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[小説]妄想した通りに夢を叶えられる能力を手にしたブサ男

 自分は何でも想像通りに夢が叶ってしまうことがわかった。ちなみにだな、自分はすごい不細工でコンプレックスを持ってたのだ。
 そんな自分は恋人も友達もいないので妄想をすることが得意だ。ある時、クラスで一番美少女のたかこちゃんと付き合えないかなとか妄想していたのだった。

「私と付き合ってくれませんか!」
「ええええ!?」
 これは 一体どうなっているんだと思った。妄想してたらまさにたかこちゃんが告白してきた。
 でも何かの罰ゲームで騙されているかもしれないと思ったのだった。

「ごめん」
「え? そんな…」
 たかこちゃんはものすごく号泣していたのだった。この反応はちょっとおかしいぞと思った。

「たかこちゃんお願いだから元気出してよ」
「うん! 分かったよ!」
 するとたかこちゃんは次の瞬間にはパッとものすごい元気になったのだった。まるでさっきの涙は嘘だったかのように元気になった。
 これもまたおかしいなと思った。とりあえず自分は何が起こっているか分からなかったので状況を整理することにした。

「うーむ」
 まず自分は妄想をしていた。その妄想の後にそれで妄想通りになってる。ここから導かれる答えは自分は妄想通りに事が運ぶということである。
 とりあえず、その真実を確かめるために1万円が欲しいなーみたいな事を妄想してみた。

「ブサ男! 1万円よ!」
 すると、お母さんがいきなり1万円をくれた。やっぱりそうだ。世界は自分の想像通りに事が運ぶのだ!
 これで証明が完了したのであった。だが自分はものすごく卑屈でネガティブだった。
 自分は「あー人類滅びねーかなー」とか「世界滅びねーかな」とかよく考えてしまっている。
 というよりも考えない日なんて1日もないのでとにかくこれはまずいと思った。ネガティブモードに入る前に妄想で願いを抑制する指輪が出てこないかなーと妄想してみた。

 すると、目の前にチャリンという音がして次の瞬間には自分の目の前に指輪が置かれていた。
 これで間違って世界を滅ぼす心配がなくなったのであった。とりあえず自分の指にその指輪をはめてみた。
 ところで自分はちょっと体型が太っちょなのである。なので指がソーセージみたいにぶっとくて若干指輪がきつい。

「ぐぬぬぬぬぬ!」
 なんとか入った。それでは早速検証のために1万円欲しいなと妄想してみた。すると次の瞬間お母さんが自分の部屋に入り込んできた。

「ブサ男! さっきの1万円返しなさいよ! 泥棒!」
「ええええ!?」
 さっきまでめちゃくちゃ優しかったお母さんがめちゃくちゃ怒ってきた。1万円を返すことにした。

「とほほ」
それにしてもさっきのお母さんはちょっと怖かったな。なんだか家にいるのも気まずいので外に出てみることにした。
 するとたかこちゃんがこちらに走り寄ってきた。また告白されるのかなーとか淡い期待をしていたが、たかこちゃんがいきなり馬乗りになってきてもうすごい顔面を殴ってきた。

「あんたふざけんじゃないわよ! 私に恥をかかせたわね!」
 サンドバッグという感じでボコボコボコボコと殴られた。自分は情けないけども泣いてしまった。

「アンタなんか好きなもんか! つか◯ね!  ペッ!」
 最後はたかこちゃんに唾を吐き捨てられた。自分は泣きながら帰った。

……………………………………

「もうこんな世界なら滅びてしまえ!」
 でも当然指輪をしているので願いは叶わない。

「クソなんで指輪なんてつけているんだ! こんなクソ指輪外してやる!」
 自分は頑張って指輪を外そうとするが、なかなか外れない。自分の無駄に余った肉が邪魔をして外れないのだ 。

「くそ! どうしてだよ、どうしてこうなるんだよ!」
 結局自分の肉が邪魔して指輪が外れることはなかったのだった。ここでダイエットでもして痩せればいいじゃんということになるだろうが、自分はダイエットなんて嫌いなので普通にポテチを食べてコーラを飲む。
 そしてまたブクブクと太る。まるで自分は豚のようだ。いや、こんなことを言ったら豚に失礼なのか。
 とりあえず自分はそれから一生指輪が外れることはなかったのだった。そして指輪をつけているので当然、妄想は永遠に現実にはならないのだった。

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