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"普通"を積み上げたおいしいお店 #ラドリオ

 神保町は雰囲気で人を酔わせる。ぼんやりと薄暗く、歴史を凝縮したような密度の高い空間が一人一人を場に溶け込ませ、街を1つにする。そこには自も他もなく、逆に大きな孤立を生むような感覚。浮遊感のある孤独というのか、私には心地良く感じる。

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 そんな神保町を更に濃縮したのがラドリオ。路地を極めたような場所にある、大人の秘密基地を彷彿とさせる喫茶店だ。店内は神保町らしく本で囲まれたスペースや、年季の入ったバーカウンター、寛ぐには丁度良くも物足りないような赤いソファで独自の世界観を構成している。薄暗い空間を明るすぎるくらいの照明が転々とし、いびつな明度が空間にアシンメトリーを演出する。

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 喫茶店には何も驚くような味を求めてはいない。たまたまふらっと立ち寄ったり、作業の合間にぱっと食べたり、不意に頼むような"普通"においしい料理が食べたい。私はナポリタンを、友人はカレードリアを頼んだ。

 別に具だくさんなわけでも、斬新なわけでもない、至って普通のナポリタンをここまでおいしく感じられるのはラドリオの実力であり、喫茶店のマジックでもある。固めに茹でたパスタをケチャップの水分が飛ぶまで炒めた塩梅が自分好みで、なんだか大人になった気分がした。

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 サラダとスープはすぐに運ばれてきたので、ナポリタンが来る前に食べきってしまった。これも普通で好き。

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  どうやら日本で初めてウインナーコーヒーを提供したお店らしい。この場所で執筆してきた物書きたちには、カフェインだけでなく糖分も必要だったということなのだろうか。

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 頼んでみるとそれは何とも"インスタ映え"で、神保町から生まれた文豪たちはこれを何と表現するのか気になるところ。見た目に反して甘みはクリームにしかなく、コーヒーはしっかりブラックを保っているのでベトナムコーヒーのような重さはない。中和されたしつこくないまろやかさは、執筆に疲れた頭をそっと撫でるように迎える優しさだった。

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