『空飛ぶストレート』
今日、僕は気になるあの子に告白する。この真っ直ぐな気持ちをしっかりと伝えるんだ。
場所は学校の屋上。呼び出されたミキちゃんは一点の曇りもない眼差しで僕を見ている。
「あの、君のことがーーーー」
咄嗟に僕は言葉を止めた。どういうわけだか、ミキちゃんがバットを手に構えているのである。
「さあ来なさい」
ミキちゃんが僕に向かって、指をくいくいとした。それを見てなぜだかはわからないが、僕は覚悟を決めた。
「君のことがーーーー」
刹那、僕の口から「好」、「き」、「だ」、「ー」、という形の固形物が飛び出し、ミキちゃんのもとへ飛んでいった。
すると・・・。
「カキーン」という音が辺りに響き渡った。入道雲が浮かんだ青空に僕の「言葉」が打ち上げられていく。
それを見て、思わず膝から崩れ落ちる僕にミキちゃんは言った。
「変化球も覚えなくちゃね」
どこからか甲子園のサイレンが鳴ったような気がした。
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