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アパレル業界のサステナビリティ経営優良企業

本記事では、AIとビッグデータの活用で企業のESG/SDGs貢献度を可視化する国内最大級非財務データバンクであるサステナブル・ラボが、企業のサステナビリティ貢献度を独自に分析・数値化したランキングを用いて、企業のサステナビリティの取り組みを紹介します。3月13日から開催されるRakuten Fashion Week TOKYO 2023 A/Wに合わせて、今回はアパレル業界に焦点を当てた、サステナビリティランキング上位20社を紹介します。

■アパレル業界編・「サステナビリティ総合」ランキング

出所:TERRAST 
ユニバースはTOPIX構成銘柄で、GICS区分一般消費財・サービス/繊維・アパレル・贅沢品に属する企業群

1位のゴールドウインは2021年5月、10年先を見据えた長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」を策定し、企業成長と地球環境の改善を本格的に目指すことを宣言しています。他アパレル企業と比較して圧倒的なESG経営推進力が強みで、特にE(環境面)に力点があるのは、スポーツ・アウトドアブランドならではの特徴と言えそうです。ESG推進を経営の中枢に置き、すべての取り組みがESG視点にあることが高評価につながったポイントだと考えられます。
同社は「グリーンデザイン」の推進しており、環境負荷が低く再生可能な原材料を使用した製品開発を行うなど環境面の取り組みをリードし進化し続けています。2030年度までに環境負荷低減素材の使用製品比率を90%以上にする目標を掲げているほか、ファッションロス・ゼロを目指して、製品や材料の廃棄を出さない循環型社会の実現も進めています。

第2位のワコールホールディングスは、2021年4月にサステナビリティ経営を本格化するため「サステナビリティ推進プロジェクト」を開始しています。執行役員から若手社員まで全社の幅広い層から集まるメンバーが多様な意見を出し合ってグループミッションを定義するなど、企業変革に向けた活動にも注力しています。サステナビリティの重要テーマ(マテリアリティ)を抽出する過程の議論やメンバーの思いを発信する特設サイトを設置するなど、ステークホルダーとの対話を充実させようとする姿勢が伺えます。

第3位のアシックスは、サプライチェーンを巻き込んだサステナビリティへの取り組みを加速させている点が印象的です。2017年からサプライヤー/工場のリストを公開・毎年リストを更新しており、アシックス向けに生産するサプライヤーの最新情報を公開しています。アシックスの基準に照らし合わせた生産委託先のモニタリングを継続的に実施するなど、透明性の高いサプライチェーン管理を実施しています。そのほかにもユニセックスブランドの展開、豊田合成と共同開発したエアバッグ生地の端材を使用したスニーカーの販売、イベント主催者やランニング愛好者のケガなどに対する補償を提供しながらCO2削減も同時に目指す仕組みを提供する新会社の設立など、サステナビリティ関連の新たな取組にも積極的です。2021年12月には、ESG(環境・社会・企業統治)目標が未達成の場合にCO2排出権を購入するサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)を100億円の予定額・期間5年で発行しています。

■アパレル業界のサステナビリティ課題

華やかな面が注目されやすいアパレル業界ですが、流行を生み出し消費を促すことで発展してきた産業であるため、サステナビリティの重要性の高まりとともに、アパレル企業が社会や環境に与えてきた影響に対する世の中の視線も厳しくなっています。

今回はサステナビリティ総合ランキングに加えて、アパレル業界の重要課題である「気候変動(環境課題)」「労働者の権利(社会課題)」のスコアランキングと、企業価値の拡大、事業の健全性、機動的な業務執行、透明性の高い意思決定などを維持するために欠かせない基本的な経営課題であるガバナンスに関わる「取締役会」スコアにスポットを当てたランキングも見てみましょう。

■E(環境) 「気候変動」ランキング

出所:TERRAST
ユニバースはTOPIX構成銘柄で、GICS区分一般消費財・サービス/繊維・アパレル・贅沢品に属する企業群

気候変動スコアは、各社の「収益当りGHG総排出量(CO2)」「収益当りスコープ1・GHG総排出量(CO2)」「収益当りスコープ2・GHG総排出量(CO2)」などの指標で構成されています。商品製造・ブランド企画・販売系のアパレル企業は、収益当たりのCO2総排出量が比較的低く、繊維染色加工・化学工業などが事業に含まれるアパレル企業は収益当たりのCO2総排出量がやや高い傾向となっており、その点が気候変動スコアに反映されたと考えられます。
 
1位の「ゴールドウイン(気候変動スコア95.9)」は、事業所の使用電力を再生可能エネルギーに転換するなどしてCO2排出量の削減に取り組み、2017年度に7,575 t-CO2だった国内主要事業所のCO2排出量は、2021年度には352 t-CO2となり、順調に削減を進めています。国内事業所の再エネ比率は92%で、今後は太陽光パネルによる自家発電も進める予定としています。またこのほかにも製品の改善や消費者を巻き込んだ活動にも注力しており、環境や気候変動への対応に関する取り組みを積極的に進めている努力が気候変動スコアにも反映されていると考えられます。

【ゴールドウインの環境・気候変動の取り組み】

  • 環境負荷低減素材の使用製品比率2030年度90%以上とする目標を公表

  • 同社製品の修理代を無料にして製品のロングユースを促す取り組みを開始

  • サイズアウトした子ども服を循環させ廃棄を減らす目的のリセール事業「GREEN BATON」開始

  •  POP UP店舗でリサイクル可能な環境配慮素材の什器を採用、コンパクトかつフラットになる設計で輸送時CO2の削減にも貢献

  • 使用済みペットボトルを再利用したリサイクルポリエステルを使った素材を自社開発、同素材を使った衣服を発売

  • 石油由来の原料を使用せず、微生物の活用で植物由来の糖類(グルコースやスクロース)を原料に発酵生産によってつくられる構造タンパク質「Brewed Protein™」をSpiber社と共同開発

■S (社会) 「労働者の権利」ランキング

出所:TERRAST
ユニバースはTOPIX構成銘柄で、GICS区分一般消費財・サービス/繊維・アパレル・贅沢品に属する企業群

労働者の権利スコアは、「従業員の生産性」「従業員の給与水準」「労働条件」「従業員満足度」「従業員の成長に関する制度の充実度」「従業員一人当たりの月間残業時間」などの指標で構成されています。
 
1位の「アシックス(スコア69.2)」は、体系的な人材開発を設計し、従業員の成長をサポートする体制を整備しているほか、次世代リーダー育成や経営幹部候補への投資拡大にも注力しています。また健康経営にも積極的に取り組んでおり、自社開発の健康増進プログラムを従業員に実施するなど、フィジカルとメンタルの両面から従業員の健康状態の改善を図る取り組みを推進しています。
また自社だけでなく、間接的につながるサプライチェーン上の労働者の権利にも責任感を持って対応。生産委託先工場などサプライチェーン上の提携先と協力し、公正な賃金の実現、団体交渉の自由、児童労働の撤廃など責任ある雇用の実現にコミットしています。

【アシックスの社会・労働関連の取り組み】

  •  自社開発の健康増進プログラム(ASICS HEALTH CARE CHECK)を従業員に実施、現在の健康度の評価や将来の健康寿命の予測を行い、無理のない個別の健康増進プランを提供

  •  プレミアムフライデーやノー残業デーを活用し、従業員の運動機会を創出するセミナーを実施

  • 本社ビルや大きな事業所には体育館、シャワー設備が完備、昼休みや仕事帰りにランニングやヨガなどのスポーツを楽しめる環境を提供

  • アシックスグループ全社員にメンタルヘルス研修を実施

  • 治療と仕事が両立できるよう、主治医・産業医・保健師・所属部署が連携し、専用の管理フォーマットを活用してサポートする体制を構築

  •  兵庫県とスポーツ振興や健康促進に関する包括連携協定を締結、子ども向けスポーツ教室の創設や高齢者の健康づくりなどで協力

■G(ガバナンス) 「取締役会」ランキング

出所:TERRAST
ユニバースはTOPIX構成銘柄で、GICS区分一般消費財・サービス/繊維・アパレル・贅沢品に属する企業群

取締役会スコアは「非業務執行取締役比率」「最年少役員の年齢」「取締役年齢差」「取締役平均年齢」「取締役平均在任期間」「10年超在任取締役数」「会長の年齢」などの指標で構成されています。
取締役会ランキングの第1位「バロックジャパンリミテッド(スコア72.5)」は、役員の年齢差が大きいこと(最年長と最年少の役員の年齢50歳差)、最年少取締役の年齢が若いこと(最年少は30代)などが特徴的な点としてあげられます。経営陣はダイバーシティにあふれ多様なスキルを持つ人選がされている点も特徴的です。女性向けブランドを展開する企業であるため女性従業員が多く、管理職にも多くの女性が登用されています(管理職に占める女性の割合は約48%・2021年9月時点)。

本記事で紹介したアパレル業界以外の各業種のランキング・詳細情報については、非財務データバンク「TERRASTエントリーβ」にて無料でどなたでもご覧いただけます。

分析方法

  • 各スコアは東京証券取引所に上場する3,844社(2022年10月31日時点)のESG/SDGsに関連する400超の項目(CO2排出量や女性管理職比率、独立取締役比率など)を集め、分析したものです。本稿では、アパレル企業の上位20社のランキングを掲載しました。

  • スコアリングに使用したデータは、企業の統合報告書などの開示資料やWEBコンテンツ、その他のオープンデータなどから抽出した情報(客観的事実)をもとにAIを活用し数理モデリングした、ファクトベースの中立、客観的な数値となっています。またサステナブル・ラボは第三者機関として、"説明可能かつ非・属人的な数理モデル"により対象を公正中立に評価するべく努めています。

サステナブル・ラボ株式会社

データサイエンス × サステナビリティ × 金融工学領域の出身者による、日本で唯一のESG/SDGsに特化した非財務ビッグデータ集団。「あらゆるサステナビリティを認め合える世界に / Towards the world appreciating all sustainabilities」をビジョンに掲げ、定性的に語られやすい企業の環境・社会貢献度をビッグデータとAIを用いて定量化する非財務データプラットフォームとして、金融機関やコンサルティングファーム向けに日本最大級のESG/SDGsデータツール「TERRAST(テラスト)」を、また事業法人向けにESGのスマートな開示と改善ツール「TERRAST for Enterprise」β版を展開。また、これらのエントリーモデルとして、企業のESG/SDGsデータがランキング形式で見られる「TERRASTエントリーβ」を無償公開しています。


■金融機関・コンサルティングファーム・経営企画向け非財務データバンク「TERRAST(テラスト)β」

■事業会社向け、ESG/SDGsの見える化ツール「TERRAST for Enterprise β(T4E)」

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