見出し画像

とある、夏の朝に。

朝、お気に入りの海外の曲がiPhoneから流れてくる。

あ、目覚ましだ。

目の前にはまだ眠り続ける娘。かわいいなぁ。あまりの可愛さに起こすのがもったいない。ず~っと見ていたい。起きると大変だから、娘が寝てる時間はわたしも寝ていたい。でも寝顔も見たい。ああだめだ。今日は仕事。


まだあと30時間は寝たいよと訴える体を無理矢理動かして起き上がる。

生まれたときからやめられないし、今後もやめるつもりは毛頭ない娘への頬擦り。そんなことをしていると大きなおめめがぱっちりと開いて、わたしを見つけてにこっと柔らかく微笑む。

かわいい。かわいい。かわいい。

我慢しきれずに抱きしめてしまう。「おはよぉ~~~~~」と言いながらじゃれつくとけたけたという笑い声が聞こえて、「ああ、このまま離れたくないな。」と思う。やわらかくて、あたたかくて、いいにおいがする。まるでお日様みたいだ。そんなお日様を抱えてリビングへと向かう。

小学生のお兄ちゃんはいつも先に起きている。夜眠るときはママのそばじゃないと眠れないのに、朝はさっさと起きて着替えてテレビを見るのが彼の日課だ。朝が本当に苦手なわたしからすると、お兄ちゃんの生活スタイルは不思議でならないが、健康的でいいことだ。素晴らしいぞ。

そんなぐうたらなわたしが起きたのでやっと朝ごはん。といっても炊飯器が炊いてくれたごはんの上に納豆をかけて食べるとか、味付け海苔とか、目玉焼きとか・・・。最近はそれにプラスしてヨーグルトとなにかフルーツを出すようにしている。毎日そんなもんだ。

子どもたちが食べている間にわたしは自分の身支度を整えたり、保育園の持ち物を点検する。そうしながらやっと、「ああ、今日が始まるんだな。」と感じるのだ。

準備が終わったら水筒にたっぷり麦茶をいれて、お兄ちゃんに渡す。

「いってらっしゃい!」

さぁ、わたしも出なくては。娘に靴を履かせ、仕事用のバッグと保育園のリュック、さらに今の時期はプールバックも持って。

ひとりなら5分の道を、2倍も3倍もかけて、炎天下の中、歩き続ける。


10年後、きっとこの朝を子どもたちは覚えていないだろう。


なんてことない、夏の、とある朝。

これからだって何度も繰り返していく季節や時間だけど、来年の今頃はまた違う朝になっている。

お兄ちゃんは変わらず早起きをして着替えてテレビを見ながら、ごはんだってひとりで食べていたりして。娘まで早起きになっているかもしれない。

中学生や高校生になったら、朝ごはんを食べない日もくるかもしれないし、それどころか話してくれなくなるかも?

ダイエットしてるから朝はこれが食べたいとか、今日はパンの気分だったのにとか。

なんてことない朝に起きる出来事は、どんどん増えていくんだろうな。

そしてわたしはその度に「文句言うなら食べるな!」とか「うちにそんなしゃれた食べ物はない!」とか怒りながら、また身支度をするのだろう。


やかましくて、せわしない朝が、これからも続く。

床にこぼれた牛乳に悲鳴を上げても、食べ終わったお茶碗を水に浸していなくても、せっかく作った朝ごはんをいらないと言われても。


これだけは、ずっと言わせてね。


「いってらっしゃい。」



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?