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鈴懸ねいろ
2023年6月16日 23:11
銀河売りが屋台を引いて僕らの街にやってくるのは、夏の夜と決まっていた。夕立が引いた後のぬかるみが固まって少しでこぼこする道を、屋台はぎしぎしと進んでくる。屋台の庇に吊るされた銀河入りの袋が揺れるたびに、中の星々がこすれ合ってほろろほろろと音を立てる。母さんは、ああもうそんな季節なんだねえ、と呟きながら、団扇で風を作っては耳を澄ましていた。「草市。銀河をひと袋買ってきておくれ
2023年6月25日 16:04
「海砂糖をどうぞ」年に一度必ず訪れる海辺に、小さなカフェがオープンしていた。珈琲とともに店員が差し出したのは、青く透明な砂糖の盛り合わせだった。「お好きなものをひとつ選んでくださいね」海砂糖は小さな石のような形をしていて、淡い水色からコバルトブルーまでたくさんの青色があった。僕は紫色に近い青の海砂糖を選び、手にとって明るい窓の方へ翳してみた。深海から見上げた空みたいに、青い