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できないという思い込みの作り方と抜け出し方 「学習性無力感」

学習性無力感

学習性無力感(Learned helplessness)とは

長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象

です。なぜ罰されるのか分からない刺激を与えられる環境によって、「何をやっても無駄だ」という認知が形成されると、「学習された」無力感が生じます。1967年にアメリカの心理学者、マーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman)らのオペラント条件づけによる動物実験での観察に基づいて提唱されました。

当初、学習性無力感は、嫌悪刺激(罰)が明らかに提示されているにもかかわらず、その刺激から逃れようとしたり、避けようとしたりする無力感を受け入れることで生じると考えられていました。

しかし過去数十年の間に、神経科学によって学習性無力感についての洞察が得られ、当初の理論は、実際には逆であることが明らかになりました。被験者が、長時間の嫌悪刺激(罰)に直面すると、それが学習されなくなるというものです。

人間の場合、学習性無力感は自己効力感という概念と関連しています。自己効力感とは、目標を達成するための生来の能力に対する個人の信念です。学習性無力感理論とは、臨床的なうつ病や関連する精神疾患は、状況の結果をコントロールできないという現実または認識に起因するという見解です。


オペラント条件づけ

オペラント条件づけ(operant conditioning)とは

報酬や罰に適応して、自発的にある行動を行うように、学習すること

です。行動主義心理学の基本的な理論。1898年のエドワード・ソーンダイク(Edward L. Thorndike)による実験が始まり。1938年に、バラス・スキナー(Burrhus Frederic Skinner)が、マウスやハトを用いて体系的な研究を開始しまいた。スキナー箱とは、マウスが餌が出るレバーを押すように自発的に行動(operate)するようになることを観察する代表的な実験装置です。道具的条件づけスキナー型条件づけオペラント学習とも呼ばれています。イワン・パブロフによる古典的条件づけは、オペラント条件づけに対する条件づけであり、遺伝的に組み込まれた反応と、無関係な反応とを結びつけるものです。


学習性無力感の症状

長期に渡り、人が監禁されたり、暴力を振るわれたり、自分の尊厳や価値がふみにじられる(主として、いじめやモラルハラスメントに代表される人格否定)場面に置かれた場合、次のような徴候が現れるという。

(1)被験者は、その圧倒的に不愉快なストレスが加えられる状況から、自ら積極的に抜け出そうとする努力をしなくなる。

(2)すこし努力をすれば、その状況から抜け出せる可能性があっても、「抜け出せるかも」と考えられなくなる。

(3)情緒的に混乱をきたす。


学習性無力感の伝染

ある人が、他の第三者がコントロール不可能な状況に陥っていることを観察することによって、無力感を学習します。アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が提唱。動物でなく人間においては、集団的無力感も起こる。小さなグループが解決不可能な問題に対して無力となった場合に、他のグループさえも解決可能な問題の解決に失敗する。

コントロールできないという認識が人を苦しめる

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できごとや自分のおかれた状況に対して何もできない(コントロールできない)という認識は、人に精神的または身体的な悪影響を及ぼします。自己効力感が減少することで、人は自己イメージを低下させ、行動が不活性し、不健康な行動パターンを継続するようになります。

対策・応用

(1)運動

ベンジャミン・N・グリーンウッド(Benjamin N. Greenwood )とモニカ・フレシュナー(Monika Fleshner) は、論文の中で、運動が、不安や抑うつなどのストレス関連障害を予防する可能性について論じています。運動量が重要ではなく、単に運動をすることが重要であることを論文は示唆しています。理由は不明。


(2)メタ防御

メタというのは、自分を上から見る視点を意味したもの。学習性無力感という知識があることで、自分の無力感や自己効力感の低下を認識できるようになる可能性が生まれます。その結果、対策を講じるために動機が生まれます。知識が、主観に溺れることを避けさせ、結果、学習性無力感から抜け出す動機を形成することを、わたしは「メタ防御」と呼んでいます。そしてこのメタ防御をさらに活性化させる方法があります。それが

(3)観察主義

これもわたしの造語ですが、他人も自分も状況も観察する姿勢を意味したことばです。わたしを迷わせ、悩ませるもののひとつが自尊心です。自尊心とは、社会(ヒエラルキー)における自分のポジションを向上させようとする動機の一形態です。これがゆえに私たち人間は、出世しようと努力するのですが、つねに他者と自分を比較することにもなり、それは幸福度を低下させます。「観察する」という姿勢をとると、自分とはなにか?という疑問から、他者及び自分の行動への好奇心へ転換されます。


関連した認知バイアスなど

•自己効力感(self-efficacy)
自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること


認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


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参照

※1:Learned helplessness

※2:学習性無力感

※3:Overlapping neurobiology of learned helplessness and conditioned defeat: Implications for PTSD and mood disorders

※4:

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