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いい人でいるって良い事だと思ってた①

幼い頃〜大学まで

小さい頃から私は、ずっと「いい子」と言われて育ってきた。父も母も、私に「いい子」であることを求めているんだと思っていた。

特に、私が生まれた時から母は持病があり、「長くは生きられないかもしれない」と言われて育った。そして父は原爆二世ということで、「癌とかで早く死んでしまうかも」と言っていた。

幼子心に、私は両親との死別を恐れ、夜眠る前のお祈りで必ず「パパとママの病気を早く治してください」と唱えていた。そして神様がそれを叶えてくれるには、私はいい子でいなければ、と思うのだった。

そして私はその心情のまま育っていく。学校ではテストでいい点を取るように努めたし、実際に成績はずっと良い方だった。

いじめられたり、友達と喧嘩したりと色々学生時代にはあったけれども、両親にはそういう「心配をかけそうなこと」は話せなかった。思えば、心配事や悩み事を両親に相談したことがほとんどない。それはやはり、話せば両親が、私のことを「この子は問題を抱えるような子で、いい子ではない」と思ってしまうのではないか、という恐れからだった。

大学受験で、私は失敗した。国公立を第一希望にしていたが、結局滑り止めに受けていた私学に通うことになった。両親に、国立の倍の授業料を払わせなければいけなくなってしまい、罪悪感を覚えた。

そして高校を出て、上京し、一人暮らしが始まった。

どうやって友達を作っていいのか分からず、そして他の生徒たちはお金には困ってなさそうな身形で、ブランドバックを下げて、お化粧も洗練されていて、、、あまりの周りとのギャップに最初のうちは本当に辛かった。

思えばそこから、私は「恋愛依存症」になっていた。

私の拠り所はそこにあった。いつも彼氏がいて、そこに自分の全てを見出していた。寂しさもアイデンティティも、全てを相手に求め、すごく重たい女だったと今ならわかる。いわば完全なる他人軸で生きていたのだ。

自分が何が本当に好きなのか分からなかった。自分を取り柄のないつまらない人間だと思っていたし、一人でいるのが寂しいから、授業以外は友達といるか、彼氏といるか、バイトをするかでスケジュールをビッシリ埋めていた。

当時は考えもしなかったが、大学生だった10年前の自分を振り返ってわかる。私は相当「寂しかった」のだ。

恋愛関係、友人関係でも、バイトの環境でも、私は「いい人」だった。断るという行為ができなかった。NOと言えなかった。嫌われるのが怖くて、なんでも相手の理想に沿うように応えた。それでどれだけ自分自身を傷つけてきたのか、今振り返ってやっとわかるようになった。自分を傷つけるような、破滅的な選択をしたこともあった。自分を大事にする、なんて頭は一切なかった。当時は、自分がそんな風だとか、自分自身が一体どういう存在なのか向き合ったことがなかった。

紆余曲折ありながらも、私は大学を卒業して就職という道を選ばず、念願の海外留学をした。私はずっと、語学や海外に興味があった。それは、声を大にして私の好きなことと言えるし、海外に行く勇気だって褒められることだが、それは今だからであり、この1〜2年で自分と向き合うまでは、自分を過小評価していた。

留学先のフランスで、語学学校に通いながらベビーシッターをしていたが、そこでも私は「いい人」だった。しなくて良い仕事や家事もこなした。語学学校で、ディスカッションをして意見を求められると自分の意見が無くて困り果てた。自分には考える力がないのだと思った。

帰国後〜夫と出会うまで

日本に帰国してから、私はブラック企業に嵌っていた。

平日終電くらいまで働くのは当たり前で、プライベートの時間はほぼ無く、休日も返上しなければならないような働き方をしていた。自分をそれで肯定していた。でも今思えば、それは「寂しさ」を覆うためのベールだった。恋愛では無く、仕事に依存対象が変わっただけだった。そして「いい人」だから、仕事の頼まれごとは断れない。責任感もあるため、全てを最後までこなそうとする。

でも最後は、上司の顔も見たくないし、声も聞くと吐き気や動悸がしてしまうほどのストレスを抱え、押し切る形で辞めた。自分をそこまでボロボロにしないと、自分が限界だと気がつかなかったのだ。

その後に就職したのが、今の会社である。ブラックで働いていた分、最初のうちは定時に上がれることに驚きと喜びを覚えた。でもなんだか、物足りない気がした。本当の私は何がしたいのだろう…この仕事は私に向いているのだろうか…定時であがって、帰宅して、ただNetflixを見て、寝て、起きてまた会社へ行くだけの生活。

仕事における目標とか向上心が全くなかった。今思えば、前職の鬱みたいなものを引きずっていたのかもしれないと思う。そしてこの会社に勤め始めて3ヶ月後、私は夫と出会う。

続く

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