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#32:あるプロジェクトの軌跡〜ベンダー選定(2)

前回の続き。

プロジェクトのスコープは、これまで20年以上使ってきたメインフレームにある経理システムをパッケージでリプレースするものだった。リプレースの目的は色々あるが、業界全体で会計基準への柔軟な適用などを控えており、これ以上ホストコンピュータでスパゲッティなロジックを重ねるのは得策ではないとの結論だった。

そのスコープを元にRFPが作成されるのだが、既に2年前から出来上がっていた。事情があり一度検討が延期されていたため、マスタスケジュールのみを修正すればそのまま使えるものだった。RFPの要旨は、利用するパッケージと導入計画に関する提案をお願いするものだった。

当時、課長とリーダーである私と、サブリーダーのB君という体制でこの工程を進めていた。RFPがほぼ完成していたこと、B君が優秀だったこともあり、この段階ではほぼ進め方は任せつつ、ベンダー各社との交渉折衝が主な仕事。3社からRFPに対する提案を受けて、ビジネス部門と共同で提案評価と選定を進めた。

これまでの経験では、提案が3つあってもほぼ最初の回答受領時に「あ、今回はこの会社さんとやるんだな」と分かることが大半だった。それは価格よりも、経験や体制に基づく遂行能力(そもそも対応できるか)や、本気で提案を取りに来てるか(中身の詰まり具合)などから、各社間で差が歴戦と現れることが多く、自ずと候補が絞られることが多かった。

それが今回は提案を受けた時、正直、どの会社とやれば良いのか、直感的に分からなかった。3社ともしっかりと中身の詰まった提案内容だったからだ。そこで、ふと、これほどしっかり余裕を持ってベンダー選定に進んだことがない点に気付いた。予めRFPは完成しており、選定期間も半年程度あり、情報提供もQA期間も確保されている。つまり各社ともにしっかり提案できる情報と時間を提供できていた。

選定はかつてないほど難航した。予め用意した評価表を埋めてもあまり有為な差にならず、各社に追加ヒアリングすることになった。そしてようやく2社まで絞られて、最後は一騎討ちとなった。提案内容はほぼ互角、これまでの導入実績も甲乙つけがたい。最後は体制面で見るしかない。あと今だから言えるが、落ちた会社は先方の営業、担当役員ともに、ビジネス部門に対する印象が良くなかった。まあひと言で言うと、偉そうだったと。分からないではない。

まずはきっちり進められるプランになっているかが重要だが、それと同時に、最後まで信頼して進められる相手かということも大切。特に、大規模なプロジェクトでは必ずあらゆる課題が起こるため、それを一緒に乗り越えられるかを重視した。しっかり選定に時間があったので、このプロジェクトでは良いパートナーを見つけることができた。

(3に続く)

◆記事一覧〜あるプロジェクトの軌跡〜◆
(1)検討開始
https://note.com/susumuy/n/n1931de0dc542
(2)ベンダー選定
https://note.com/susumuy/n/n93de96f156bf
(3)プロジェクト計画
https://note.com/susumuy/n/n242ed6a8efad
(4)クラウド検討
https://note.com/susumuy/n/n68326494925e
(5)クラウド選定基準
https://note.com/susumuy/n/ne6eb0d7ec88c
(6)要件定義完了
https://note.com/susumuy/n/n17d0ecf889ae

 後半に続く
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