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♬とらねこ村の共同マガジン~歌詞のパティシエ~

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歌詞パティシエの武炭宏(Hiro)さんととらねこが共同運営する、音楽記事を専門的に扱うマガジンです。 歌詞、音楽動画、所感、ミュージックボックスなどを専門に載録します。 専門マガ…
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#私のイチオシ

コラボ企画<歌詞のパティシエ>

武炭宏(Hiro)さんとの共同企画です。 音楽ジャンルの記事を専門的に取り扱う共同マガジンです。 🎼歌詞のパティシエ コンセプト 音楽に関する記事を広める 管理人 武炭宏(Hiro) とらねこ 専門分野 ・歌詞 ・音楽動画 ・所感 ・ミュージックボックス ・その他それに準じるもの 活動頻度 ・月1回からの投稿 ・ときどき書いている音楽記事の投稿 参加方法 この記事にコメント下さい。 歌詞のパティシエで一緒に活動したい人は、気軽に声をかけてみて下さい。 ***

光と水が奏でる旋律 -ドビュッシーのソナタの美しさ

【金曜日は音楽の日】 音楽は、その自由に流れていく姿が水を思わせます。 私にとって、そんな水の自由さをもっとも連想させる音楽が、ドビュッシーの『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』を聞いたことでした。 はじめて聞いた時、これ程自由で、しなやかな美しさに満ちた音楽が、この世に存在するのか、と衝撃を受けました。 風にそよぐようなハープとフルートの絡みから第一楽章は始まります。「牧歌」と名付けられたその始まりの、夢見るような美しさ。 ヴィオラ

晴れやかな喜びの試み -ベートーヴェン『田園交響曲』の魅力

【金曜日は音楽の日】 ベートーヴェンの交響曲の中でも第六番『田園』は、不思議な魅力に溢れています。 第五番『運命』や、第九交響曲ほどポピュラーではないけど、滋味と喜びに満ち、そして彼の交響曲中の、異色作でもある。それゆえに美しい作品です。 『運命』は、ベートーヴェンが名付けた題名ではない通称ですが、第六番はベートーヴェン自らが『田園交響曲』と名付けています。それだけではなく、各楽章に、サブタイトルもつけています。 第一楽章は、『田舎に着いて、朗らかな気分が

デュオの魅力 -音楽で対話することの良さ

【金曜日は音楽の日】 以前、私が面白く読んだ漫画に、新川直司の『四月は君の嘘』があります。 クラシック音楽を題材にして、アニメ化もしたこの作品。トラウマを抱えて弾けなくなった、元天才ピアニストの少年と、天真爛漫な凄腕ヴァイオリニストの少女の物語です。 興味深いのは、この作品がオーケストラでなく、ソリストでもなく、デュオを題材にしていることです。 オーケストラであれば、集団の中でいかに自分の色を出すか、いかにそれを統率するかという、個と全体との葛藤に

熱狂の魔術師 -天才指揮者カルロス・クライバーの魅惑

【金曜日は音楽の日】 指揮者というのは不思議な存在です。自分で楽器を演奏するわけでもないし、歌う訳でもない。 実のところ、ある程度実力のあるオーケストラなら、ベートーヴェンやブラームスの交響曲レベルは、指揮者がいなくても、破綻無しに演奏は出来ます。 指揮者の役割とは、その「演奏」に、プラスアルファを付け、真の「音楽」を創りあげることだとも言えます。 カルロス・クライバーは、強烈で熱狂的な「プラスアルファ」を創造することができた、最高の指揮者の一人でした

みんなに広がる私の歌 -ジェイムス・テイラーの魅力

【金曜日は音楽の日】 詩や歌の魅力の一つは、自分の個人的な感情が色々な人に伝わって、それが、皆のものになっていくことだと思います。 口ずさみやすいメロディがあれば、更にそれは広がりやすくなる。シンガー・ソングライターの魅力とは、そういうところにあるのでしょう。 ジェイムス・テイラーはそんな、口ずさめる歌を作り続けてきた素晴らしいシンガー・ソングライターの一人であり、私にとっても最愛の音楽家の一人です。 ジェイムス・テイラーは、1948年アメリカのボストン

異郷は力をくれる -ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』について

【金曜日は音楽の日】 新しい場所で、新しく何かを始めること。それは、作品に力を与えてくれます。作者がその場所に開いた心で臨めば、素晴らしい変化をもたらすこともあります。 そんな異郷での新しい力を取り入れることに成功した音楽として、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』を挙げたいと思います。 第2楽章や第4楽章のテーマがBGMに使われて有名ですが、それ以外にも聴きどころがあり、複雑な味わいの名品になっています。 第1楽章は、暗い序奏から始まります。そして、玉虫

魔力に浸る音楽 -名盤『レッド・ツェッペリンⅣ』の凄み

【金曜日は音楽の日】 ここではない、遠い場所からの力を感じること、それは音楽の醍醐味の一つだと思っています。 そんな、遠い異界の魔力を感じるアルバムの一つが、ハードロックバンド、レッド・ツェッペリンの1971年のアルバム、通称『レッド・ツェッペリンⅣ(フォーシンボルズ)』です。 『天国への階段』という、ロック史上に残る名曲を擁し、語り尽くされた感もあるこの大傑作ですが、改めて聞くと大変面白く、何度聞いても飽きないアルバムです。 一曲目の『ブラック・ドッグ』は

森の吟遊詩人たち -3人の美声ブリティッシュ・トラッド歌手

【金曜日は音楽の日】 私は時折、『ドラゴンクエスト』の影響はゲームだけでなく、ある種の心性にまで及んでいるのではないかと思ったりします。 つまり、ゲームシステムだけでなく、あの舞台のイメージが、人々の「ここではないどこか」のイメージの礎になっているのではないでしょうか。 ヨーロッパ中世の石造りの城、木でできた小屋の村の酒場、魔物や妖精が出る鬱蒼とした森。聖なる力を持つ剣、盾と鎧の装備と魔法、魔王の討伐。 こういったものが人をワクワクさせるのは、あのシリーズのイメー

みんなの喜びで色づく音楽 -ハイドンの交響曲『時計』

【金曜日は音楽の日】 新しい場所でチャレンジすることは、新しい力を与えてくれます。 同じことを継続することは素晴らしいことだけど、環境を変えることで、今までになかった隠れていた面が出て、新鮮な作品になったりします。ハイドンの交響曲101番『時計』は、そんな作品の一つです。 ハイドンは、「交響曲の父」と呼ばれ、生涯に104曲の交響曲を残しています。モーツァルトは41曲、ベートーヴェンが9曲と考えれば、すごさが分かります。その中でも有名なのは、後期の交響曲101番、通称『時

灰色の朝に祈る -ジェズアルドの宗教音楽

以前、「人を殺したことのある大芸術家」として、画家カラヴァッジョを取り上げました。もう一人、私が思い浮かぶ芸術家は、16世紀ルネサンスの音楽家、カルロ・ジェズアルドです。 もっとも、両者の生きた道筋と芸術は全く異なります。カラヴァッジョの場合、度重なる愚行の果ての襲撃であり、作品の価値はさておき、その生涯の罪と愚かさに、同情の余地は全くありません。 しかし、ジェズアルドの場合、その罪は、様々な意味で、一考する部分があるように思えます。そして、カラヴァッジョが、彼の愚行

陽光の中の回想 -モーツァルト『ピアノ協奏曲27番』の美しさ

よく、自分の葬式で流してほしい曲、というアンケートがあります。私の場合何かと考えると、ロックやポップ音楽と別に、クラシックの中だと、多分モーツァルトのピアノ協奏曲27番(K595)を選ぶと思います。 この曲には、落ち着いた午後、かつての楽しかった過去を思い出しているような、甘美さと静寂があるからです。 第1楽章の導入。静かに弦が入り、麗しいメロディが奏でられます。しかし、長調の明るいメロディなのに、弾んだ感じはしません。『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』のあの爽や

ささやかなミュージカル映画の傑作4選+1

ミュージカルというジャンルは、現在でも劇場は勿論、映画にも熱心なファンがいらっしゃいます。 ミュージカル映画というと、やはりMGMの1950年代の作品を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。 『バンド・ワゴン』、『巴里のアメリカ人』、『雨に唄えば』といった作品です。ジーン=ケリー、フレッド=アステア、ジュディ=ガーランドといった綺羅星のようなスターが歌って踊る作品群。あとは、『サウンド・オブ・ミュージック』や、『ウエストサイド物語』辺りでしょうか。 また、最近で

夜更けのロック名盤5選

以前、ジャズの名盤を、夜と昼に分けて紹介しました。歴史と関係なく主観的な選択でしたが、好評だったようです。 そこで今回は、ロック・ミュージックのアルバムで、「夜」を感じさせる名盤を選んでみたいと思います。ロックは元々ブルースを基にしていることもあり、孤独な夜の呟きと、夜の熱波の火照るような狂騒を持っていると思います。 ここで挙げるのは、そうした、ロックのどろりとした原初の力が色濃く滲み出ているようなアルバムです。 そして、どれも、真夜中に一人きりで、興奮と半覚醒で