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鮨カレンダー ~鮨みずかみの1年~ 師走(12月)

本連載は、鮨歴10年超の鮨ブロガーが1年を通して毎月同じお店に通い、鮨の魅力をお伝えする企画です。鮨種(=すしネタ)の変遷から、旬を味わう喜びをお届けします。
1年を通して読んで頂ければ、鮨と魚に詳しくなり、鮨を食べるのが格段に面白くなるはずです。そして、誰かと一緒に鮨を食べに行くときも、鮨のトリビアを説明できる立場になれます。

霜月(11月)の記事

本記事は連載第12号、最終回です。

お伺いするお店は、半蔵門の「鮨みずかみ」さん。親方の水上行宣(みちのぶ)さんは、名店「すきやばし次郎」で16年間も修業された方です(他のお店での修行を加えると、修行歴はトータル23年)。

今回は、師走(12月)に伺った際の内容をお届けします。

12月の訪問については、実は全国的に大時化のタイミングでの訪問でした。多くの知り合い職人さんや漁業関係者から「ヤバい」と聞いていたタイミングでの訪問です。全ての握りを頂き終えるまで水上親方には尋ねませんでしたが、実際にそうだったそうです。しかし、頂き終えた時の実感は、杞憂でした。杞憂に終わった理由は、自身の食運が優れていたわけでは無く、水上親方の仕入れのお陰であることは言うまでもありません。

僕は常々、悪天候や時化の時こそ、鮨職人の仕入れ力や目利きの力が試されると感じています。日々の河岸(魚市場)での仲買人との付き合い方が、悪天候の時に影響してくるのです。本当に優れた鮨職人は、天候悪化を見越して仕入れを行ったり、仲買人が職人のために取り置いてくれたりします。

世間では「市場に行かなくても取り寄せれば良い時代」と言う人もいますが、これはハッキリ言って本質が分からない方の軽薄なコメントです。あるいは、味が分からない方と言っても良いかもしれません。筆者は食べ歩きの経験則として、間違い無く市場での付き合いや関係性が味に影響を及ぼすと確信します。この鮨職人にとって大切なことを、鮨好きとして一年の最後に実感させて頂いたのは僥倖と言えます。

一連の訪問を通して水上親方と河岸の関係者に感謝を覚えるとともに、今後も魚と鮨と職人さんへの敬意を忘れることなく鮨と向き合っていこうと強く実感します。一年を通して季節の変化、魚種と魚味の変化を体感したからこそ敬意が深まり鮨が更に好きになりました。本記事を読んで頂いている読者の方も同じように鮨と魚が好きになり、鮨店に行く回数が増えていれば幸いです。鮨は人を豊かにすると実感する一年でした。

師走(12月)の「鮨みずかみ」さんの魅力

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