学)『ローゼンバウム 統計的因果推論入門: 観察研究とランダム化実験』のレビュー レビューとにかく具体例が多い。ランダム比較化試験に始まり観察研究へと至るように,少しずつバイアスを導入する進行をとる。 もくじ第I部 ランダム化実験 第1章 ランダム化臨床試験 1.1 敗血症性ショックに対する緊急治療 1.2 因果関係に関する問題 1.3 ランダム化は共変量のバランスをとる 1.4 積極的治療はより有効か 第2章

書記の読書記録#371『在日文学全集6 金鶴泳』

磯貝 治良,黒古 一夫(編集)『<在日>文学全集6 金鶴泳』のレビュー 『凍える口』は『戦後文学の現在形』収録作。 レビュー金 鶴泳は,日本の小説家。本名は金 廣正。吃音者・在日朝鮮人二世という苦悩の中、独自の世界を描いた。1966年、「凍える口」で文藝賞受賞。以後作家活動に入る。「冬の光」「鑿」「夏の亀裂」「石の道」の四作が芥川龍之介賞候補作となる。 もくじ凍える口 遊離層 あるこーるらんぷ 錯迷 石の道 弾性限界 鑿 土の悲しみ 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#370『千夜一夜物語』(バートン版,全11巻)

『千夜一夜物語』(バートン版,全11巻)のレビュー レビュー『千夜一夜物語』(ألف ليلة وليلة‎)は,イスラム世界における説話集。ペルシャの王に妻が毎夜物語を語る形式を採る。枠物語の手法で描かれた代表的な物語の一つとしても知られる。 1885年から1888年にかけてリチャード・バートンにより英語に翻訳され出版された。本編10巻と補遺6巻から成る。日本語版は大場正史訳。 長いわりには似たような話が続くので,少しずつ読み進めた。 以下に全巻の目次を載せておく。

書記の読書記録#369『古典派音楽の様式 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン』

チャールズ・ローゼン(訳:大久保賢,中村真)『古典派音楽の様式 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン』のレビュー レビュー古典派音楽,特にハイドン・モーツァルト,ベートーヴェンを研究する上ではとても参考になる本。 もくじ第Ⅰ部 序論  第1章 18世紀後半の音楽言語 第2章 形式の理論 第3章 古典派様式の起源 第Ⅱ部 古典派様式 第1章 音楽言語の一貫性 第2章 音楽の組み立てと装飾 第Ⅲ部 ハイドン、1770年からモーツァルトの死まで 第1章 弦楽四重奏曲 第2