キュートな3人のおばあちゃん 三婆三者三様
《恋心》
常連のおばあちゃんの1人に、元芸者さんで粋なおばあちゃんがいる。
おしゃれさんで、365日着物。
三味線の先生をしていたおばあちゃんは姿勢にうるさい。
だら〜んと座っているところなどを見られると、
『これこれあなた、シャキッとしてくださいな』と言われて、慌てて姿勢を正す。
このおばあちゃんは若い頃から賭け事が大大大好きだそうで、頭の回転が早い。
数字に弱い私は、おばあちゃんの計算の早さにまるで敵わない。
『お金扱ってんでしょ〜それくらいの暗算ができなくてどうすんのょ』なんて言われてしまうこともある。
ご老人達が頭の体操を兼ねて遊ぶ健全な麻雀クラブ、健康麻雀というものに月に数回通っている。
『あんなものつまらないけど、暇つぶしに行ってんのよ』な〜んて言ってたのだが、そこに最近、定年を迎え、奥様に先立たれた60代の男性が来るようになったそうな。
どうやらおばあちゃんはその人が気になっている模様。
話を聞いていると、恋心を抱いてるのだな!と察しがつく。
いつも以上にお洒落をして、お惣菜を作っては男性に渡している。
恋敵もいるらしい。
そちらもお惣菜を作って渡している。
2人が休憩所で談笑していたのも面白くなかったみたい。
おばあちゃんはスクラッチが好きで、いつも1枚ずつ買ってはその場で削って遊ぶ。
『なによ、末当しか当たらないじゃない!新しい袋開けて!』
『何番目にします?』
『何番でもいいよ』
削りながら、
『こい!こい!あーダメだぁ』ギャンブラーの血が騒ぐのか、もうけっこうなお金を使っている。
3袋目を6枚削ったところで、
『あー、今日はもうヤメタヤメタ!まったく、どいつもこいつも、おもしろくないねぇ、笑ってんじゃないよネコ!』と言って招き猫をパシッと叩いて帰って行った。
次に来た中年カップルが、スクラッチを5枚というので、おばあちゃんに開けた袋の残り4枚と、新たに袋から1枚出して売った。
なんとその中に、5万円の当たりがあった。
おばあちゃん!惜っしい!!
いくつになっても恋する女性は乙女なのね〜。
《笑いすぎてお腹が痛い》
お初にお目にかかったおばあちゃんが、
『六太郎ください』と言った。(私にはそう聞こえた)
『はい?六太郎?』
『そうそうそう』
『六太郎ってなんですか?』
『えっ?六太郎ってなに?ロトロクちょうだいって言ったのよ?』
ロトロクって言ったのが、私には六太郎と聞こえたのだ。ウケる。
『ロトシックスのことですよね?』
ロト6を、ロトロクと言う人は初めてだったものだから爆笑してしまった。
今これを書いていると、なんであんなに可笑しかったのか分からないけど、へんにツボに入ってしまって大笑いした。
おばあちゃんと私で、涙が出るほどの大笑い。
『あーまったく、笑った笑った。そうだ!○○って新しくできたお店知ってる?』
『さぁ…?』
『そこでね、かいわれ大根が3つで99円だったのよ!安いわよねぇ。すごいでしょ〜、そうだ、1つあげるわ』
『あっ、いいですいいです』
『いいわよ、1つあげる!あたし3つもいらないから』
仕事のあと、食事に行く予定があった。
今日のバック小さいのだし…
『嫌いじゃないでしょ?普段どうやって食べてる?』
『えーっと、サラダとか、うどんやラーメンに入れたりとか…ですかねぇ』
『美味しい食べ方教えてあげる!
あのね、生ハムに、クリームチーズを塗るの、そこに、かいわれを乗せてクルクルっと巻いてね、オリーブオイルを少しかけるの!絶品だから!絶対やってみて!ねっ!ねっ!』
3つで99円のかいわれ大根を貰って、生ハムとクリームチーズを買わないとならないってこと?なんでやねん(笑)
《息子の嫁に》
3人交代シフト制で働いてる。
男女問わず、常連さんにはそれぞれ気に入った店員がいる人もいて、それぞれに差し入れをくれたりお喋りしたり。
もちろん!私を気に入ってくれているお客さんだっているのです!
私は残念ながら!?男性より女性のウケがいい(笑)
熱烈な私推しのおばあちゃんだっているんだぞーー!って、誰に自慢をするわけでもないのだけど、いちおアピールしておきます。
来るたびに
『あなたみたいな子がうちにお嫁にきてくれたらいいのにぃ〜』
『あなたみたいな人がいいのよ〜』
『うちに遊びにこない?』と言ってくる。
(息子の嫁をおばあちゃんの好みで決めるのってどうなの?(笑)それにね、これはお仕事スマイルでして、普段の私を見たら、嫁に…なんて言わなくなると思うよ(笑))
たまたま来ていた上司にまで、冗談まじりに
『ねぇ、あなたからも言ってちょうだい!』などと言う。
上司が
『息子さん、おいくつなんですか?』と尋ねた。
『64なのよぉ』
『…… 。』
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