こういうのでいいんだよ。~カツ丼編~
その日たまたま目に入った、にまんえん以上する「高級カツ丼」の記事を見て、わたしはすぐにカツ丼が大好物である夫に知らせた。
「すごくいい肉っぽいし、美味そう。どんな味がするんだろう。」
値段に驚愕してはいたが、興味津々にわたしのiPhoneをのぞき込み、そしてこう言った。
「でも、こういうんじゃない。」
わたしと夫の休日がかぶる日曜日、基本的に我が家の家事や炊事をするのは夫だ。べつに夫は料理が得意なわけではないけれど、食べるのが好きな人って、作るのも好きだったりするじゃないですか。夫はまさにそれ。
作ったことがないものをレシピサイトの力を借りながら見よう見まねで作るのが楽しいらしい。以前、夜更かしして昼近くに起きてみれば、テーブルにフレンチトーストが作られていた時はびっくりした。前の晩から仕込んでいたらしい。正気か?
夫食堂(いま勝手に名付けてみた)はリクエストも可能なので、以前は日曜日のたびに「だし巻き卵」をリクエストしていた。「今日は綺麗に焼けた!」とか「ちょっと出汁を入れすぎたからしょっぱくなっちゃったよ。」などと、夫なりにも試行錯誤を重ねてくれていたらしい。しかしこれは「だし巻き卵を愛するわたし」が「自宅で(人が作ってくれた)美味しいだし巻き卵を食べたい」という願いを叶えるための、いわば「夫育成計画」だった。そんなことも知らずに、夫はだし巻き卵を作り続けてくれた。
そんな夫の大好物は「卵」であって、基本的に卵料理が好き。そしてその中でも「カツ丼」と「親子丼」は、夫の好きなものランキングでかなりトップに位置するらしい。
だから、わたしはあのカツ丼を見せた。「にまんえん」のカツ丼は(多分)めちゃくちゃ高級なお肉が使われていて、(多分)あのよくテレビで見る箸で卵黄がつまめるみたいな、「〇〇を食べて育った鶏が産んだ卵!」とかそんなキャッチフレーズを掲げた高級卵が使用されているんだろう。知らんけど。
そんなの、ぜったいおいしいやつやん。
しかし夫はこう言った。
「こういうんじゃない。」
その日は休日。炊事当番は夫だ。夫はスーパーでお惣菜のトンカツを買ってきた。卵は家に常備してある。その日の晩ごはんはカツ丼だった。
「うま。」
「おかわりある?」
「もうごはんないじゃん!」
1パック198円の卵でとじられた、お惣菜の夕方特売で買ったトンカツ。
にまんえんのカツ丼の味は知らないけれど、夫の作ったカツ丼は
多分、
世界一おいしい。
本日も読んで下さりありがとうございます。
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