小説「蠅の王」について


これは十代の頃、東京に出て最初に読んだ小説だ。
そのかなり後、映画化されたように思う。

タイトルから連想させるのは有名な悪魔「ベルゼブブ」そのもの。
いったいどんな小説なのか?、当時、予備情報ゼロで買った。
タイトルから危険な予感がした故に、好奇心で購入。

※以下ネタバレ


ストーリーは途中まで十五少年漂流記のオマージュ、或いは皮肉だろう。
子供だけが無人島に取り残されたらこうなるというドラマだ。
十五少年漂流記はポジティブで、健全なサバイバル小説だが、
この「蠅の王」はその真逆だ。
大人による罰則、法の縛りが無いと子供は野生化し、その正体を現す。
そんな無人島を舞台にした箱庭シミュレーション小説である。

そう、自分が子供の頃から知ってるリアルはむしろこちらだった。
子供だけの無人島サバイバルなんてきっと怖ろしい事が起きるだろう。
今の大学生ですら羽目を外すなら、10代前半だったらどうなるか?
強いられた倫理の鎖から解放され、本来の人の正体を発現するのだ。
この野性の法則、本能に根差した人のカルトが表題が示すものだろう。
確か「〇した豚の頭」を偶像にして、原始宗教がナチュラルに発生する。
少年たちは派閥化し、異端者の犠牲を求めて人間狩りを始めるのだ。
原始に戻った多数派は、文明人の理性を保つ少数派を迫害する。
解放された象徴として、弱者という生贄を求め少数派狩りを始めるのだ。

無人島という箱庭、つまり閉鎖された大人不在の村社会を作ると。
統率の為の犠牲として、反体制となる理性を保った少数派を狩るのだ。
これは東京の底辺グループだけではなく、何処でも経験してきた。
主体がある個体は精神性の幼いコミュニティで異端として吊るされる。
身勝手な幼児性のはけ口にされる。
荒木飛呂彦が「濡れ衣を着せられた」という情緒的な原理だろう。
現在ではこの幼児性が大人の社会、政治にまで波及し、社会が幼児化した。
クリエイター、生産者、学者、本当の医療を迫害し、搾取し、見下すと。
原則を無視した先の無い弱肉強食思想とはそういうモノだ。
虐待、共食い、カニバリズム、悪魔崇拝へと繋がる生贄思想だ。
生贄となるキリストを見つけ出し、吊るさなければならないと。
理性の無い社会で理性を保とうとするなら弾圧されるのは違いない。
何者かに煽動され「ブームに乗り遅れるな!」というカルトだ。
理解せずともただ流されるままに周りに身を任せろと。
おそらく韓国のロウソク革命もそうだろう。

日本の現状はまさに「蠅の王」を教義とした原始社会へと向かっている。
何人もの明確な犠牲者、より罪の無い、善意に満ちた生贄が発生している。
イジメ被害者、処刑されたジャーナリスト。
更に言えば、イラク戦争、あの呆然とした表情の某国大統領がそれだろう。
彼は悪魔の生贄に捧げられた事になる。
嬉々として子供の様にそれを喜ぶ米大統領の表情はなんだ?
あれこそが「蠅の王」、弱肉強食を是とする純粋な人の本性だという事だ。
あの様に残酷な儀式に興奮し、心からの笑顔を見せたコイズミの親友。
つまり構造改革の当事者の一人だろう。

法の罰則が無い環境に於いて、事実子供は野性を解放されるだろう。
これが現状の主流となった、倫理を無視する資本主義の行きつく先だ。
皆がこれを正しい「勝ち組思想」として掲げている。
よくホラー映画で若者だけのサマーキャンプをすると惨劇が起こる。
殺人鬼物のテンプレ設定だ。
自分も「社会性」の口実の元、幼い頃から何度も経験してきた。
キャンプ参加はどうやら昔からある典型的な毒親のテンプレの様である。
無能者が「鍛える為」の口実の元、下位に苦痛を強い責任を押し付ける。
スパルタ教育という詭弁、明らかに間違った刷り込みだ。

東京で関わった底辺グループでも同じ事が起きた事になる。
彼らから観て、逃げ出した生贄を見つけ出すのはライフワークだろう。
全ての責任を負わせ、追い込んで吊るせばそれが自己証明になると。
「強者には絶対逆らわない」彼等の怒りの矛先は、
ノーリスク、絶対弱者として「最も害の無い」安心安全な生贄を求めた。
まったく何の道理もないにも拘らず、逃げても逃げても永久にタゲられる。
村社会に迷い込み、たまたま出会っただけにも拘らず、
相対的アイディンティティとして根を下ろし、強制関係を強いるのだ。
これが「蠅の王」という事だろう。

新幹線を舞台にした漫画、「ドラゴンヘッド」はこれのオマージュか?
顔にペイントした子供が出て来たあたりでそんな気がした。
冗長だったので読むのを辞めてしまったが。

この「蠅の王」の舞台の孤島は、今の日本列島の事だろう。
チンパンジースマイルの空虚な暗記人間達は、
とっくの昔から血眼で人間狩りを遂行していると。

何度も引用して心苦しいが、旭川のイジメ事件は明らかにそれだ。
あれを教訓とせずに放置するならば、日本は原始宗教のカルトに堕ちた。
いずれは「豚の生首」を崇拝する事だろう。
生贄崇拝、弱者の犠牲を求める搾取思想、弱肉強食の価値観。
引き下げを繰り返す内弁慶は下降し、退化し、本当に共食いの猿になる。
いやもう、とっくになってる。
つまりこの邪教が浸透するには戦後3世代もかからないという事だ。

この悪意の状況証拠は揃ったのだから、そろそろリバウンドを起こせ。
ロジックで反面教師を立証する、それ以外にない。


そういう話。

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